方針変更
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放課後、僕はしぱしぱする目をこすりながらダンス部部室へと向かった。
鞄の中には昨日作った部内コンテスト用のCDが4枚入っている。
夜遅くまで作業が長引いてしまったので完成報告はメールで送った。
休み時間が来る度に仮眠を取っていたが、とうとう起こされないまま放課後を迎えた。
メール見てくれてたら部室に来てると思うけど……。
ダンス部室には既に山田と千家さんが来ていた。
「お疲れ」
「こんにちは」
「ん」
僕がドアをしめると山田は黙ってCDプレイヤーを机の上に置く。
特に答えずにDisc1と書いたCDをセットして二人の方へ振り向いた。
「聞いて欲しい」
そう告げて再生のスイッチを押し込む。
CDが回転して、再生秒数がカウントを始める。
――
2:34と表示され曲がフェードアウトしきり、停止ボタンを押した。
一瞬の沈黙。
僕は身構えるようにお腹の前で腕を組んだ。
「先輩、とても素敵な曲ですね。 歌も先輩が歌っているのですか? 凄く自然で男の人って感じもしないし……」
「……」
「……山田、正直に言ってくれ」
「そうだね、気になるのは曲の歌詞が少し飛んでるところかな。短縮版だからしょうがない部分もあるし……」
「……」
「アタシ、これじゃだめだと思う」
少し間を置いて僕も頷いた。
「実は僕もこれじゃだめだと思ってる」
「先輩?」
口に手のひらをあてて千家さんはびっくりした表情になった。
その後黙ったままこちらに視線を投げてきたので、理由を言うことにした。
「作り込みが甘い、道具が足りない、音源が薄い……時間が足りない」
山田は黙ったまま頷いた。
僕はそのまま考えてまとめてきたことを口に出した。
「もちろん音源の問題は作り込みでクリア出来るんだけど、今回は時間がないんだ」
「音源が完成してから振り付けをして、それから覚えて練習する。 うまくいったとしても練習時間が短くなる」
「今回はダンス部の中で選考があるから、そこで負けないようにしないといけない」
「そうだね、まずステージに立たなきゃいけないし」
山田も真剣な表情で言った。
僕は90度に腰を曲げ、頭を下げた。
「ごめん、自分の実力も環境もまだ分かってなかった、やってみて痛感した、簡単じゃなかった」
「せ、先輩。 頭を上げて下さい」
「でさ、田中。 どうするのさ」
僕は交互に二人の顔を見た。
「僕は、コンテストで優勝したい。 そのためには手段を変えてでも、どうしてもステージに立ちたいんだ」
「……だから、部内の予選で負けるわけにはいかないと思ってる。 だから、今回は曲と振り付けは借りようと思う」
「でも、その曲はまだ未発表曲だからダンス部のコンテストが終わったら発表されるまでもう使えない」
「……それで納得してくれるんなら、代わりの曲をやりたい」
本当は未来に出てくる曲を使って勝とうとか、やりたくはなかった。
でも、まずステージに立たなきゃ何も始まらない。
山田と千家さんは顔を見合わせてプッと笑ったようだった。
山田は半笑いのまま僕に近づいてきて肩を叩く。
「アンタって真面目すぎ、もうちょっと肩の力抜きなよ」
「……頑張りましょう」
どうやら僕の心配は考えすぎだったようだ。
僕は鞄の中からDisc2と書かれたCDを取り出しプレイヤーにセットする。
「じゃ、見せて貰うな」
「早く見たいです」
僕は力を抜いてこう言った。
「まずは準備体操とウォーミングアップしよっか」