C1-4
「それは、少々困ります。止めさせていただきます。」
デーモンロードの前に立ちはだかるジョーカー。
「ほぅ、アンタか。久しぶりだな。強さは認めるが、まだまだだな。アンタじゃ止まらんよ。」
「でしょうな。しかし時間稼ぎくらいは、させて貰えるでしょうか。」
ジョーカーは、相手の力量を測るために、ベノムショットを放つ。先程のように、圧縮してピンポン玉くらいになったものだ。デーモンロードは右手を出し、掌で受け止めると、そのまま握り潰した。
「わかったかい?」
「これならば、いかかでしょうか。ベノムバースト!」
黒い爆炎がデーモンロードを包む。爆風で皇城の三分の一は瓦礫と化した。爆風の治まった中央に、デーモンロードが立っている。
「なるほどなぁ。でも足止めしたきゃ、これくらいはしないとな。ベノムバースト!」
同じ術だ。だがデーモンロードは、手を左右に開き、同時に二発のベノムバーストを放つ。デーモンロードが左右の手を前で揃えると、ジョーカーを挟むように二つが衝突し、大爆発を起こす!
かろうじて直撃を避けたジョーカーだったが、爆発の勢いで皇城外周の壁を突き破り、片膝をついてギリギリ立っていた。
「「ジョーカー!」さん!」
「大丈夫で、ございます。」
「なんて破壊力だよ。」
まどかは、辺りを見回す。皇城のあった場所は、巨大なクレーターになっていた。
「城にいた人達、避難出来たかな……」
『ハンス、大丈夫か!』
『だ、大丈夫っすよ。なんなんすか、今の?』
『城が、消し飛んだ。』
『えーっ!!』
「とりあえず無事みたいだな。」
「それよりまどか、水晶が反応しないの!」
「メグミ、落ち着いて。森でやったこと、思い出して。」
「え?森……」
メグミは、クレアの言葉を思い出す……心を解放して……
(全てを委ねる……精霊と友達になるんだ……心を解放して……)
仄かに水晶が点滅する。まるでメグミに応えるかのように……
『……魔族が調子に乗っておるようじゃのぅ。ワシが制裁を加えてやろう。さぁ、メグミよ、解放するがいい……』
「はい。精霊召喚。裁きの雷光にて、全ての魔を断罪せよ。トール、解放!」
水晶が輝きを取り戻す。眩い光がメグミを包み、その光が膨れ上がり、やがて巨人の姿へと変わって行く。大槌を持ち、仁王立ちする巨人は、その身体に稲妻を纏っている。
「我が名はトール。雷の精霊。我が鉄槌を食らうがいい!」
「ほぅ、一度ヤッてみたかったんだよ。元々魔族も精霊も、神に準ずる力を持っている。どっちが強いのか、ハッキリさせたいと思ってたのさ。まったく、いいタイミングで地上に来たもんだ。行くぜ!」
デーモンロードはベノムバーストを放つ。トールは大槌でそれを弾く。帝都の外まで弾かれた黒炎は、荒野にクレーターを作って行く。地形が変わるほどの攻防が、帝都上空で繰り広げられた。
いつ街に落ちてくるかわからない人外同士の闘いに、人々は恐怖し逃げ惑う。しかし街が被弾することは無かった。それはトールがデーモンロードの攻撃を 角度を計算して弾いていたからだ。一見拮抗しているように見える闘いも、トールにはまだまだ余裕があったのだった。