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20歳(みどりの秘密2)

戸の閉まる音がして、大樹の足音が遠ざかっていく。


大好きです、触ってみたい…大樹は確かにそう言ったはずだ。男子はときどき予想のつかないことを言うからよく分からない。でも、大好きと言われて悪い気はしない。


紅潮した頬をうつむき加減にして、みどりは自らの胸の下を見る。大きく開かれた両脚の内側には、胸よりも遥かに大きな…臨月の妊婦をも凌駕する膨らみがあり、みどりの呼吸に合わせて上下していた。みどりは先ほどの大樹の手つきを思い出しながら、そっとその白い皮膚に触れてみる。


「…おかしいなあ…」


同じように触ったのに、さっき電流のように感じたゾクゾク感は、まるでない。膨らんできたお腹を触るのは、もちろん気持ちよいことには気持ちよいけれど、さっき感じたような異次元の快感には程遠かった。


あの快感は、満腹で気絶寸前のときに感じる快感に近い。何時間もかけて胃袋をいじめ抜き、最後の最後、調子がよいときにだけ感じられる快感だ。それが、こんなに余裕があるうちから、大樹に触ってもらっただけで感じられるなんて…。


自分でさするのと、他人にさすってもらうのとでは、こうも実感が異なるものなのだろうか。途中で大樹を追い出さなければ、満腹になる前に気を失ってしまいそうだった。もし、気絶寸前まで膨らませたお腹を大樹になでてもらえたら…そのときはどんな感覚が押し寄せるのだろう?


「よーし! 今夜も限界まで食べるぞお!」


みどりは誰もいない自室で、密かに気合いを入れ直したのだった。


目の前には、当初の量に比べればごく僅かとはいえ、まだ何パックもの惣菜が残っている。ゴーヤチャンプルを少しチンして、みどりは食事を再開した。


ゴーヤの苦みが、何十人前もの食料を一夜にして味わい続けてきたみどりの舌へアプローチし、味覚を程よくリセットしてくれる。


「うーん、おいしいなぁ! …やっぱ、食べるのって、幸せ!」


過食症の人は、胃袋へ物を素早く詰め込むように、ほとんど味わうことなく食料を流し込んでいくらしい。それはたいそう勿体ないと、みどりは思う。


結果として胃袋がパンパンになるのも気持ちいいけれど、パンパンになっていく過程で味わう食べ物の味も、みどりは大好きだった。だから週末は、じっくり一晩かけて食事をし、美味しいものを堪能するのだ。


ゴーヤチャンプルのパックを空にし、少し甘い物が食べたくなったみどりは、続いて大学芋のパックに手を伸ばす。普通なら家族でシェアして食べるような、大きな大学芋のパックである。


「あー、このサクッとした感じがまたいいんだよね! また今度買おう!」


調理してから時間が経っているはずなのに、食感が失われていないのは素晴らしいことだと思う。外はさっくり、中はしっとり…みどり好みの大学芋であった。


半分ほどで、舌が甘さに飽きてきたため、大学芋の途中で麻婆豆腐のパックも空ける。こんな風に、対極にある味を交互に試しつつ食物を渡り歩いていくのが、みどりのいつものやり方だった。お…これはかなり本格的に辛いやつだ…ごはんが進む…。


みどりは舌鼓を打ちながら、大樹の帰りを待ちわびるのであった。

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