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C3-1



王国との国境付近。

幾度となく戦場となった平原には、屍を養分とした草が生い茂り、次の養分を待ち望んでいるかのようだ。


国境線を境に、王国側に人の気配は無い。対する帝国側は、いつでも応戦出来るように陣形を整え、後方にテントを張り、貴族達が戦術を練りながら待機していた。


「なぜ敵兵が在らぬ!何かの策か?」


「わかりませぬな。いっそこちらから攻め込みますか?」


「それは悪手でしょう!今回の騒動、王国の企てと申されるが、それは確かなのですか?もし王国の知らぬ事であれば、我らが勝手に攻め込んだ事になる!大義名分の無い戦争など、ただの侵略と言われましょうぞ!」


「うむ。急いては事を仕損じましょう。ケーニッヒ卿の配下の者が、帝都に残り証拠を集めておると聞き及んでおりますぞ。」


「とはいえ、せっかく勇んでここまで布陣しておいて、間違いでした……では、兵士の士気も下がり、信を失うことに。」


「貴公達は、皇子や公爵殿を 嘘つき呼ばわりなさるおつもりか?」


「いえ!け、決してそのような事では……」


「帝国統一から何年が経った事か……皆様は戦人の心をお忘れのようだ。」


「何を仰る!何年経とうが、我が血は滾っておりますぞ!」


「ハハハハハ……」


突如テントの外で笑い声がする。


「何奴!」


「私ですよ。」


入ってきたのは第一皇子だ。


「これはこれは皇子様!なぜこのような前線にまでお越しなのでしょう?」


「なに、兵士達に差し入れよ。夜通しの強行軍、腹も減っているだろう。皆に夜食を振舞ったのだ。」


「流石は民草から微笑み皇子と慕われる御方。なんとお優しい……」


「いやいや、大したことではない。余程疲れていたのであろう。皆ぐっすりと眠っておるぞ!ハハハハ……」


「ば、バカな!」


慌ててテントを出る貴族達。兵士達は全員倒れている。


「なぁに、死んではおらぬ。少しの間痺れてもらったよ。」


「皇子様!なぜ?」


「腐った貴族を始末するのに、少々邪魔なのでね。目が覚めたら我が配下として使ってやる。お前達は安心して死ぬがよい。」


それが合図だったのか、皇子の周りに暗部と魔導師が、次々と現れた。その数は100人以上。貴族達や指揮官を全滅させるには、十分な数だった。


「兄上!乱心されたか!」


「おぉ、アレクセイ皇子か。残念な知らせが三つあるぞ。まずは私は乱心などしていない。寧ろ計画どおりと言えよう。次に貴方の父君と兄上君はもう死んだ。つまり私は皇子では無い。最後にアレクセイ皇子、貴方はここで死ぬ。おわかりか?」


「な、な、何を……お前は何者だ!」


「私か?私……いや、我は帝国の新しい皇帝だ!皆の者、我に平伏すが良い!ハハハハ……」


暗部達が動き出す。ある者はナイフ、ある者は棍棒、ある者は鋼線、火薬球や、毒針を持つものもいる。ゆっくりと貴族達を取り囲み、その距離を縮めて行く。その後ろでは魔導師達が、術を詠唱し始めた。


「あまり時間をかけると、兵士達が動き出す。さっさと片付けてしまえ!」


アレクセイ皇子を囲むように、貴族達が盾になり、さらにその周りを指揮官や兵士長が固める。その姿を冷やかに見て、暗部達は一斉に攻撃に移った。

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