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収束の交錯世界へ  作者: Unknown
エルゼナ郷
21/43

休息Time



「まず、俺から自己紹介します。」


男が声を上げた。


「俺はケイン。22歳です。この「自由の狼煙」部隊の副隊長って感じです。好きなものは酒です。」


そんな見た目で酒好きなのかよ。

ケインはいっつもアイリと馬鹿みたいな漫才を繰り広げている青年だ。

志穏と同じくらいの身長と志穏よりも細いくらいの肩幅。茶髪で顔立ちは整っていて、童顔だ。少し眠そうな目をしている。

どちらかと言えば、大学生よりも高校生の方に見える。


「俺の持つシェイル、1つ目。簡単に言えば"空間移転"です。ただ、自分の所有物など、自分が移転する場所の座標を感じ取るために、そこに予め()()を仕向ける必要があります。なので、結構面倒臭い能力です。2つ目はシェイルエネルギーを体内から集中させてバリアを形成する能力です。」

「さっきは助かった、ありがと! よろしくな! ケイン。」

「不手際な部分もありますが、精一杯努めさせて頂きます。」


少し堅苦しめの敬語でケインは挨拶をし終えた。別にタメ口でも全然いいのに。


「今思ったんですけど、普通に考えて隊長の私が自己紹介最初じゃないですか?」

「お前はもう志穏さんに挨拶しただろ。」

「いや、全然足りないですよ。」

「次はニナだ。」

「無視すんな! ですよ。」


眼鏡を掛けた青年、ニナは少し無愛想な顔つきで立ち上がる。


「ニナです。年齢は21歳。趣味は特にありません。私のシェイルは"視"。目に映るものや記憶から構築した情景や映像に接続して、リアルタイムでそこがどうなってるのか探知する能力です。詳しくは()()の際にお見せします。」

「よっ……よろしくね、ニナ。」


終始早口で自己紹介を終えて、座る。

周りの視線すらむず痒くなってしまうくらいの神経質さを持っていそうな感じの青年だ。


すごく人によって個性が出るな、これ。


次の男は唯一、名前すら分からない。黒髪で中肉中背の男だ。面長の優しい顔つきで、とても温和な人なのだと志穏は思う。


「カルディアと申します。18歳。俺の持つシェイルは"強化"というものです。触れた人のシェイルや身体能力を瞬間的に上げることが出来る、この部隊だと基本的にみんなを補佐する能力です。えっと……よろしくお願いします。」


カルディアは笑顔でとても律儀に一礼した。それに志穏は若干たじろいで、合わせて「こちらこそ。」と一礼した。


次はガタイの良く、剛健な男が口を開く。


「ガルラだ。21歳。好きなタイプは巨乳で優しい女の人だ。」

「訊いてねえよ。」

「ブフォwww」


ガルラのボケにケインが淡々とツッコみ、それをアイリが吹き出して笑う。セシルは静かにため息をついた。

いきなりのタメに志穏は少しびっくりしたが、この方がやはり話しやすいと思った。


「シェイルは"巨人操作"だ。先の戦いで見せた通りの能力で、"巨人操作"って言っても30メートルのを現出させるのが手一杯なんだけどな。けど、お前は絶対守るから安心しろ、よろしくな! 志穏。」

「おう!よろしくな、ガルラ。」


太い木の幹のような腕と志穏は握手を交わした。腕の感触は鉄パイプのように硬い。


「ガルラは全く遠慮ってのがないですねー。普通そんなに最初からタメ口でいきますか?」

「ばァか。こういうのはタメの方が相手と打ち解けやすいんだよ。」


コンコンとドアを叩く音がする。


「入って」

「失礼します。」


ミアネ含む数人の村人が中に入る。それと同時にとても良い匂いが鼻腔をつく。

彼等が引っ張ってきている配膳台の上に載っけられていたのは料理と食器だ。


「え! ミアネさんこれって……。」

「はい。皆様先の戦闘でお疲れのようですし……お腹すきませんか?」

「滅茶苦茶空いてます!!」


ほぼ全員が快哉を叫んだ。落ち着きのあるセシルですら立ち上がって、「やったぁーー!」と声を上げた。そして、セシルは恥ずかしそうに、咳払いをした。


「なんだ、我主(がぬし)もやっぱりお腹減ってたんじゃないですか。」

「うるさい! 人間なんだしお腹も空くでしょ。」


ムキになるセシルはとても可愛い。と志穏は思う。

かなり大きな声だったが、グレイブは起きる気配も無い。余程疲れていたのだろう。


「んじゃぁ、グレイブを起こさない程度に騒いで、食べまくりますか。」

「いぇーい!」


皆が一斉にグラスを交わした。

……俺は未成年だから水なんだけど。



「へぇー!志穏さん。そんな異世界に住んでたんですか。」

「ああ。色々面倒臭い世界だったな。」

「それで、その叔父さん? の本がきっかけでここに来たと。」

「ああ、そして叔父さんの残した何かを知るために今もさがしてる。」


アイリは魚の刺身をつまみながら、志穏に尋ねてきた。自分が住んでいた世界についてだ。


「何か見つかりましたか?」


「いや、まだ何も。」


そう答えると、ガウラが「まだまだ、時間あるんだ。ゆっくり探していこうぜ!」とゲラゲラ笑い、セシルが「そうね。私達もいるもの。」と言う。

皆、随分と盛り上がっていた。闘いの後の束の間の休みはやはりなんでも楽しく感じるのだろう。ニナは外に出ていっていた。


「けど、やっぱり思い残すこととかあるんじゃないですか? 親だったり、友達だったり。」


親。友達。

一瞬だけ、頭に彼等の姿が過ぎる。後悔があるか、そう問われればきっと頷く。

それは偏頭痛のように、不意に志穏を襲い、突き刺すような痛み。絶対に消えることは無い。


「あるよ……俺の人生、後悔(思い残す)だらけだったからな。もう後悔しないためにここに来たんだよ。」


それを聞き、アイリはやおら静かに「今の野暮な質問でしたね」と言い、それ以上聞いてこなかった。

いつもある爛々とした明るさに影が刺したように見えた。

ちょっと、気遣わせる答え方しちまったな……。


「そんなしおらしい顔すんなよ!アイリ。」

「ひゃぁ!」


ガルラがアイリを軽く叩く。


「今はとことん飲んで楽しむ時間でいいだろ!」

「ほんと、その通りだ。お前の馬鹿面がないと酒も進まねえ。」


2人共、多分アイリを励ますようなつもりで言ったのだと思う。


「馬鹿面は余分ですよケイン!」


アイリが顔を赤くして叫ぶ。そして、猫じゃらしで遊ばれる猫のように可愛いらしく暴れていた。


「静かに。グレイブを起こさない程度って言ったはずよ。」

我主(がぬし)ぃ! こいつらがいじめてくるんですよ。」


自然と幸せな気分になるような光景だ。志穏は細める。


「志穏さん。まだ成人じゃないですよね? これ、よければ。」


彼女達に見入っていた志穏の横にカルディアがコップ1杯の炭酸ソーダを寄越した。


「……ありがとうございます。」

「敬語じゃなくていいですよ。」


カルディアは苦笑する。

志穏はカルディアがあまりにも親切丁寧に話しかけて来るから、つい敬語に返してしまう。

咳払いをして、言葉を探す。


「ほんと、仲良いよな。ここの人達。」

「ええ。だから、喧嘩しても必ず最後は同じところに辿り着きます。」

「……カルディアはどうしてこの組織に入ったの?」

「ここにいる人、皆、助けてもらった人ばっかなんです、セシルさんとグレイブさんに。紛争地帯だったり、スラム街だったり、迫害地区だったりで、大勢の人達を助け、セシルとグレイブさんは衣食住を与えました。俺達はそのうちの1人。2人みたいになりたいと思い、非力ながら、お伴したんです。そして、"自由の狼煙"に入りました。」


泣き笑いが混ざったような何とも言えない表情でカルディアは言う。


「やっぱセシルはすげえな。」

「ほんとにセシルさんは凄いです。そんなに俺達と年変わんないのに、あんなにたくさんのもの抱え込んでも、正しく居られるなんて、普通はグレちゃいますよ。」


抱えてるもの?


「セシルは何を抱えてるんだ?」

「全部はわかり兼ねます、後悔だったり、志穏さんの事だったり、沢山の人の希望だったり……私が言うのもあれなんですが、ああ見えても思春期盛んな女の子です。本当はもっとしたい事とかあるんだと思います。だから、全部それ抱えても折れずに前へ進むのはきっと苦しいと思います。」


ほんとにその通りだ。俺だったら逃げ出しちまう。志穏は思う。


「それで、セシルさんの荷を少しでも軽くするために私達も頑張ってはいます。けど、お役に立ててるのか正直不安です。」

「めっちゃ役に立ってると思う。」


志穏は即答した。カルディアはそれに少しびっくりしていた。面長なその顔の表情が少しだけ間抜けな面に見えておかしい。


「ついさっきのゼロア戦だって、カルディア達が最初の敵部隊を倒してくれたおかげで、セシルがすぐ俺達の所に向かえたんだ! ほんとに助かった。」

「……志穏さん。」

「無駄な人なんて一人もいないんだよ、きっと。皆が一つ一つの点なんだ。見てる方向が違うから、そこから沢山の方へ点から線が伸びて"形"をつくるんだ。」


やんちゃして騒ぐ3人を見て、志穏はそう思った。ひとりひとりが点なんだ。皆、見てる方向が違うから、傷つくタイミングも違うし、喜ぶタイミングも違う。

だから、求め合う、磁石のプラスマイナスのように。


「それに、……ただでさえ鬱憤とか抱え込んでんだろ? なら愚痴の1つくらい聞いてやらねえと反抗期しちまうぜ。」


艶やかで柔らかい笑顔のセシルを眺めながら言う。少し恥ずかしそうに炭酸水を飲んでいる姿は至極可愛らしい。


「……確かに、そうですね。」


失笑してカルディアは答えた。


「ついでに俺の今までの暮らしの愚痴も聞いてくれると嬉しいなぁ。」

「付き合いますよ。2杯目、いりますか?」


カルディアは丁寧な手つきでソーダを注いでくれた。



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