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R3-2



アクト公爵邸。

門番にハンスの姿を見せると、直ぐに通してくれた。庭で仕上げをおこなっていたビーンも、その姿を見て駆け寄る。


「ハンスさん、皆さん、御無事でしたか!」


「ビーン、いろいろすまない。助かるよ。」


馬車を使用人に預け、執事に案内され邸内に入る。応接室に通されると、既に公爵は座って居た。


「来たか。堅苦しい挨拶はよい。座ってくれ。そして、これから話すことは、決して余人に漏らすではないぞ!お主等が信を置くものでもじゃ!よいな。」


「はい。決して他言は致しません。」


「うむ。では語ろう。この国の今を……」


アクト公爵は、三人にお茶を勧め、自分も一口飲んで、語りだした。


「第一皇子が隣国の、ルシウス王国へ行かれた時じゃ、一年の内二日だけ、行方知れずになられた事があった。この件は秘匿とされ、皇帝陛下と一部の貴族しか知らぬ。皇子の行方がわからなくなった二日後、王国の魔導研究所より、皇子は姿を現した。曰く、研究に没頭し過ぎて、時が経つのを忘れておった……と。」


「随分熱心な御方なのですね。」


「我もそう思おておった。しかしじゃ、その日から皇子の様子が明らかに変わった。まるで別人のようにの。元は怒った事など一度もない、穏やかな皇子であった。それが、偶に怒鳴り声を上げるようになったのじゃ。普段は大人しいのじゃがの。」


「何かあったのでしょうか?」


「我は、皇子は洗脳されたのではないか……と考えておる。」


「洗脳!」


「あくまでも推論じゃ。」


「でも……そう考えると辻褄が合いますね……」


「此度の一件、王国の研究というものが、何らかの形で関わっていると、我は見ておる。」


「その研究とは、いったい?」


「魔族の部分召喚じゃ。」


「部分召喚?」


「魔族の召喚には、非常に危険が伴う。召喚自体は、術士であれば難しくはない。じゃが、魔族は自分の意思で暴れ、破壊をする。人間の制御など受け付けるのは、下級の魔族のみじゃ。そこで考えられたのが、部分的に召喚して、その力だけを使おうとするものじゃ。皇子は今も、その研究をしておる。」


「そんなこと、可能なのでしょうか?」


「無理じゃろうの。仮に成功したとしても、その力の矛先は、帝国に向けられるであろう。召喚に失敗すれば、その魔族によって帝都が破壊し尽くされる……どちらにせよ、帝国は滅ぶであろうよ。それを止めるために、我は精霊の力を借りようとしたのじゃ。じゃが、それに気付いた暗部が、邪魔をしに来おった。それはつまり……」


「最初から帝都の壊滅が狙い……ってことですか!」


「そう考えるのが妥当じゃろうの。王国はその為に皇子を洗脳し、送り込んだのじゃろう。暗部を使うとなれば、皇族の者でなければ動かせんじゃろう。」


「許せない!人の命を……何だと思ってんの!」


「これはまだ、我の推測の範疇じゃ。じゃが、暗部の動きを見るに、ほぼ間違いないじゃろう。まどかよ、王国の陰謀を止めねばならん!我に力を貸してくれ。頼む!」


「わかりました。是非、協力させてください!」


公爵はまどか達三人の手を取り、しっかりと祈るように握った。そこには貴族の奢りも何も無い、一人の国を憂う者の姿があった。

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