鏡
アルミホイル張りだと鏡面にならないことが判明しましたので、「ガラス用ミラーフィルム」に訂正します。
ご迷惑をおかけしました。
1500pv達成しました、呼んでくれてありがとうございます。
―山田視点―
5月はじめ、ジメジメしたり雨が降ったりなんだか憂鬱な気分。
田中の言う三つ目の話したいこととは「ダンスコンテストは自前の曲と振り付けでやりたいから振り付けをよろしく」だった。
コンテストまでにクリアしなきゃいけないことは―――
まず曲を作る。
歌詞は貰ったから振り付けも始めている。
歌詞の内容は新しく加わった後輩ちゃんにも目を通して貰い、少し変えてるとか。
大体のbpmは聞いてるから振りはなんとか出来そうだけど、最終的に調整はしないといけない。
次に覚えて練習。
……期間が制限されている上に後輩ちゃんのスペックがよく分かってないから微妙。
一応体幹はイイカンジ――田中よりイイくらいなんだけど、体力がちょっと不足な部分があるかも。
アタシが外部でやってるときは田中と一緒に神社で特訓してるとか。
最大の課題……。
昨日のダンス部会議で決まったことなんだけど、ダンスコンテストの枠が2つのところ3グループが立候補した。
勝ち抜かなければアタシ達はコンテストにすら出られない。
5月29日にダンス部で出場グループを決めるコンテストを開くことになった。
最低条件が3人以上のグループだから一人もかけられないし、前例のないアイドルダンスだからキビシイかも。
2分30秒という枠の中での戦い、ハンパな気持ちじゃ勝てない。
今日は田中が作曲にかかりきりになるから、後輩ちゃんと二人でトレーニングとレッスンをする。
アタシが部室に入ったら、後輩ちゃんはもう着替えを終わって準備してた。
やる気は十分あるのかな。
速攻で着替えてトレーニングを始めた。
ラジオ体操をキッチリ10分やってから、学校の外周を4週、おおよそ3キロ。
外周はグラウンドと違って坂とかがあるから割とキツイ。
……田中のメニューに合わせてみたけど毎日これをやるのは結構大変かもね。
走った後はドキドキが収まるまで15分はちゃんと歩けって言ってたっけな。
―――
「……結構疲れるねぇ」
「……はい、そうですね」
ランニングを終わり、後輩ちゃんとゆっくり話しながらクールダウンをする。
……それにしてもポニーテールに髪をまとめた後輩ちゃんのうなじはなんかエロい、ちょっとキモオタっぽい田中じゃなくてもヤられそうだな。
あのじっとりと汗に濡れたところに触れたらどんな感じだろうと後ろに回って手を伸ばしてみた。
「……先輩?」
「あっ、いっいやどうしたん?」
「……ちょっとなんとなく」
……恐ろしい子! アタシの邪な感情を察知したとでもいうの!?
「えっとね、今日はこれから汗を拭いたらこのままストレッチを30分、その後基本ステップね」
「はい」
―――
ストレッチが終わり、部室に手作りの鏡を5枚立てる。
―――三人になったばかりのときにS駅の貸しフロアに行ったとき、鏡のある練習場にいたく感動した田中が作ったものだ。
片面に黄色く塗ってある大きな板を配達して貰い、ツルツルの面にガラス用ミラーフィルムを表に貼っていた。
確認しながら踊れるってのはいいもんだね。
「じゃ、やろっか」
「はい」
CDをかけてじっくりと基本ステップを数種類と、繰り返した。
飽きないように反復練習、今のアタシたちに出来ることはこれくらいだ。
18時まで休憩を挟みながら練習を繰り返し、部活を終わることにした。
――――――
帰り道、後輩ちゃんとならんで傘を差して駅までの道を歩いている。
「ねえ、なんで後輩ちゃんは一緒にアイドルやろうと思ったの?」
「……うちの神社で、田中先輩が踊っていたんです」
「うん、アタシも知ってる」
「その時に、私も踊ってみたいなって思ったんです」
「ん~、ちょっとわかるかも。 アタシもなんとなく田中の奴をダンスに誘っちゃったし。 でもそれだけなの? よくあそこまでがんばれるね」
「……それは、鏡ですかね?」
「……鏡?」
「鏡に映った姿に見えて、田中先輩も山田先輩も頑張ってるから私も頑張らなきゃなって思えるんです」
「ふーん、そんなもんかねぇ」
「はい」
そう言うと後輩ちゃんはニッコリと微笑んだ。
田中から曲が出来たとメールがあったのはその日の夜だった。