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収束の交錯世界へ  作者: Unknown
終わりと始まり
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ひとりぼっち

 

何があった…?稲妻みたいな光が落ちてきて、そこからどうなった。


 眠ってるのか起きているのか、志穏自身の中でも定かでなかった。夢を見てる気分だ。だとしたら眠っているのか。


 …にしては意識がはっきりとしているのは何故だろうか。

 目の前が真っ暗で何も見えない。それは瞼の裏なのか、世界全体の色がそうなのか、志穏には分からない。


 もしかして、俺死んだ!?そう思うと、志穏は焦り始めた。

 だが、次の瞬間、暗闇の空間に一筋の光が漏れる。そしてその光を合図とするかのように志穏の世界を光が次々に侵食していく。光が世界を包み込む。すると、がやがやと音がし始めた。


 …夢でも天国でもないらしいな。と死んではいないのだと安堵した。


 やがて視野に色彩が蘇り、目の前が真っ黒ではなく何かの形ある風景に変わる。


 いつも通りの感覚に直った。

 その時初めて分かった。自分は地面に足をついて立っていたことに。


そして前を向き、呆然とする。そこには見たことのない景色が広がっていたのだ。

 志穏は大通りの真ん中にいた。その大路の左右にビルや家、様々な建造物がある。

都会に近い感じだ。

だが、志穏の知っている景色とは何か違う。何かが異様だ。

 地面も少し異様だった。コンクリートとはまるで違う色合いでどちらかと言えば石英に近い感じだった。


 志穏の視界に映るものすべてが異常だった。


 関心を持ち、眺めていると突如視界が遮られる。志穏の周りに人だかりができているからだ。

 20人くらいだろうか。


 「 ん?なんですか。 」


 「 こいつ…“反逆者”か? ]


 「 いや、違うと思うぜ 」


 皆、何故だか志穏に冷え切った目を向けていた。なんというのだろうか、汚物を見るような瞳だったのだ。ムカついた志穏は連中を睨む。

そして、彼等の異様さに気づいた。

全員、服装が一緒なのだ。

皆、白いブカブカの服を来ていて、胸の真ん中には緑色のエメラルドのようなものが縫い付けられている。


とりあえず、ここから離れよう。こいつらなんかやべえ気がする。


 そう思った志穏は目の前にいる人々には目にもくれず、走り出す。数人と肩がぶつかったがは無視して通り抜けた。

 「てめぇ、ぶっ殺すぞ!」そういった罵詈雑言が耳に入るが取り合うつもりはない、そんなことより確認すべきことがあるからだ。


知り合いは結局見つけることは出来なかった。また、自分の知っている場所など目印になる何かさえ発見出来なかった。人々の格好なども志穏が知る現代のものではない。


このことから志穏が今までいた世界では無いことを確信した。

そうなるとここは……


「やっぱり、そうかここは」


――異世界。実験が成功したのだ-


とうとう、行き着いたのか。俺は。

感極まった志穏は涙する。今までの苦悩はもう水に流していいのだ。俺は新しく生まれ変わって生きていけるのだ。

志穏は胸いっぱいに空気を吸い込む。


……いや、どこで生きていくんだ。


興奮していた体全体が底冷えしていくような感じがした。考えてみれば、どうやって生活すればいいのか、全く分からないのだ。

持ち物を確認する。ナイフしか志穏の手元にはない。

叔父の本に何かヒントがないか、読み直すがどこにもそれらしき文は記載されていない。


やばい、これじゃ死ぬぞ…一気に孤独感とおどろおどろしさを感じ始める。

不幸なことに、食べ物飲み物系は一切持ち合わせていなかった。なので3日くらいで飢えてしまう可能性が……。畜生、どうして何も持っていてないんだよ。


どうやら異世界生活が始まって数分の内でデスルートにはまったらしい。

……あー、クソゲー。と志穏は呻いた。

 

 

 久しぶりの土の感触だ!と志穏は山道らしき場所を歩いていた。

気分転換を兼ね、森や森林を探しに開けた土地に出ることにしたのだ。目的などが定まらない志穏にとってこれは無謀とすら呼べるものなのかもしれない。


ただでさえ、食料、水がない中でエネルギーを消費する遠足など言語道断だ!と分かってはいた。だが、どうせやることも見つけれてないなら最初は観光した方がいいのでは。と謎の考えが生じたため、止めれず足を運ぶことにしてしまった。これ、無一文になるやつだな……。


現代とは時間軸が異なるらしく、今は丁度昼頃だ。灼熱の太陽は現代の夏で味わったものと何らお変わりない様子で、季節も同じなのか、日差しがかなり厳しい。

 それと同時に、静かな山の中を歩くのはとても開放感のあることなのだと知った。

 自分から好んで、ハイキングなどしてこなかった志穏にとって新しい発見である。今趣味について訊かれたら、多分ハイキングについて語るな、と志穏は思う。


 ……もし趣味を見つけて、たくさんのことに触れていればいろんな人と仲良く出来たのかな?


 そんな小さなことで人生は変えれたのかもしれないと思うとわずかに未練に近い寂寥感を覚えた。


 …忘れるか。今言っても仕方がない。そうだ、しがらみはとっくに消え去ったんだ。


 志穏は地面の砂粒一つずつを踏み殺すように音を立て進んでいく。

 


 先ほどの街に戻った志穏はうな垂れていた。

 まじでどうすりゃいいんだ。

 

 ――数分前

 無事、開けた高台に到着した。

 自然の楽園にそこに広がる山は幾重に重なり絶景を作り出していた。

 志穏はその景色に息を呑んだ。

 森全体の木々が強い日差しにより、緑、黄緑、茶色と色彩豊かに輝き、呼応するように風に揺られている。

 凄く、きれいだ…。これら一つ一つの事象が重なることでまるで一つの合唱を奏でているように見えたのだから。

 たくさんの木が集まり、たくさんの事象を許容し踏ん張り、今の姿を映している。

 自然の力。それに志穏は感動し感服した。それと同時に負けてられない。頑張ろうと思えたのだ。

 そのまま活気立った志穏は市街地に戻った。

 

 

 そこまでは良かったのだ。だが、街に戻った途端、すぐに憔悴することになった。

 街の道路のど真ん中。積極的に志穏は周りの人に話しかけることにした。だが、見えていないかのように皆、無視し続けるのだ。老若男女問わず、すべての人にだ。

 さすがに志穏は憤り、声を荒げて叫ぶがそれでも誰一人、注意したり救いの手を差し伸べたりする人物はいなかった。邪険にするというよりは存在そのものを認められていないようだったのだ。


 そんなことあるかよ…。マサ〇タウンで三匹のポケモン全てオー〇ド博士から渋られてゲームオーバーになるとはサトシも夢にも思わないだろう。


夢と希望をポケットに入れ、この世界に舞い降りた志穏にとって、それと同じほど予想外な出来事だったのだ。


完全に身動きとれず、酔っぱらいのように覚束ない足取りで街頭にもたれかかった。

 かれこれこの世界に来て2時間くらいかかった。だけどなんにも事態は進展しないままだ。

 志穏は手で顎を摩りながら打開策を考え始めた。

 何をすべきか。それを念頭に置き、混沌とした思考の世界へのめり込んでいく。

 だが、突如としてそれが妨害される。目の前にまたもやたくさんの人が集まり志穏を睨みつけているからだ。


 ……なんだ、またお前らか。


志穏も最初は冷静でいられた。だが、一言も発さずにただ睨めつけてくるその行為が徐々に志穏の感に触れ−


 「てめえら、一体何なんだよ!!!?文句があるなら言ってみろ。あぁ!?」


 無言。


 「何か話せよ!?てめえら!」


 志穏は衝動のまま動く野生動物のように吠えたぎった。

 それでも彼らは無言だ。


 「いい加減にし−」

 「走って!!」


 声?ふいに甲高い声が響いた瞬間、ぐんと志穏の手が引っ張られる。

 !?

 そしてそのまま群衆の間を切り抜けていく。突如現れた闖入者に人々は「なんだ?!」といった声を上げる。俺のことは無視してたくせに普通にしゃべってやがる。と志穏は恨めしく思うがそれどころではない。


 今、自分を導いているこの少女?は一体。

後ろからで顔は見えないが肩まで伸びた麗しい茶髪が延々と揺れ続けていた。




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