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異世界に転生したから植民地帝国を築く  作者: 第616特別情報大隊
全ての戦争を終わらせるための戦争
252/285

大陸海峡海戦(2)

……………………


 王国海軍本国艦隊は大陸海峡チャネルに突入した。


 巡洋艦や駆逐艦の艦長は我先にと、大陸海峡の入り口に突入し、そして機雷の被害があった。むしろ、彼らは自分たちが機雷を踏むことで、友軍の戦艦群の突入を支援しようとしているのだ。


 そして、彼らが血を流して切り開いた突破口から王国海軍本国艦隊が大陸海峡の機雷源を突破して、ついに共和国海軍が必死になって往復している海上兵站線に姿を現した。


 共和国海軍第1航空戦隊の情報から、既に王国海軍本国艦隊が大陸海峡に迫っていることを知っていた共和国海軍大洋艦隊は上陸部隊への支援を切り上げ、分散していた艦隊を組み込むと、アルビオン島周辺の哨戒活動を行っている艦艇以外の全ての艦艇が、大陸海峡に突入してきた王国海軍本国艦隊の迎撃に向けられた。


 王国海軍本国艦隊主力艦16隻、共和国海軍大洋艦隊主力艦25隻。


 共和国海軍大洋艦隊は何としてもここで勝利しなければ、アルビオン島上陸作戦であるゼーレーヴェ作戦が失敗する。海上兵站線を遮断され、また上陸部隊への艦砲による支援も不可能となってしまう。


「シェア提督。王国海軍本国艦隊が大陸海峡の機雷源を突破しました。間もなく、こちらに到達します。第1航空戦隊と第2航空戦隊は引き続き攻撃を実行するとのことですが、彼らも損耗を出しており、全力での支援は不可能かと」


 共和国海軍大洋艦隊旗艦ロスバッハの艦橋で参謀が艦隊司令官であるゼルギウス・フォン・シェア共和国海軍大将に告げる。


「機雷源をごり押しで突破したか。勇敢を越えた蛮勇だな」


 参謀の報告にゼルギウスが首を横に振った。


「我々が彼らの立場でも同じことをしたでしょう、祖国が危機に晒されているのに、泊地でのうのうと過ごしていることなどありあえないのでは」

「まさしくその通りだ。我々は彼らのような選択肢を迫られんかっただけましか」


 参謀が告げるのに、ゼルギウスが肩を竦めた。


「しかし、腐っても王国海軍だ。どう戦うべきか」


 そう告げてゼルギウスは艦橋から前方を見据える。


「我々は数において優勢ですが、鈍足の旧式戦艦を抱えています。頭を押さえられると面倒なことになりますな」

「艦隊を分離するか」


 大洋艦隊は主力艦の数でこそ王国海軍に追随しているが、半数以上は旧式戦艦だ。鈍足で、艦隊の足を引っ張る存在である。火力においても新型戦艦と比べると、格段に落ちるというのが現状である。


 共和国海軍がこの海戦に投入した主力艦25隻のうち、10隻は旧式戦艦。艦隊は彼らの行動に合わせて行動しているため、艦隊の機動力は格段に低下している。


 対する王国海軍は全戦艦が新型戦艦だ。速力と火力に優れ、これまでの旧式戦艦を過去の遺物に変え、建艦競争を加速させた艦艇たちだ。それが共和国海軍に向けて突き進んできている。


「艦隊を分離させるのですか?」

「ああ。旧式戦艦は捨て置く。新型戦艦だけで艦隊決戦に挑む。旧式戦艦群は後方から追随させろ。水雷戦隊は雷撃戦の準備。これでケリをつけるぞ」


 旧式戦艦を艦隊に追随させるのにはデメリットが多すぎる。火力も十分でなく、艦隊運動の邪魔にしかならない艦艇を引き連れるのには、あまりにも非効率だ。


 だから、ゼルギウスは艦隊を分離することにした。速度と火力で優れた新型戦艦だけで構成された艦隊と、旧式戦艦だけで構成させれた艦隊とに。


 これで王国海軍本国艦隊の16隻の主力艦は共和国海軍大洋艦隊の主力艦15隻と戦うことになった。主力艦の数の上では両者はほぼ対等の立場になったわけである。


「主力艦は敵艦隊の頭を押さえるぞ。敵は機雷源の突破で少なからぬ数の随伴艦を失っている。水雷戦隊は近接して雷撃戦を始めよ。ここで連中を皆殺しにし、大陸海峡を真に我々のものに」

「アイ、サー。進路変更0-2-0。敵艦隊の頭を押さえます」


 王国海軍本国艦隊はそれに応じるように頭を押さえられまいと、急速回頭する。ふたつの艦隊は入り乱れ、共和国海軍大洋艦隊の動きをいなし、王国海軍本国艦隊は艦砲の砲撃を始め、同航砲戦にもつれ込んだ。


「敵艦隊、狙いを本艦に定めています!」


 共和国海軍大洋艦隊の旗艦ロスバッハで、見張りの水兵が叫ぶ。


「我々も反撃だ。目標をアイアン・デューク級戦艦に集中。全火力を叩き込め。数では負けているが練度も状況も我々が優位だ。我々が艦隊決戦において負けることなどありえない。叩き潰せ!」


 砲弾が降り注ぐのに、ゼルギウスが叫ぶ。


「アイ、サー! 目標をアイアン・デューク級戦艦へ! 撃ち方始め!」


 王国海軍本国艦隊の砲撃に共和国海軍大洋艦隊の反撃が始まる。


 海にいくつもの水柱が立ち上り、共和国海軍大洋艦隊の旗艦であるロスバッハと王国海軍本国艦隊の旗艦であるアイアン・デュークに砲弾の雨が降り注ぐ。両者とも命中弾はないが、このまま撃ち合いをしていれば、いずれは致命的な打撃を受けるだろう。


「命中弾が少ない。艦隊を寄せろ。近距離で仕留めるぞ」

「ですが、このままでは被害が!」


 ゼルギウスが告げるのに、参謀がそう叫ぶ。


「共和国海軍としての名誉を果たせ。王国の連中は義務を果たしている。それに対して最大限の敬意を払い──」


 ゼルギウスが海軍の制帽を深く被る。


「皆殺しにしろ」


 そう告げると同時にロスバッハの30.5センチ砲が火を噴いた。砲弾は大きな弧を描いて空中を突き進み、アイアン・デュークの2番砲塔に命中した。


 それと同時にアイアン・デュークもロスバッハに反撃を加える。彼らの装備する13.5インチ砲が火を噴き、ロスバッハにいつでも命中弾を与えられるような精度となった。着弾した砲弾と砲弾に挟み込まれ、いつロスバッハに命中弾が出てもおかしくない。


「挟叉弾です! 敵は本艦に狙いを定めました!」

「上等だ。天下の王国海軍を終わらせてやる」


 将校の言葉にゼルギウスはそう返し、砲戦を継続する。


 同時に大洋艦隊の水雷戦隊が動いていた。


 航空攻撃と機雷によって多数の補助艦艇を失った王国海軍本国艦隊の懐に向けて、巡洋艦を先頭とする水雷戦隊が突撃する。


 王国海軍本国艦隊の補助艦は必死になって共和国海軍の水雷戦隊の突撃を防ごうとするが、あまりにも数に差があり過ぎた。共和国海軍大洋艦隊の水雷戦隊は王国海軍本国艦隊の護衛をすり抜け、その魚雷の矛先を戦艦に向けた。


「雷戦用意!」

「雷戦用意! 1番から5番魚雷発射管、撃ち方用意!」


 巡洋艦と駆逐艦は戦艦を前にして、急速に回頭し、その兵装である魚雷発射管を王国海軍の戦艦群に向ける。周辺には王国海軍の戦艦の副砲による砲撃と、友軍の砲撃が降り注いでおり、決死の攻撃だ。


「雷戦始め!」


 そして、鉾は放たれた。


 共和国海軍大洋艦隊との砲戦に集中しなければならなかった王国海軍本国艦隊の回避行動は制限され、戦艦の腹に魚雷が叩き込まれる。


 全ての魚雷は命中しなかった。突入した6個水雷戦隊のうち、戦艦に打撃を与えられたのは3個水雷戦隊。戦果は戦艦3隻の轟沈と3隻の大破だった。


 だが、これは王国海軍本国艦隊にとって致命的だった。


 王国海軍本国艦隊は既に数における優位を完全に失った。主力艦は10隻にまで激減している。共和国海軍大洋艦隊も王国海軍本国艦隊の砲撃で、3隻が戦闘不能に陥っている。だが、数における優位は揺るがない。


 共和国海軍大洋艦隊は数に任せて砲弾の雨を王国海軍本国艦隊に降り注がせた。艦隊旗艦であるアイアン・デュークが轟沈し、他の艦艇も練度の高い共和国海軍大洋艦隊の手によって次々に葬られていく。


「シェア提督。第1航空戦隊と第2航空戦隊から航空支援が可能との報告が入りました」

「いや。もう必要ない」


 通信兵が告げるのに、ゼルギウスは首を横に振った。


「戦艦同士の殴り合いなどこれが最後だろう。最後ぐらいは綺麗に締めくくろうではないか。かつて我々は戦艦という国家の威信を信じて猛々しく戦ったということを歴史に記そうではないか。それが海軍というものだ」


 既に王国海軍本国艦隊の主力艦は6隻となった。どの艦艇も大きなダメージを受けており、懸命に反撃を加えているものの、それは共和国海軍大洋艦隊にとって脅威と呼べるものではなかった。


「名誉ある彼らに敬意を。殲滅だ」


 ゼルギウスのこの命令から2時間の海戦が行われ、王国海軍本国艦隊は真に全滅した。あの誇り高き、世界最強の海軍が、共和国海軍大洋艦隊を前に屈した。


 大陸海峡海戦。


 そう歴史に記される戦いは、戦艦がもっとも海戦において活躍した戦いとして、歴史に記されたのだった。


 同時にそれは戦艦の時代の終わりを意味していた。


 戦艦の時代は終わり、航空機の時代が訪れる。


 地球と同じ海戦の変化はこの世界でもなされた。


……………………

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