文化祭7
「それじゃ、2曲目行きます」
MCで息は十分に整えた、勢いに乗っていこう。
手に持ったマイクのスイッチをオフにして、再びマイクスタンドに付けた。
パソコンを操作して無音の2小節が過ぎ、2曲目の打ち込みピアノソロが始まった。
……目を閉じて少し首を下に向ける。
カウントをしっかり取る。
カッと目を見開いて顔を上げ、ギターでカッティングをしっかり刻む。
前の二人の動きに合わせて体とギターを横にスイング。
あー、めっちゃたのしくなってきた。
前に後ろにステップ、お客さんにギターのネックからビームだって放てるんだぜ!
ふと、千家さんがくるっとこちらに向き直り、マイクを持たない左手で人差し指を立て、
指先を唇にちょっと当て、手を開いて下に流し「押さえて」といったジェスチャーをしたと感じた。
出過ぎてる気持ちを抑えて慎重にリズムを刻む。
Be cool, Be coolとリズムに乗せて頭の中で歌う。
――ああ、歌いたい。
そうこうしているうちにソロパートが近づいてきた。
打ち込みを思い出してしっかりソロを弾こう……
不意に千家さんが山田に向かって、奥にいってというようなジェスチャーをした。
え、どういう?
千家さんは私に手を差し伸べるように手を伸ばし、そのまま振り返りつつ客席の方へ向けて……
「私」を放り投げるように手を振った!
引っ張られるように三歩前に出る。
あー、ソロ? なんだっけ?
よく分からないけど我慢していたことをしよう。
――そう、歌。
今は歌を歌いたいんだ。
でも歌ったら最後の一曲が持たない?
あ、そうか。
今手に持っているギターで歌えば良いんじゃないか?
自分が作ったソロパートは弾けるけど、今の気持ちに合ってるんだろうか?
『声に 声に声にならない気持ちを ギターを借りて今 送りだそう』
うん、簡単な言葉で良いんだ。
『今は ボクと キミの この気持ちを ひとつにして 楽しもうよ』
思わず笑っちゃいながら後ろに3歩バックステップ。
莉緒が客席に向けて掌を伸ばした。
「みんな!座ってる場合じゃないよ!」
莉緒の言葉に思わず立ってしまうお客さん、回りを見てつられて立つ人もいる。
なかなかやるじゃん。
Cメロとちょっと変調してのサビ。
お客さんに視線を送ると、目が合ったり、綾乃や莉緒を見ていたりとさまざまで面白い。
多分私たちだけが見えているのだろうか? そうだったらうれしい。
体も気持ちも上がったまま2曲目が終わる。
観客の皆が私たちを見て、待ってくれている。
最後の一曲、私もやっと、全力を出せる。
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「無事に終わったね」
「超盛り上がっててよかった」
「お疲れ様でした」
ダンス部の部室で休憩を入れる僕たち。
私たちはは心地よい疲労感と汗で全身がまみれている。
さっき濡らしてきたばかりのタオルを二人にも配った。
「……千家さん、さっきは暴走しそうになったところを止めてくれてありがとう」
「いえ、手綱を握るのも……の役目ですから」
千家さんはニコッと微笑んだ。
一瞬開いた間はなんだったんだろうか?




