C4-1
まどかは馬車で引き返した。
蹄の音に気付き皇子が振り返る。近衛の兵士達が身構えた。
「何者だ!」
馬車から降りてくる者を見て、皇子が声をかける。
「まどか!戻ってくれたか!」
「はい。依頼を受けましたので。」
「依頼とな。」
まどかの後ろから来た少年に、皇子は目を見開く。
「お、お前は!」
「ご無沙汰しております。兄上。」
「「「兄上ぇ!?」」」
「息災か、エンフィ。」
「はい。此度の兄上の戦、目に焼き付けたいと思います。」
「そうか。しかと見ておれ!」
「ど、ど、ど、どおいうこと?」
「エンフィ、皇子だったの?」
「お姉ちゃん、黙っててごめん。」
「あわわわわ……」
「これは驚きを禁じえませんな……」
「参ったな……皇子様を仲間呼ばわりしたなんて……」
「どうして?僕、嬉しかったよ!」
「そっか……よし。ジョーカー、皇子達を守れ。メグミ、弓で援護頼む。ハンス、新しい武器、使ってみたいだろ?不可視化で突っ込め。私は……友を助けに行く!」
「かしこまりました。」
「わかったわ。こっちは任せて。」
「承知!暴れるっす!」
「皆んな!死ぬなよ。」
兵士達は、麻痺から立ち直ったばかりで、精彩をかいている。押し込まれそうな所にハンスが突っ込んだ!
「大丈夫っすか?少し下がるっす!」
敵兵の間を縫うようにハンスが駆ける!見えない相手に手足を切り飛ばされ、次々と倒れて行く仲間を見て、王国兵は恐慌状態になる。
まどかは前線で取り囲まれたゴルメスの元へ、一気に飛んだ!着地の衝撃波で、数人の王国兵が吹き飛ぶ。
「まどか殿!冒険者は戦争に関わらぬのでは?」
「ゴルメス、今は友として来た。迷惑か?」
「迷惑なものか。背中は任せる!」
「あぁ。」
二人は互いの背中を庇いつつ、目の前の敵兵に集中した。ゴルメスを囲んでいた人の輪が、みるみる崩れて行く。そこに……
「アシッドランス!」
突如毒の槍が降ってくる!まどかはゴルメスを突き飛ばし、自分も毒の槍を躱す。地面に刺さった毒は、草を溶かし、消えていった。
「我ら王国魔導部隊!帝国兵など、蹂躙してくれるわ!」
「くっ!卑怯な……」
「ゴルメス!一旦ひくよ。考えがある。魔術には魔術だ。」
まどかはゴルメスを抱え、飛んだ。ハンスにも下がるように念話リンクで指示を出す。
「まどか殿、何をするつもりだ。」
「ここには無念にも死んで行った兵士達の亡骸が埋まっている。その兵士達を呼び覚ます!」
「な!」
「サモンアンデッド!彷徨える兵士達よ、愚かな戦争を終わらせる為、今一度立ち上がれ!ハイスケルトン!」
まどかはペンダントにマナを込める。冥王の壺から溢れ出るオーラが、大地に吸い込まれて行く。やがて大地は脈を打ち、ボコボコと盛り上がると、骸骨の兵士達が這い出てきた。
「ゴルメス、私は戦争が嫌いだ。どんなに大義名分を並べたって、詰まるところ私利私欲による人殺しだ。
誇りで死ねる兵士ならいいさ。だがその裏には必ず泣いている民がいる。こいつらも戦争に駆り出され、骨も拾って貰えない哀れな兵士達だ。
国が民に向き合った政をしていない証拠さ。こんなこと、貴族に聞かれたら大変だが、友として、ゴルメスには打ち明けたかった。」