C4-3
「こんなんでいいのかね……」
まどかは思う。貴族に拘らなければいいのに……わざわざ人数合わせのような爵位を決めなくても、他のやり方があるだろうに……だがそれは、民主主義国で育ったまどかだから言えること。こちらの世界には、民主制など無いのだ。
まどかは今、秘密基地に篭っている。隠れていると言った方が正しいかもしれない。なぜなら、皇子がまどかに爵位を与えると言い出したからだ。
はっきり言って迷惑だ。この国に縛り付けようという魂胆が見え見えだ。ほとぼりが冷めたら、この国を出よう!まどかは思っていた。
地下に篭っているせいなのか、余計な事ばかり考えてしまう。まどかが国を出ると言ったら、みんなは一緒に来るだろうか?
おそらくジョーカーは来るだろう。メグミは森に帰った方がいい気がする。ハンスも街に帰って、孤児院の子供達の世話をしている方が幸せなんじゃ無いだろうか……
いっそみんなに黙って出て行こうかな……怒るかな……何処かのんびり暮らせる国、無いかな……
「な、なぁ、メグミはこれから、どうしたい?」
「ん?そうねぇ、心を鍛えたい。」
「んー、そうじゃなくて、行きたい所とか……森には帰らなくていいの?」
「どうなのかなぁ……わかんない。」
「そ、そう。ハンスは?街には帰らないの?」
「街のことは、もうアイツらに任せたっす!」
「そっか。」
「どうしたんすか?」
「そうよ。今日のまどか、変。」
「まどかお嬢様、はっきり仰ってくださいませ。この国が、窮屈なのではごさいませんか?」
「ん!そ、そう見える?」
「バレバレよ。」
「バレバレっす。」
「バレバレで、ございます。」
「な、なんだよ!みんなして!」
「そうと決まれば旅の支度っす!」
「そうね。まどかは今外出ると見つかっちゃうから、買い物はハンスさんとゴーンさんに頼みましょ!」
「それがよろしゅうございますな。ではわたくしは、ギルドの資料室で周辺国家を調べて参ります。」
「み、みんな……いいの?」
「まどか、何か忘れてない?私達は、パーティだよ!皆んな仲間じゃん!」
「水臭いっすよー。俺は、まどか様について行くっす!」
「わたくしは……言うまでもございません。」
「そっか……そっかぁ……」
「もう一人、仲間を忘れてない?お姉ちゃん!」
秘密基地に、身形を整えた少年が入ってくる。
「え!エンフィ!ダメだよ、伯爵様がこんな所に来ちゃ!」
「やめてよー。ゴルメスさんに聞いたよ。冒険者は戦争に行かないのに、友として来た!なんて。だから僕も、今日は仲間として来たんだよ。」
「だからって、立場ってもんが違うだろ?」
「ちゃんとケーニッヒ卿には許可を貰ったよ。お姉ちゃんの事だから、爵位なんか受け取らないだろうからって。だから、旅の資金を持ってきた!」
エンフィが従者に声をかける。三人掛りで大きな皮袋を持ってきた。
「金貨で2000枚ある。受け取って。ホントは僕も行きたいけど、兄上を支えるって決めたから……今回の報酬と餞別だよ。」
「わかった。貰っておくよ。エンフィ、これからもずっと仲間だ。どんなに離れても。」
「うん!また遊びに来てね。」
「あぁ、約束だ。」