R3-4
ジョーカーは、手紙を届けると即刻侯爵邸へ引き返す。
誰に見られているかわからない現状で、下手な寄り道はスパイの疑いをかけられるからだ。
「只今戻りました。」
「おぉ、早かったの。して、返答はあったか?」
「はい。至急集めてお届けに上がります。との事でございます。」
「うむ。」
「いったい、何をお集めなのです?わたくしめに出来ることでしたら……」
「お前は知らずとも良い!下がれ!」
「失礼致しました。」
ジョーカーは、部屋を後にした。与えられた執務室に戻ると、メイドが、やってくる。
「ジョーカーどの、お戻りでしたか。」
「今し方戻って参りました。何か変わったことはございますか?」
「はい。皇城におかれまして、第一皇子様主催の晩餐会が催されることとなりまして、ご主人様がその手配を申し付けられたとの事にございます。」
「なるほど。それはまた忙しくなりますねぇ。」
「はい。それでジョーカーどのに、晩餐会にてお出しする、料理のご相談がございます。毎回似たような料理で、貴族の方々も、少々飽きておられるご様子ですので……」
「そうでございますか。これまでのメニューなど、見ることは出来ますか?出来れば、方々の好みなど、ご存知の料理人が居れば助かりますが。」
「はい。書き記した物がございます。料理長であれば、方々の好みに関しては、把握しているかと。」
「かしこまりました。後ほど料理長と相談することに致しましょう。」
「よろしくお願い致します。あとご主人様は余興に、芸を披露する者達をお探しなのだとか。ジョーカーどの、どなたかお心当たりなどございませんか?」
「そうですねぇ……わたくしも探してみましょう。」
ジョーカーはそう返すと、念話をリンクする。
『まどかお嬢様、よろしいですか?』
『ジョーカーか、どうした?』
『つかぬ事をお伺い致しますが、お嬢様は何か、芸事はお出来になりますか?』
『どうした突然。』
『実は……』
ジョーカーは、晩餐会の件を話す。まどかはしばらく考えて、
『時間はあるの?』
『一週間、といったところでしょうか。』
『わかった。なんとかするよ。』
『では、一週間後、お迎えに上がります。一度侯爵に見てもらわねばなりませんので。』
『なるほど。(オーディションってことか)じゃあ、一週間後に。』
「さて、公爵様のお眼鏡にかないますやら……」
ジョーカーは、まどかなら何とかするだろう……と思った。戦闘時のスムーズな動き、まるで舞踏を見ているようだったからだ。まどかを信頼し、ジョーカーは料理長の所へ、メニューの打ち合わせに向かった。
-まどかは、芸のヒントを探しに、二人を連れて街へ出た。大道芸人などが集まる噴水広場には、ジャグリングや、辻占い師、音楽家の卵や、吟遊詩人が、通りを歩く人々を楽しませている。街へ出はじめて三日程たっただろうか、広場の一角に、一人の少年がいた。ハンドルの付いた木箱を前に置き、手にはアコーディオンのような楽器を持っている。準備が終わると少年は、足でハンドルを回し、木箱から流れるリズムに合わせ、アコーディオンのような楽器を奏ではじめた。