部活紹介
今日は新入生のオリエンテーションと部活紹介である。
基本的に二年生は登校していない。
部活動に参加していない僕ではあるが、参加していないが故に手伝いとして借り出されている。
今回は僕も部活紹介を見たい立場なのでありがたいのだが。
僕たち二年生は午前中は部活紹介の手伝い打ち合わせがあり、午後は体育館で部活紹介を受ける新入生の誘導係を行う。
誘導係と言っても腕章をつけてほぼ立ったままなのではあるが。
さてと、そろそろ打ち合わせが始まるから移動するか。
――――――
午後になり、新入生達の移動が始まった。
僕は校内渡り廊下の分岐点に誘導係として配置されている。
とはいえ、クラス単位で移動しているため前に付いていけばいいから役目としては大したことがない。
しばらく立っていると人波も途切れた。
腕につけたチープカシオで時間を確認する、あと8分で始まるようだからボチボチ移動するか。
と、渡り廊下の向こうに人影が見えたので手を振ってみた。
相手はこちらに気づき走り寄ってくる。
「す、すみません、トイレ行ってる間に……」
「まだ大丈夫だからゆっくりいこう、僕も移動するから付いてきて」
「はい」
黒髪長髪の女の子を連れて体育館へ移動する。
送った後は人数確認をして部活紹介である。
――――――
部活紹介が無事終わり、新入生達が教室へ戻る。
途中の通路は部活の勧誘合戦の会場となっており、もの凄い活気だ。
体育館の中の新入生は全て出終わり、僕たち誘導組は片付けに入った。
イス300あまり、片付ける人数は10人……楽勝。
結局10分ほどで片付けが終わり、先生の厚意で紙パックのジュースを貰った。
僕らは小休憩の後、集まって今日の所は解散となる。
緑茶を飲みながら入る部活を考えていく。
まずは軽音、かけもちもありで幽霊部員でも全然問題ない。
次に放送部、いずれPVみたいなものを作るときに機材が使いたいから……スピーチコンテストもやってないみたいだし割とゆるそう。
あとは必要に応じてやっていこうかな。
「お疲れちゃん」
「ん? 山田」
部活動勧誘も終わったのか、山田が声をかけてきた。
「勧誘お疲れ、早速昨日の曲やってたけど流石に本職ダンス部は凄いな」
「でしょ? あの後チェックして仕上げたんだよね。 アタシの魅力にタジタジっしょ?」
「はいはい」
「じゃ、これ」
山田は僕に向けて一枚チラシを出した。
……ダンス部勧誘のチラシ?
「あんたも来なよ、部活ナイ組でしょ?」
「いや、僕はそっち側じゃなくて……」
「ま、考えといてよ」
山田は僕にチラシを押しつけると、部室の方へ行ってしまった。
そろそろ戻るかと思っていると、軽音部の連中が一本のギターを手になにやら話している。
「このギターそろそろ処分するか」
「だな、ガリもあったけど今日のでちょっとノブ壊しちまったし」
……楽器の一つもあったらいいかもな、と考える。
「あ、もし良かったら譲って貰えません?」
「ああ、これ? いいよ、やる」
「ありがとう」
流石に無料というのもなんなので、なけなしの2000円を渡し、廃棄予定のストラトキャスターを買った。
部活のある日に電子工作部にでも行ってちょっと直すか。




