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姫とお茶会と姉姫様

昨日、突然知らない国のお姫様になってしまったおっさんだが、とりあえず曖昧な記憶の他に生きた情報が欲しい。なので、本日は午前中のうちに城の中をうろつくことにした。

なにせ、自分がおっさんということ以外は何も思い出せないのだ。

取り敢えず昨日と同じように、朝起きたら侍女達が勝手に身なりを整えてくれて、いつものように国王様に挨拶を済ませ、お妃様と姉様達と朝食を摂った。


「さて、これからどうするかな?」


一度、自分の部屋に戻ってから城内を散策する準備をした。

このまま何事もなく過ごせるならいいが・・・。

多少はイロリ姫の記憶が蘇っているが、正直不安でしかたがない。


「イロリ姫様、お供致します」


部屋を出ると、一人の侍女が声をかけてついてきた。

確か、俺付きの侍女の侍女長でアーニャという名だったはず。

まずは、2人の姉姫のところに行くか。

一応、今ある記憶の中に城の全体図があったのは助かった。

とりあえず、上姉のところから行くとしよう。

名前は確か、ネムリスと言ったかな?


「失礼いたします、ネムリス姫様」


アーニャが扉を軽くノックすると返事がしたので

挨拶をして部屋に入る。


「ネムリス姉様、失礼いたします」

「あら〜、イロリちゃんだったのね。私に何か用かしら〜?」


おっとりした口調で、ネムリスが訪ねてくる。

長く真っ直ぐな髪と、少し眠そうな目が特徴で、見た目通りゆったりとした動きでこちらに振り向いた。

ポワポワした雰囲気で、人を和ませてくれる。


「ネムリスお姉様とお話がしたくて」

「そうなのね〜、それじゃオルディナちゃんも呼んで〜、ちょっと早いけどお庭でお茶をしましょう〜」


ネムリスはそう言うと、侍女を呼びお茶の用意を頼んでいた。

どうやら、アーニャもお茶の準備に同行するようだ。


そして、先ほどネムリスが言っていた人物は、下姉のオルディナだ。

ネムリスとは反対に、元気に溢れている姫だ。

体を動かすことが好きで、姫であるにも関わらず髪を短くしており、騎士団と共に武術に励んでいる。

なので、周りからも姫騎士様と呼ばれている。

少し変わり者でもあって、自分の侍女を全て女騎士にしている。

これがまた、女性や子供に人気で、憧れの対象になっているらしい。


「なるほど、どうやら記憶が少し蘇ったようだ。姉姫達の情報がはっきりと頭の中に浮かび上がってきたぞ」


姉姫2人に聞こえない声で独り言ちた。

どうやら、何かキーワードになっているものを得ると記憶が更新されるようだ。

城の中庭で、お茶をしながら話をしていると、イロリの記憶が少しずつ浮かび上がってきた。


「今日のお菓子は〜、特に美味しいわね〜」

「ネムリスお姉様は、相変わらず甘いものが好きですね」

「そういう、オルディナお姉様も、そんなにお菓子を抱え込んで、はしたないですわよ」


姉姫達が紅茶そっちのけでお菓子を取り合い、楽しそうにはしゃぐ姿を眺める。

なんだか和んでしまう光景だ。


「あぁ、今日も紅茶が美味いですわ」


俺は、甘いものが好きではないので、あまり甘くないお菓子を紅茶と共に食べている。


「あらあらあら、3人ともずるいわよ」


そんな声が聞こえたので、視線だけ動かして見やると、お妃がこちらに向かって歩いてきていた。

この国の王妃、そして俺達の母親、名前はミューズという。


「あら〜、お母様。今日は〜、離宮でのんびりするのではなかったのですか〜?」

「本当ならそうしていたのですが、なんでも急にお客様が訪問いたしたと言うので」

「急なお客様ですか、珍しいですね」

「それで、お客様とはどの様な方なのです?」


こんな時間に客が来るのか、どうやら約束もしていない様だが、いったい誰なのだろう?


「イロリは興味あるみたいだけど、私達には関係ないことなのだから気にしても仕方ないわよ」

「そうね〜、大抵はお父様、国王陛下に取り継ぎたい人ばかりなのですから〜」

「あらあら、私の娘達はつまらないこと言うのね」

「いつものことですから」


まぁ、そう思うのが普通だよな。

少なくとも、姉姫二人は自分達に関係ないことだと完全に割り切ってしまっているようだ。


「とにかく、ご挨拶をしなくてはならないので、それが終わったら私もお茶会に参加させてくださいね」


そう言って、ミューズは急ぎ足で立ち去ってしまった。


ただ、その時は平和だった俺の日常が大変な面倒ごとになるとは露とも思っていなかったのだ。

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