C3-2
「茨の檻!」
貴族達を包み込むように、茨のつるが絡みつき、中に閉じ込めてしまった。だが、その状況に取り乱したのは、暗部達だ。
「邪魔だ!」
茨に切りかかろうとする。すると根元からつるが伸び、棘のついた鞭のように打ち付けてくる。
「何なんだこれは!誰だ!こんな術を使ったのは!」
「私よ!」
檻の上から声がする。月に照らされた姿は、翼の生えた執事に抱き抱えられた少女。
「間に合ったわね。」
「左様にございますな。」
少し遅れて馬が駆けてくる音がする。先頭の一騎が剣を掲げ、雄叫びをあげた。
「ウォォーーーッッ!!!」
「くっ!くっそー!燃やせ!燃やし尽くせぇ!」
魔導師達が、檻に向かって一斉に火魔術を放つ。
「吹き飛ぶっす!」
ハンスが荷車の上から魔導砲を放つ!魔晶石で増幅された風魔術が、魔導師達の火魔術を吹き飛ばした。
「炎陣!フルスロットル!」
馬車から一直線に火の玉が飛び出し、暗部達を跳ね飛ばしながら檻の前まで飛んできた。
「ゴメンな、交通事故だ。」
「お前らは!生きていたのか!」
「あぁ。お陰様で。ニセ皇子をぶっ飛ばさなきゃ、安心して死ねないよ。」
「小娘如きに止められるかぁ!」
「まぁ、私がやってもいいんだけどね……ニセ皇子の首は、俺が獲る!ってうるさいのが居るから、アンタはそいつに任せるよ。その代わり、この檻は守らせて貰う。どうしても殺りたいなら……死ぬ気で来いよ。」
「ふざけやがって!全員でかかれぇっ!!」
まどかは高速移動と拳だけで戦う。メグミはジョーカーと特訓したナイフ二刀流で、ジョーカーはエストックを抜いた。ようやく追いついたゴルメスの隊も参戦、ゴルメス自身も、無人の野を歩くように、剣で敵を払いながら、子爵に近付いて行く。
「檻を解いてくれ。我らも戦う!」
「わかった。じゃあ私達は、皇子様達の護衛に専念する。」
「頼むぞ!」
メグミが檻を解除した。総指揮官らしき男が声をかける。
「お主達、名を聞いて良いか?」
「私達は、MJ2。ただの冒険者パーティだよ。」
「その名、決して忘れぬ!」
兵士長は、槍をブルン!と回すと、当たるを幸いに突き進んで行く。襲ってくる敵は、まどかとメグミが倒し、飛んで来る魔術にはジョーカーが障壁を張った。暗部に苦戦している兵士には、ハンスの不可視化と瞬足でフォローしている。指揮官は数名の兵士を連れて、倒れている兵士達を治癒していった。
「おのれぇ!こうなったら、もう一度魔族を召喚して……」
「させるかぁっ!」
魔導師を集め、召喚術を行おうとしている所に、ゴルメスが割って入った。魔導師を蹴散らすゴルメス。
「邪魔をするなぁっ!」
魔導師の火魔術がゴルメスを襲う!しかしゴルメスの身体は、魔術を弾き返した。
「ば、バカな!」
「まどか殿……感謝する。」
マジックシールドの効果が残っていたらしい。一気に魔導師達を切り倒すと、ようやく子爵と対峙した。
「御印、頂戴致す!」
「ふん!仮にも我は暗部達の頂点。お前如き、術を使わずとも叩き伏せてくれるわ!」
子爵は一本の筒を取り出すと、軽く振った。筒の両端から、槍の穂先のような刃物が飛び出した。
「来い。」