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R2-3



武闘大会当日。

まどかとメグミは、場外の周囲で、露店の場所を探していた。目立たぬよう今日は、町娘の恰好をし、頭に布を巻いている。すると、市場で知り合ったおばちゃんが声をかけてくれた。


「やぁ、アンタかい!ウチの隣り、空いてるからここにしなよ!」


「いいの?ありがとうございます。」


ハンスが屋台のような荷車を引いている。後ろからまどかとメグミが押して、ようやく隣りに押し込んだ。足場を組み立て、鍋を火にかける。


「また美味いもん、食わしてくれんのかい?」


「あぁ。今日持ってきたのは、ワンタンスープだ。」


「聞かない名だねぇ……」


「最初の一杯はおごるよ!なんせ隠し味に、おばちゃんにもらったトマト使ってるからね!」


「そりゃ嬉しいね!丁度一段落して朝飯にしようと思ってたのさ……」


「どうぞ。熱いからね。」


おばちゃんに最初の一杯を渡す。匂いをかいで、一口すすった。


「いい味だねぇ!このモチモチってしたヤツがまたいい!」


「それにトマト使ってんだよ。」


「こりゃいいや!朝にピッタリだ。」


そこからは怒涛の忙しさだった。まどかが作り、メグミが売り子、ハンスは食器洗い担当でフル回転だ。なにせおばちゃんが、


「ウチのトマト使ってるから美味いよ!」


なんて、通る人みんな捕まえるもんだから、行列が出来てしまった。おばちゃんはちゃっかり行列の人達に商売をしている。この辺は抜かりない。ワンタンスープが、いい客寄せになっていた。


ようやく客が闘技場に吸い込まれ、行列がなくなった頃、まどか達はケーニッヒ卿の元へ向かった。アクト公爵の件を相談するためだ。以前貰っていたカードを見せると、スムーズに通してくれた。


「ケーニッヒ卿、ご無沙汰したおります。実はアクト公爵より……」


「なるほどのぉ……その真意、見定めねばなるまいよ。」


「では、大会後、会うことにします。」


「うむ。罠があるやもしれん。十分気をつけるのじゃぞ。」


「はい。」


まどか達は、怪しまれぬうちにケーニッヒ卿の元を去った。


貴賓席へ繋がる廊下を歩いていると、一組の貴族が通りかかる。


「おい!ここはお前達のような、下賎の者が立ち入る所ではない!早々に立ち去れぃ!」


まどか達を突き飛ばすように、その一団は通り過ぎた。


「まったく、警備の者は何をしておるのか…」


その一団の後ろに、見知った顔がある。ジョーカーだ!


『お嬢様方、ハンス様、ご無沙汰しております。』


『ジョーカー、無事だったのね。』


『はい。今はこちらの、正侯爵様の屋敷におります。この度の大会、何やら裏で動いている者がおります。お気をつけくださいませ。』


『わかった。何かわかったら、念話リンクで頼む。』


『かしこまりました。』


「ようやくみんな揃ったな。一度露店に戻ろう。」


まどか達は露店に戻り、店じまいをした。


「なんだい!もう閉めるのかい?」


「ごめん、本業の依頼が来た。残りのスープ、おばちゃんにあげるよ。」


「そうかい。じゃあ仕方ないねぇ……スープは有難くいただくよ。頑張ってきな!」


「ありがとう!」


まどか達は片付けを終え、闘技場へと入って行く。ジョーカーの言葉も気になる。武闘大会の試合開始の合図が、場内に響き渡った。

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