R1-3
記念すべき100話目です。
いつも読んで頂いてる皆様、ありがとうございます。
まどか達は、とりあえず旅の踊り子だと名乗った。おばちゃん達は、二人の衣装を見て、異国の踊り子だろう!と言い出したので、その言葉に乗っかった。自分達は帝都に来たばかりなので、この国のことを教えて欲しい。と言うと、おばちゃん達は裏も表も、いろいろ話してくれた。
第一皇子は、帝都の民から、微笑み皇子と呼ばれ、人気があること。だが一人のおばちゃんが反対意見を言う。
「確かに、第一皇子様は常に笑顔を絶やさない。それを見てキャーキャー言ってる連中もいるよ。でもね、あたしに言わせりゃあれは作りもんの笑顔だね。目が笑ってないんだよ。」
「あぁ、それはあたしも思ったことあるよ。」
「聞いてくれるかい?あたしゃ第一皇子の裏の顔、見ちまったことがあるんだ。」
おばちゃん達は頭を寄せ合い、小声になった。
「あたしが仕入れに出てた時さ、視察かなんかで第一皇子が来てたのさ。あたしが通りかかろうって時、凄い剣幕でお付のメイドを怒鳴りつけてたのさ。そこにあたしが知らん顔して通ったんだよ。そしたら急に笑顔になって、メイドを下がらせたのよ。メイドは顔を隠すようにいなくなっちまったから、多分あれは、皇子に殴られたんじゃないかと思ってさぁ……」
「あたしもウワサで聞いたんだけどね、第一皇子が学問で他所行ってただろ?それから帰って来たら、人が変わったみたいになったって話だ。新たな発見があったから、帝都に取り入れるべきだ!とか言い出して、部屋に篭ったり、魔導師を集めたり、なんかいろいろやってるらしいよ。」
「あたしゃ邪教に入信したんじゃないか?ってウワサなら、聞いた事あるよ。」
おばちゃん達は、眉唾もののネタも含め、ウワサ話に夢中になった。後は貴族の話、派閥の話などいろいろ聞けた。
男爵は、表向きは第二皇子派だけれど、本質は日和見主義で、どちらにもゴマを擦ってる話とか、衛兵が頼りないのは、子爵が衛兵の給金をケチってみんなやる気がなくなったとか、今の騎士団長は、金で地位を買ったとか……
結論は、貴族なんて威張ってるだけで、みんな腐ってる。という意見に、みんな頷いた。
あまりに戻りが遅いおばちゃん達に、痺れを切らした店番の一人が、おばちゃん達を迎えに来たところで、本日の井戸端会議は終了となった。
「これは、どこから手をつけたらいいか……」
「みんな悪いのかな、貴族って……」
まどか達は、ようやく昼食を終えた。ふと見ると、野菜の煮物が入っていた器がポツンと残っている。おばちゃんの忘れ物だ。
「届けてやるか……」
市場に戻り、野菜売りのおばちゃんに、器を届ける。
「いやー、すまないね。あたしゃすぐ忘れちまう。もう歳かね。ハッハッハッ……」
お礼に売り物にならないトマトをたくさんもらった。そのついでにおばちゃんが、
「そういや、アンタの料理、美味かったな。今度富裕街の闘技場で、貴族お抱えの騎士達の武闘大会があるんだよ。あたしら、その周りで出店出すんだが、アンタ達も出したらどうだい!一儲け出来ると思うよ!」
それは第二皇子主催の大会らしく、各貴族も集まるらしい。これは何か掴めるかもしれない。まどか達は、その武闘大会に、出店を出すことにした。