少女革命のエチュード
建物はいずれ燃え上がる運命であった
けが人はいないが市場は全焼した
店舗兼住居で
数名が住んでいたが
すべての人の安全が確認された
死傷者、ゼロの奇跡の災害であった
建物はいずれ燃え上がる運命であった
炎の中には、いないはずの人影がみえたかもしれない
それはかつてそこで暮らした
過去の自分たちのマボロシだったかもしれない
そんな炎の中、夢を見た
白い、昼の、夢だった
このニュースには出ていない
店主や従業員やその家族の方が、いるでしょう?
焼け出されて
目の前で燃える市場を呆然と眺めるしかない
年老いた男女の姿が見えるでしょう?
昨日までの古びた
客もまばらな市場の姿が見えるでしょう?
そんな炎の中、夢を見た
白い、昼の、夢だった
それは昔のことでしょう
いつも迷子の子供が泣き出す
やかましいくらい賑やかで
朝一から人の波に
覆われていたことがあったでしょう?
声ははずみ、動きがキビキビと、活気にあふれ、
笑顔と大声が飛び交う
そんな風景があったでしょう?
月1の特売日にはけが人が出るほどごった返し
対策で警備員を置くなど
うれしい悲鳴をあげたりもしたでしよう?
地元の祭りには協賛並びに人員参加をし
祭りを大いに盛り上げたでしょう?
まだ海外旅行珍しい頃、家族総出で
ハワイへ行ったりしたもしたでしよう?
じいちゃんはずっと目をつむって震えていた
ばあちゃんはもう肝を据えて酒ばかり飲んでた
気分がのって機内で大声で歌を歌ったりしたから
もう大変だった
そんな
日々、
でしたか?
建物はいずれ燃え上がる運命であった
今となっては楽しい思い出たち
その思い出が、今、灰燼と化していく
顔が熱い、暑くて暑くて、息苦しい
ほおが、火照る
ほおつたう涙は、煙のせい
ゲホゲホ、と
わざと咳こんでみせたり
ぜーんぶ、昼間見た夢です
ただのゆめなんだよ?
そしてその白昼夢の中で
私もひとつだけど、夢をみる
なぜか
『シン ゴジラ』にでていた
女性大統領補佐官役の女優さんが
以下の
女性大統領候補の
清潔な言葉の、優しいセリフを、演じ、語っている夢
ね?
聴いてよ、
同性だったら、惚れちゃうよ
せってーだよ。
(私自身もう、メロメロ、)
(ま、夢の中だけだけどね?)
負けはしたけどその大統領候補が
選挙敗戦後に語った言葉は、コレ。
『今回のことで
女の子が大統領になれない
なんて
思わないでね』
駄目だったのはただひとり私だけであって
女性がダメなんだというわけじゃないからね
って言いたいってことでしょ?
あたしなら絶対彼女に投票していたなぁ
選挙権はもうあるからね
でも日本人だからだめか
ならアメリカ人になって
彼女と不適切な関係になりたいほどです、
でも、そんなことになっても
特に問題はないんだろうけど、
問題は、彼女の優し過ぎる優しさ、の方でしょう?
建物はいずれ燃え上がる運命であった
でも、それで消失するのは
建物だけであって
人は生きているかぎり
いつだってやり直しが効くのですから。
とにかく、痛いほどの優しさにくるまれて
私は
ビルを破壊し、街を炎上させる怪獣を
世界に蔓延るあたりまえの驕慢さだと断じ、
それを
映画『シン・ゴジラ』の中、
いまの大統領補佐官が
いずれ大統領になる夢が叶うように
世界の『くだらないあたりまえ』なんて
無くなればいいのだという儚いかもしれない
夢が、
そんな夢が叶うかもしれない未来だけは、諦めない。
そう、
あの、白昼夢でみた
日本人女優が演じる大統領補佐官が
大統領になれなくても
その夢をかつての自分のような女の子に
託し、笑って、崩れ落ち、倒れて行ったさまを
心の奥底の鉄板に刻み込んで
『いま、みた夢を、2度と忘れない』
そんな不退転の決意の言葉とともに刻み込んで
諦めないのだ。
諦めないで、生きてゆく。
女の子が、大統領になる、その日まで。
そうさ。
世界が、革命される、その日まで。