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ジョーカーが迎えに来る。
いよいよ晩餐会当日、この一週間程で三人はエンフィーとも打ち解けた。皆の認識は、仲間だ。
「このまま皇城に向かいます。準備はよろしいですか?」
ジョーカーの問いに、皆が頷く。宿での三日間、まどかはメグミに、踊りの基礎だけ教えた。所作の美しさは、元の世界での弓道部で培ったものだろう、動きのしなやかさと、指先にまで意識された形の良さは、目を見張るものがあった。大まかな踊りのコンセプトとして、まどかが男役、メグミが女役という事だけ決めた。後は曲を聞いて、感じるままに踊る。それが皆で決めたコンセプトだった。
「間もなく到着でございます。」
窓から見えたのは、純白の城。屋根だけは青く、丁度ネズミの国の、靴が脱げて姫になった話の城のような作りだ。重厚な門を潜り、しばらく進んだ先の、装飾のある鉄の門を抜け、そこから5分程で、ようやく城の入り口に着いた。
その入り口を通り過ぎ、ぐるりと裏へまわる。監視の兵が立つ扉の前で、馬車は止まった。
「本日の晩餐会にて、芸を披露する者達でございます。お取次ぎ願います。」
「おぉ、話は聞いている。中の者が案内する、入っていいぞ!」
「では、わたくしはこれにて。」
ジョーカーが去り、案内の兵が来た。
「すぐ出れるのか?」
「はい。準備は出来ております。」
四人はそのまま、大広間へと案内された。既に会食中であり、扉を開け中に入ると、侯爵が立ち上がり、声高らかに告げる。
「お集まりの皆様、今宵は、余興などご用意致しました。どうぞ御堪能ください!」
まどか達は、大広間の中央へ出る。一度輪になり、円陣を組んだ。まどかが声をかけようとしたその時、
「ガシャーン!」
天井から鉄の檻が降ってきて、四人を取り囲んだ。客の隙間から魔導師が現れ、檻に結界を施す。
「な!なにを!」
「お集まりの皆様!こヤツらは巷を騒がす賊にございます。平民街で爆発騒ぎを起こし、武闘大会に於いては、皇子暗殺を企てた者達!今宵の宴を餌に、誘い出してございます。賊は捕らえました!皆様、ご安心召されよ!」
大広間に喝采が起きる。ケーニッヒ卿やアクト公爵が声を上げようとしたが、まどかが目で制した。おそらく四人を餌に、貴族の中の邪魔者を一網打尽にする考えなのだろう。それを見抜いたまどかは、ここで声を上げるべきでは無い。と判断した。
まどか達は縄を掛けられ、牢へと連行される。見覚えのある黒いローブの男が近づき、
「その程度の変装、見破れぬとでも思ったか。」
そう言って去った。
馬車を繋ぎ、大広間へ向おうとしていたジョーカーに念話がリンクする。
『ジョーカー、捕まった。罠だ。』
『なんと!わたくしとしたことが……申し訳ございません!』
『気にするな。それより、ジョーカーは引き続き、無関係を貫け。決して動揺するなよ。こっちは自分でなんとかするよ。』
『かしこまりました。お早いお戻りを……』
それだけ伝え、リンクを切った。状況はかなり悪い。卿も公爵も、下手に動けないだろう。せめてエンフィーだけでも助けなければ……そう思うまどかだった。