C2-1
「どうした、防戦ばかりでは勝負にならんぞ!ベノムブレット!」
無数のベノムショットが、トールに襲い掛かる!
「この数では防ぎきれまい!ハッハッハッハー……」
「ふん。ローリングサンダー!」
黒い散弾の間を、雷光が走る!全てが弾け、雲のように漂っている。まるで雨上がりの雷雲を雷が渡るように、黒い雲に光が走っているように見えた。
「気が済んだか?終わりにしてやろう。トールハンマー!」
トールが大槌を振りかざす。帯電していた黒い雲が、一際光を放つ。トールが大槌を振り下ろすと、黒い雲から極太の雷が落ちる!目を開けていられないほどの強い光を放ち、轟音を響かせながらデーモンロードに直撃した!
「グルォォーーーッッ!!!」
断末魔を上げ、デーモンロードの肉体が灰と化す。精神の塊となったデーモンロードは、マナを霧散させながら消えていく……
「ちっ!退散だ。また数百年マナを貯めて、次は絶対勝ってみせる!」
そう言い残して、デーモンロードは去っていった。
「ふん。ワシも帰るとするか。メグミ!もっと心を鍛えよ。さらばだ。」
トールはそう言って、メグミに吸い込まれるように消えていった。
メグミは膝をつき、荒い呼吸をしている。帝都を覆っていた黒い雲は晴れ、星空が広がった。
「メグミ!」
メグミの元へ、まどかとジョーカーが駆け寄る。
「だ、大丈夫。とりあえず、みんなを探そうよ。」
皇子や公爵、他の貴族やケーニッヒ卿……みんな無事だろうか……
貴族街の公爵邸付近には、各貴族よりかき集められた兵士や、皇子直轄の近衛や騎士団、そのほとんどが隊列を組み、集合していた。そこにはケーニッヒ卿の姿もある。
「此度の騒動、隣国のルシウス王国の企みと判明した!恐らくはこの機に乗じて、我が帝国に攻め入る腹積もりであろう!我々は決して侵攻を許してはならぬ!民を守る為、この程度では揺るがぬ帝国の力を 見せてやろうぞ!」
「「「うぉーーっっ!!!」」」
アレクセイ皇子の戟に、兵士達は剣を掲げて雄叫びを上げる。魔族相手には、手も足も出なかったが、敵兵が人間ならば臆する事は無い。兵士達は、国境に向けて進軍した。
「ケーニッヒ卿。」
「おぉ、まどかか。子細は公爵殿より聞いた。どうやら隣国の者に、上手く乗せられていたようじゃな。」
「はい。魔導師と思われる数名の者が、魔族を召喚の後姿を消しました。第一皇子様、正侯爵様、伯爵様の安否が不明です。」
「なに!左様か。よし。ゴルメス!居るか。」
「は。こちらに。」
「お前は、一隊を連れ、皇子、正侯爵殿、伯爵殿の行方を追うのじゃ。王国の魔導師が潜んでいるやもしれん、漏らさず討ち取れ!抜かるでないぞ!」
「はっ。まどか殿、ご助力願えるか?」
「わかった。私達も行こう。」
「感謝する。」
『ハンス、聞こえる?』
『まどか様!無事だったんすね!』
『帝都に王国の魔導師が潜んでるかもしれない。ハンスはエンフィーを連れてギルドに行って、エンフィーの保護と、魔導師討伐の依頼をして来て。』
『承知!』
「ゴルメス、ギルドに仲間を走らせた。協力が得られると思う。」
「それはかたじけない!者共!遅れを取るな!必ずや我らの手で、賊を討ち取ろうぞ!」