平和
世界統合の動きと反面、第2人類人間を細かく管理するために半独立市 “郡都“ を設置。
そのなかでも「 ラクスブルク 」は世界全体でも有数の商業郡都である。
「 着きましたよー!! ラクスブルク 」
アイリは無邪気に目を輝かせている。
あの戦いから、約一週間。
歩き、航空機を使い、堪え忍んで何とかたどり着いた地ーラクトブルク。
地図を見ると、現実世界にもあるようなアウトレットモール、遊園地、その他諸々の施設が広がっている。
今いる場所はたくさんの人が集まる露店を横目に観光できるような大通りの真ん中だ。
楽しそうな家族、人の笑顔。
初めて見る、明るい色の人の賑わいだ。
志穏は少し緊張がほどけるのを感じた。それはきっと安堵に近い。
この世界にもこんな場所があるのか。
「 意外でしょ。こんな場所がこの世界にもあるなんて 」
セシルが少し嬉しそうに志穏の顔を覗いてくる。
「 そうだな、すべての場所がこんな感じだとうれしいけどな。 」
「 オーイ姉さん 」
グレイブはいつの間にか道端の露店に行って、見たことのないネックレスを持ってする。
不良少年のようななりをした彼が楽しそうにそれを持ってくる姿は少し可愛らしく見えた。
「 これ、前姉さんが欲しいって言ってたレアなやつじゃね? 」
「 本当だ、ありがとうグレイブ!! 」
「 …… 」
「 何だよ志穏 」
「 いや、実はグレイブって可愛い奴なんだなって 」
「 どういう意味だそりゃ!! 」
グレイブが大袈裟に声をあげる。
ガルラがそれを見てはゲラゲラと笑い、グレイブはリーダーには頭上げれねえお姉ちゃん子だもんな。と茶化した。
それを聞くとグレイブがガルラに飛び付き、揉み合いになった。
「 まったく、二人とも子供みたいだね。 」
「 ほんとだな、 」
こんな風景もこの世界にはあるんだ。
志穏は思わず笑う。すると、セシルも合わせて笑ってくれた。
「 楽しい? 」
「 おう、とても 」
志穏はセシルの方を向き直し、少し神妙な顔をする。
「 右手、大丈夫なのか 」
一週間経過した今でも傷が傷なので、セシルの右腕にはまだ痛々しい包帯がきつく巻かれたままだ。
セシルは右腕を庇い、大丈夫だよ。とさっきとは違う淡々とした笑顔を見せる。
「 最初は痛かったけど、今はもう平気 」
志穏はまだ、あの時のことについて聞きたいことがあった。
それについて口を開こうとする。
「 我主、一緒にあのお店行きましょうよ!! 」
アイリが志穏とセシルの合間を縫うように、割り込んできた。
「 いいよ。でもあんまりはしゃぎすぎないでね。 」
セシルはこれ以上追及されるのを避けるように、アイリとそのお店へ足早に向かった。
「 取り残された……。 」
俺今ぜってえ逃げられたよな。
「 志穏さま、僕たちも行きましょう 」
優しい笑顔でカルディアが振られた志穏を誘う。今の流れを見て、気を遣ってくれた気がしてならなかった。
その横にはニナもいた。
「 おう、そうだな―――ってケインは? 」
「 うがぁ!! 」
「 ぐほぅお!! 」
前方から男達の野太い呻きが聞こえて、見てみるとそこにはガルラとグレイブが地面に叩き潰されていた。
その二人を押さえつける細い足はケインのものだったと分かり唖然とした。
「 ガルラ、グレイブ様、少しうるさい 」
ケインが憮然とした態度で二人を睨みつけている。
「 おまえ、俺に関しては敬語使ってんのか使ってないのかどっちなんだ 」
「 一応リーダーの弟だから様つけてるだけです。他に敬う点ないですし。 」
「 ひでえ!! しかもそれは敬語で言うんかい 」
道の真ん中で一悶着を起こしているため、通行人が幾度か見てくる。
「 ニナ、俺たちがこんな騒いで大丈夫なのか? 」
こんなことやってたら中央に見つかるんじゃ。
ニナは眼鏡をくいっとあげて大丈夫です、と平生とした様子で言う。
「 この郡都は戦闘禁止地帯、それにこれだけの観光客がいればそう簡単に仕掛けられませんよ 」
ニナもいつの間にか、きらきらとした黒のトレンチコートを持っていた。それはさっき露店で目玉商品として飾られていたものに似ている。
「 おまえもだいぶ満喫してんな…… 」
「 はい、とても。こーいう場所ですべきことは楽しむことですよ 」
まあ、確かにその通りだな……。
ニナに言われると説得力がましましだ。
「 はい、男子諸君注目ーー 」
グレイブが手を叩いて、皆の注目を集める。
「 明後日。9月1日はなんの日でしょうか? 」
「 明後日って九月1日なのか…… 」
志穏は素直に初知りだった。
「 そっか、志穏はまだ曜日もまともに知らなかったのか 」
「 んで、なんの日何ですかグレイブ様 」
「 ケインー? それを今当てるんだってばよ 」
「 あ”? 」
「 ヒィ!! 」
「 主従関係しっかりしてるんだな~~ 」
この絵に描いたような裏の主従関係に驚愕した。
まさかこんな日常の一コマで露になるとは。
「 いや違いますよ。あの二人が特殊なんですよ 」
「 カルディア!! 余計なこと言うな――― 」
「 あ” 」
「 ヒィ!! 」
あやっぱりだ、100%そういうことだ。
「 んで、グレイブよぉ。なんの日なんだ明後日は 」
ガルラがそう言うとグレイブは今までとは打って変わって、ほんとうにわかんねえのか誰も、と残念そうな表情を作った。
「 明後日、アイリの誕生日だろ―――― 」
志穏達はアウトレットモールの中へ入って買い物を行っていた。皆それぞれにアクセサリーや雑貨品を手に取ってアイリのプレゼントを思案するが、どれも腑に落ちないようだった。
志穏の横にいたケインがため息混じりの声で独りごちる。
「 あのアイリがもらって喜びそうなものか 」
それを聞くと、カルディアが少し笑いながらそれに答えた。
「 ケインでも彼女の欲しがるもの、わからないんですね 」
「 ああ、あいつは明るくてバカで良い奴だが、あまり本心を話さない。特に自分のことは 」
「 でもさーアイリもショックだろうな、俺意外の誰も誕生日おぼえてないなんて 」
グレイブは冗談で茶化すのと半分本気な声音で、そう誰に言うでなく言葉を発した。
それに関しては誰一人反論しなかった。あのケインもそれを聞いても眉ひとつ動かさず黙々と探していた。
「 一応、俺と姉ちゃん意外でのメンバーのリーダーはあいつだろ。もっと興味ぐらい持てよーーせっかく今この瞬間だって姉ちゃんがプレゼント購入のために俺らからあいつを遠ざけさせたくれてんのに 」
「 そのために二人で消えたのか。でも確かに、そのリーダーていう感じはなかったな 」
確かに、エルゼナ郷での自己紹介でも彼女が副リーダーと言った時は驚いた。
ガルラは野暮ったいと言わんばかりに大きな振りでわからん、とポーズを取る。
「 そもそも、好きなものもまともにわからんのに、どうやってプレゼントなんて考えればいいんだ。 」
ガルラの言うことはもっともで、皆が頭をどれだけ転がり回してもそれの答えは出ないだろう。
グレイブは目の端を押さえ、考え込む。
「 今日か明日に聞いてみねえとな……おーい志穏。あいつにしれっと聞いてみてくんね? 」
「 俺? 」
「 だって、おれらは結構長くアイリとは一緒にいるんだから今更聞けないだろ。頼むってばよー 」
確かにそれを考慮すると適役は俺しかいない。
てか、てばよって何?
「 わかった、OKー今日聞いておくよ―――― 」
「 ただいまから2階の金茶にて、人気のパフェシリーズが半額でご賞味頂けます。先着7名様です。 」
現実世界でも聞いたことがあった似たような館内放送が流れた。
そして、一瞬みなに沈黙が広がる。すると、グレイブが途方もない声量で叫ぶ。
「 カルディア!! 」
「 わかってるよ。ん”!! 」
カルディアはこの場の全員の背中を矢継ぎ早に独りずつさすり、
行きますよ!!と号令をかけた。
えっちょなにが-――――――
びゅおん
気づいたら全員が圧巻のスピードで走り去り、2階の方へ駆け上がっていた。
は――――?!
状況についていけず煩雑とした頭に唯一浮かんだのは金茶のパフェシリーズというフレーズだった。一度その単語と目の前の光景を結びつける。
パフェ、半額、全速力の走り。
………そういうことかよっっ!!
志穏は出遅れたことを後悔し、思考回路をまとめきれないまま、2階まで駆け上がる。
パフェ安く食べるだけに能力まで使うかよ、まあ走ってる俺も同罪か。
志穏はいつの間にか笑っていた。
こんな、非常識な平和的日常的生活が来るとは思って居なかったからだ。
階段を上がるとすぐ真横にその店はあり、丁度「 自由の狼煙 」男子メンバーが揃って入るところだった。志穏は急いで中へ入る。
「 金茶パフェ6つ!! 」
そんな、威勢の良い男達の大声が店内で響く。
そして、おしゃれな貴婦人方がそれを気まずそうな眼差しで見ていたのは言うまでもなかった。
女子高生かよ……俺ら。
志穏はその視線に、恥ずかしさで顔が真っ赤になった。




