生ハムメロンで鬼退治
今は昔、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ狩りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると川の上流から大きな桃ではなく大きな緑色の球体が流れてきました。それは若葉のように薄い緑色の皮に包まれ、細い線が川の上を走っていました。物珍しさにおばあさんが持ち上げると意外と軽く、おばあさんはその奇妙な物体をそのまま持ち帰りました。
家に帰るとおじいさんが昼食を食べていました。。
「あら、おじいさん。それはなんですか?」
「これか? 猪の肉を加工して作った『生ハム』とか言うものだ。ちょっと塩辛いがうまい」
おじいさんが食べていたのは薄いピンク色をした肉でした。おじいさんは狩人でしたが獲物はほとんど売ってしまうのでこうして肉を食べる機会は少ないのです。
「ところでばあさんや。手に持っている、その緑色のはなんだい?」
「川を流れていたんですよ。スイカよりも軽くって色も薄いんですが。瓜ですかねえ」
「それは確かメロンとかいうやつだ。なんでもスイカよりも甘くてうまいらしい」
切ってみると中身はスイカのような赤ではなく瓜に近い黄緑でした。しかし、食べてみると甘味はほとんどなくどちらかというと野菜のような味でした。
しかしそこでおじいさんが驚きの声をあげます。
「お、おいばあさん! このメロンと生ハム、いっしょに食うとむちゃくちゃうまいぞ!」
「本当ですか?」
半信半疑のおばあさんでしたが、生ハムとメロンをいっしょに食べてみると強い衝撃を受けました。
生ハムは塩で味付けされてとても塩辛くて老人が食べられたものじゃありません。メロンも全く甘くなくて歯ごたえもありません。しかし、なんということでしょう。この二つが口の中で出会うと奇跡の味が誕生したのです。
生ハムの塩辛さをメロンが中和し、メロンの青臭さを生ハムの風味がカバーしているのです。単純に生ハムとメロンを一度に食べているだけなのに、これはもはや一つの料理として成立しています。
それからおばあさんは食べなかったメロンの種を植えてメロンを育てました。おじいさんはお酒を我慢してこつこととハムを買うためのお金を貯めました。
そして次の年。おばあさんとおじいさんはメロンを収穫してハムを買うと、生ハムメロンを売り出しました。最初は人気がありませんでしたが、口コミから人気が高まりました。生ハムメロンで大金持ちになったおじいさんとおばあさんは金の力で無双して鬼が島の鬼たちを(経済的に)やっつけましたとさ。