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プロローグ

挿絵(By みてみん)



冷凍食品を運ぶトラックドライバー、みんなからは「たっちゃん」と呼ばれる50代の男

辰巳左門タツミサモンは、高速道路のサービスエリアで休憩をとっていた。


と言っても、寝てる訳ではない。スマホで某アイドルの動画を見ていた。

愛車とスマホ、彼にとってもはや身体の一部だと言う。依存症と言ってもいい。この二つさえあれば、住む家も必要ない。そう言ってはばからない。


辰巳左門 五十一歳 バツイチ ドルヲタ

離婚の理由もアイドルのイベントに行き過ぎて家族を放置した結果であろう。

仕事も真面目とは言い難い。いや、ある意味真面目なのか?

突発的な仕事も上司に文句を言いながらも結果こなしてしまう。

例えそれが、上司の怠慢によるミスで手配漏れしていた仕事でも……


たっちゃんに頼めば、なんとかしてくれる。

それが会社の評価である。その割には給料は上がらないけど。


何故ならばこの男、仕事よりもアイドルのイベントを優先する。

ライブの日程に合わせて休みを調整、例えそれが会社の繁忙期であっても、イベントが最優先事項なのである。

上司も普段 尻拭いをして貰ってる自覚があるのか、渋々ながら休みを承諾する。まぁよく言えば、持ちつ持たれつなのだ。


ドルヲタの中でも七割以上の人間は彼を知っている。

グループ立ち上げ時からのファンで、運営の裏方にも顔が利く。

でも彼は、古参自慢も若いヲタを下に見る事もしない。

面倒見の良さは、彼の性格なのだろう。損することも多いが。


俗に「厄介」と呼ばれる身勝手なヲタも、彼の言うことは聞く。

イベント参加率百パーセントの彼は、それなりに一目置かれているらしい。



無線機の呼出音が鳴る。

ん?定時連絡は入れたのに、なんだろ?


「あいよ。ゼロヨンハチ辰巳。」


「お願いがあります。こちらへお越しください。」


「……?」


一瞬の後、光の中に彼はいた。


「突然お呼びだてして申し訳ございません、辰巳様、貴方には今とは異なる世界へ行っていただきます。」


「ほぇ?」


思わず間抜けな声を出す辰巳。目の前にいたのは影、人の姿形をしているが、煙のような存在。


「どこ?誰?なに?夢?」


「とりあえず落ち着いてください。お茶おいれしましょうか?」


コポコポコポコポ……

スー、ズズズ……ふぅ……で?


「辰巳様に異世界へ行っていただくことは、決定事項です。勝手で申し訳ございませんが……」


「……まぁ、百歩譲って現状を受け入れたとしてだ、なんで俺なの?」


「まぁ!受け入れてくださるのですね!ありがとうございます!お茶、おかわりいかがですか?」


「いや、そうは言ってねぇよ!めんどくせぇ……だいたいなんだよ、異世界って?何しに行くんだよ?もうちっとマシな情報くれよ。」


「そうですねぇ……異世界へ行って頂いて、どうするかは辰巳様の判断に委ねます。辰巳様がご覧になって、思うままに行動なさってくださいませ。」


「いや、そう言われてもだなぁ、イベントも控えてるし、もっと若いヤツも居るだろ?別に俺じゃなくてもよ……」


「声を聞きました。たっちゃんに頼めばなんとかしてくれる と。」


「俺はなんのチカラもねぇぞ?トラックとスマホがあれば満足してる初老のドルヲタ。ただそれだけだが?」


「では、旅立つにあたり、そのトラック?スマホ?とやらのスキルを辰巳様に保存いたしましょう。時間がありません。転送いたします!」


(辰巳様、貴方ならばきっと、あの世界の真の姿に辿り着けるでしょう。ソフィアの子……エレボスを……)



-辰巳は、身体の異常を感じた。

全身の痛みで目覚める。いや、正確には目覚めと言うより、夢の中のような感覚。痛みを伴う夢など、早々に覚めて欲しいものだが……


闇の中、時折光が流星の如く走り去る空間に浮かんでいる。

頭の中で様々な声が響く。


「名称トラック、解析完了。各部の能力、最適化します。」


「エンジン。エネルギーを消費し、火力、運動エネルギーへと変換する能力。炎属性魔法の上位に該当」


「バッテリー。電気エネルギーを放出または蓄積。他の能力への干渉。雷属性、その他補助回復属性に該当」


「冷凍機。大気を冷やし極寒へと変える能力。氷属性の上位に該当」


「エアコン。熱量の最適化制御能力。風属性、魔力操作、魔力制御に該当」


「無線機。意思を伝える能力。遠距離での会話も可能。精神属性に該当」


「オートクルーズ機能、ブレーキアシスト機能、ナビゲーションシステム、エアバッグ……」……


「名称スマホ、解析完了。膨大なデータ量と演算能力、同一個体と見られる人種の画像データ、八十二パーセント……」


「名称辰巳の肉体と精神、名称トラックの外装、名称スマホの情報処理能力、最適化した各種機能、転送亜空間中のマナ吸収、人種のデータ、以上を元に肉体を再構築します。」


なんだよ?勝手に異世界へ飛ばして、勝手に身体いじくって、スマホの音声認識アプリみたいな無感情な声で……


「再構築完了。転送終了まで百四十六秒です。」


「それでは辰巳様、この世界をなんとかしてくださいませ。御心のままに……」


「……」


全身の痛みで目が覚める。今度こそ本当に。

「いたたたたた……あれ?声がおかしい?あー、あー、聞き覚えのある声だが、俺の声じゃねぇ……」


「ねぇ、大丈夫?気分悪いの?旅の人」


「ほぇ?」


本日二度目の間抜けな声を出しちまった。

見ると いかにも村人A的な女の子が見ている。


「あ、ありが とう、ございます……」


「か、可愛い!この国の人じゃないわね!どこから来たの?不思議な服ね。どこかの制服かしら?ねぇねぇ、立てる?とりあえずウチで休んでく?……」


村人Aのマシンガントークに圧倒されつつ、家までついて行く。

まぁ、休ませてくれると言うので、ゆっくり現状把握をしようと思う。


案内された部屋で、ふと鏡を見る。横で村人A、(名前を聞いたけど覚えてない。元々興味のない人の名前を覚えるのは苦手だ。)が……


「……ねぇねぇ、あなた名前は?」


鏡に映る自分を見て、思わず叫ぶ


「ま、まどか?」


そこには、ドルヲタ人生を掛けてもいい!と初めて思った推しメン、まどかの姿があった。


「え、まどかって言うんだ!よろしく!まどか。」


どういうこと?黒髪ロングに整った清楚系の面立ち、グラビア仕事もこなすメリハリボディ。確かにまどかの姿形、しかも服はステージ衣装、高校の制服っぽいブレザーとチェック柄のスカートに、ハイソックスとローファー、喜ぶべきか?べきだよな……でも今はそれどこじゃない。


「あ、うん、よろしく、ね」


「少し横になったら?まどか。私お使いの途中だから、出かけるけど夕方には戻るから。それまでゆっくりしてて!」


「ありがとう」


「いいの いいの!じゃあね」


村人Aは、出ていった。

タイミングを見計らったように、あの音声認識アプリさんの声がする。


「名称辰巳を名称まどかに変更。書き換え完了。」


「アプリさん?」


「……認識完了。これより私は、名称をアプリさんとします。思考解析演算における、名称まどか の補助能力となります。」


「……あぁ、なるほどね。ってか、マジ転生なんだな。イベント参加率百パーセントも、これで終わりか……メッセの個握行きたかったなぁ……」


「……???何を言っているか わかりません」


「めんどくせぇ、まぁいいや、とりあえず今の状況教えて。」


「名称まどか のステータス表示に切り替えます。」


名称 まどか

種族 亜人

職業 未登録

HP 500/500 MP 750/750

Lv 1/45

状態 通常

魔法 火炎3、雷鳴1、氷雪4、水5、風5、精神2、補助2

固有スキル カリスマ

スキル 魔力制御、魔法増幅

EXスキル インストール ※使用不可

称号 転生者


使用不可って……まぁ使えないヤツは後で考えよう。それより

??亜人?人種じゃない?


「名称まどかは、転生時の肉体再構築により、魔鋼ゴーレムとの融合種になりました。通常の人種は、HP 25程度、融合により二十倍のスペックです。」


「魔鋼ゴーレム??」


「名称 トラックが転生するにあたりマナを吸収、魔鋼の身体を持ち動く者、即ち魔鋼ゴーレムへと変化、その後融合しました。」


うーん……わかるような、わからないような……でも俺としては、この姿で戦闘的なことしたくないんだよな……

まどかの身体に、アザとか傷とか付けたくないって言うか……

まぁ、ハイスペックだからと言って、戦闘に巻き込まれるって訳じゃないだろうけど。


職業 未登録か。こっちの世界にアイドルって職業があるとは思えないけど、せめて踊り子なり舞踏家的なやつ無いのかな……って、見た目はアイドルまどかだけど、中身は運動不足の初老のおっさんだし……盆踊りくらいしかできねーぞ……


「アプリさん、職業について教えて」


「名称まどかの選択出来る職業は、魔法、スキル、レベルによって変化します。現状選択出来る職業を一覧で表示します。」


魔法使い、魔導士、武闘家、僧侶、戦士


って、闘わない系一つも無いじゃん!武闘家って、そっちかよ!


「ステータス中、現在最も高レベルなのは、腕力かいなぢからです。」


わざわざ腕力と書いて【かいなぢから】とかいいんだよ!

もうこれって、ギルドとかに行って、冒険者とかになる流れじゃん!

この歳になって、冒険とかしたくねぇし!可愛い子達を愛でながら、普通の生活したかったのにー!!


「名称まどかの精神状態の乱れを確認。魔法による補正しますか?」


「いや、必要ない。」


そういえば、村人Aはお使いみたいなことやってたな……

わざわざ職業選ばなくたって、小銭稼いで食ってくぐらい出来るんじゃ?

最初の1ヶ月くらいは、毎日更新頑張ります。

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