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文化祭1

いよいよ文化祭の当日を迎えた。

天気は数日前から曇りで若干蒸し熱い感じだ。

半袖で上着を着ないと丁度良い程度であるから、条件的には悪くない。


僕は文化祭の売上データ管理のためにパソコンを鞄に入れて学校へと向かった。

いつも通り自転車で片道8キロほどの緩やかに上がっていく通学路を漕いでいく。

河川敷の工事用道路は土日であれば工事車両が通らないため、通りやすい舗装路として利用できるのだ。


自転車を長時間漕いでいると、じんわりと汗をかいてくるが、不快なものではない。

ステージの構成を考えながら一定のリズムでペダルを回す。

何となく不安な感じはしない、お客さんに楽しんで貰えるよう頑張るだけだ。

校門の側に千家さんが居たので手を挙げて挨拶をして、晴青祭(せいしょうさい)と書かれた門をくぐって自転車置き場へと向かった、

僕は教室に荷物を置きに向かう。


教室の2/3は模造紙で仕切られており、広い黒板側には机が2個ずつ向かい合わせに8セット置いてあり、その上にビニール素材で作られた簡素なテーブルクロスが掛けられている。

教卓のあった場所はちょっと恥ずかしい最前列の特別カップル席になっているけど、どんな人が使うのだろうか。

教卓は入り口の側に置かれ、受付・会計として利用される。


基本的に紙のオーダー用紙と領収書で受け、データはバックヤードで|PC《パーソナルコンピューター 》に入力する。

もちろんPCを持ってきているのは僕であるが、メインアカウントはパスワード管理にしてゲストアカウントで入力できるようにしてある。

大事なデータはもちろんバックアップ済み。


バックヤードの入り口は見えないようについたてを少し奥に立てて視界を防ぐ。

カーテンで仕切った場合は、食べ物を引っかけて落としてしまう可能性や異物混入の可能性もあるのでこのようになった。

僕は昨日のうちに使う飲み物の搬入を終えているので、少しの手伝いと文化祭ステージの準備をするだけだ。

クラスメイトへの挨拶と朝のミーティングを終え、僕と山田ははダンス部室へと向かう。

教室の手伝いは30分後にお湯を教室に運ぶ手伝いだけだ。



「山田、今日の調子はどう?」

「心配ご無用、アタシはバッチリだよ」


山田はワクワクしたような表情でニカッと笑い、ピースをした。


「調子が良いみたいでなによりだ」

「そういう田中も調子良さそうじゃん」

「まあね」


僕も腕をグッと曲げて親指を立てた。


「おはようございます」

「うわっ」

「わっ」


突然千家さんが僕と山田の間に割り入って来る。

びっくりさせるのに成功したらしく、千家さんは少しニヤッとしていた。


「おはよう、千家さん」

「おはよー。 綾乃っち(せんけさん)もホームルーム終わったの?」

「はい、私たちのクラスは展示なのでもうやることはないんですよ」

「そっか、うちらも殆ど終わりだね。 アタシも3時くらいに教室に戻るくらいだし」

「僕はここの打ち合わせが終わったら手伝いに行って、3時くらいに在庫管理と、あれば追加発注くらいかな」

「それじゃあ詳しくは中で話しましょう」


僕たち3人がダンス部室に入ると、既にダンス部員が数人集まっていた。


ダンス部の今日の予定は体育館の大ステージで僕たち以外の8人チームのステージがあり、僕たちは軽音楽部の部室でもある視聴覚室で小ライブを行う。

実際のところ現在のダンス部は総勢11名と少ないため、お互いにサポートしていくしかないのである。

大ステージは13時30分のため、13時頃にステージ撤収と準備、僕たちの小ステージは14時に視聴覚室なので大ステージを見ることが出来ない。

基本的に体育館準備は演劇部が撤収した後の床ふきくらいなので素早く終われるだろう。

タイムスケジュールを確認した後、ダンス部長の中村さんが山田に近づいてきた。


「ねえ、今日は謎の女の子来るの?」

「ああ……そうですね。 来ますよ」


山田は目を泳がせながら答える。

あからさまに怪しいじゃないか。

――実は僕がダンスコンテストに出場した時はダンス部内のコンテストの時にメンバーとして登録されていた小城(おぎ)そっくりのギャルメイクではなく、ナチュラルっぽいメイクだったため別人と思われているようなのだ――


「実際うちのコなの? 何年何組? 何部なの?」

「い、いやぁ~。 その辺は秘密にしてほしいって。 地味でそういうことしそうにない子でめ、目立ちたくないんだって」

「うっそ!あんなに目立ってるのに? 目立ちたくなくてセンターやる!? 普通!?」


いやぁ~、その辺に関しては多数決でセンターをやらざるを得ないんですよ、とは流石に言えなかった。

……そもそも秘密にしている理由すらもう分からなくなってきている部分もある。


「ねえ、そこのダンス部見習い君も何か知らない?」

「あ、僕は知らないッス。 そろそろクラスの手伝いなんでいきますねー」

「あ、ちょっと」


我ながら白々しい。

急がなくてはクラスの手伝いに間に合わないのは間違いないので、僕は急いで部室から逃げ去った。

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