休暇
学習基礎力診断テストも無事に終わったのだけども、手応えとしては今まで勉強会をしてきた内容を出したくらいで特に問題はなかった。
二日間の休みの後、文化祭に向けてライブの練習を始めなければならない。
放課後に文化祭に向けて文化部全体で調整した結果、今回僕らが発表で使える時間は15分。
夏休み中の高校生ダンスコンテストを入賞した実績もあってか、ダンス部全体ではなく僕たち三人のメンバーで体育館のステージを使うことが出来るようになった。。
ダンス部の発表枠にプラスして15分使えるのはかなり優遇とも言える。
実績があると、こういうときにプラスに働くものなんだな。
使える時間が15分ということは三曲編成ということになり、ミニライブとしては丁度良いくらいか。
最初の一曲はダンスコンテストで使った曲のフルバージョンで3:50秒。
こちらは練習の時にフルバージョンでも練習していたので完璧に行ける。
次に僕が夏休み中に仕上げておいた曲で3:30秒。
山田は創作ダンスの勉強もしたいと言っていたので、夏休み中ダンスコンテスト予選の前に曲を渡していたのだけど、
そちらも本戦前に振り付けは完成していることは聞いていた。
最後の一曲は今流行のアイドルソングが印象が薄いので、5月に出たばかりで振り付けが結構話題になっている深夜アニメの曲で3:40秒と言ったところか。
そっちの方はオケも揃っているし振り付けは楽、僕は既にライブ版の振りも踊れるようになっているので教えるのも苦じゃない。
三人編成で行けておまけに話題性も十分ある。
時間を足すとトータルで40秒くらいはMCなどに使える計算か、着替えなどは今の体制では無理だけど多少余裕があった方が良い。
文化祭まで3週間弱、この構成でも十分間に合うはずだ。
しかし、こうやってみると今年はアイドルの変革の時期であったんだなとつくづく思う。
2000年ごろに流行った多人数アイドルが一区切りをつけ、国民的になるアイドルの出始め。
確か前の年にオタクが主役のドラマの流行ったこともあり、オタク文化が広く広がり始めた頃だったか。
さらには地元アイドルもこの頃から急速に増えていくはずだ。
なんとなくこの年代まで戻って来たのではあるけども、変革の時期に来られたのは幸運だった。
変革の波に乗って僕も夢を叶えていきたいと強く思う。
僕は、必ず理想のアイドルをプロデュースする。
ふと気づくと、胸ポケットの中で僕の携帯が振動していた。
取り出して携帯を開くと、山田からの着信だった。
「ただいま、留守にしております」
機械音声を真似て喋ってみると、電話口で「はぁ」とため息が聞こえた。
「たーなーかー。 そんなのはどうでもいいから今すぐ地下鉄の駅に来てよ」
「山田、一体――」
内容を聞かないまま電話を切られてしまった。
地下鉄の駅ということは、以前行った鏡の有るダンススタジオにでも行くのだろうか?
折角の休みなのに熱心だな。
自転車で学校の坂を下って5分ほどの所にある地下鉄の駅に着くと、山田と千家さんが二人して立っていた。
やはりダンスの練習なんだろうか?
「お疲れ、三人で集まったって事はダンスの練習でもするの?」
「いや、今日は電車に乗ってナウンモールまで行こうと思ってさ。 K市まで買い物に行くと遠いからね」
「つまり、買い物に付き合えって事なのか。 何か欲しいものでもあるの?」
千家さんはにっこりと笑って頷く。
「はい、実はダンスの練習に使っていたシューズが大分すり減ってしまって買い換えようと思っていました。次はもっと可愛いのが欲しいです」
そっか。
かなり激しく長時間練習していたからな。
4月から4ヶ月も経たないうちにシューズを使い潰すとはなぁ。
……そろそろ僕のも買い時か。
「千家さん、僕のワガママで付き合って貰ってるんだからシューズ代は僕が出すよ。 感謝の気持ちも込めてね」
夏休みのアルバイトでは4万円も稼げなかったので出費は大きいけど、こういう用具を買う為に稼いだのだから惜しくはない。
正直言って芸能関係のアルバイトは時給が他の業界よりもずっと安いから仕方のない部分ではある。
「いえいえ、私の意志でやっていることですのでお気になさらないで下さい」
「そういうわけにはいかないよ」
山田は俺の肩にポンと手を置き、妙に爽やかな笑顔を浮かべる。
「田中、アタシも欲しいなっ!」
「山田は元々趣味でダンスを……」
「欲しいな」
「……わかったよ」
千家さんは何か思いついた風に手を胸の前で合わせる。
「では、私と山田先輩で半分ずつ出して貰うのはどうでしょう」
「ちぇ、それでガマンしてあげるよ」
「それでいいの?」
山田が急に僕の左腕に右腕を絡めてきた。
「さ、そうと決まったら早速行こうか、 スポンサー」
「あのさ、まだうちの生徒居るんだけど」
「じゃあ、私も」
「早く行くよ」
僕は腕を組まれてそのままホームまで引きずられていった。
――――――
僕たちはショッピングモールに着き、スポーツ用品店を探して歩いた。
途中服屋が目に入る度に、山田と千家さんは「あっ可愛い」とか「だめだめ、今日は靴を買いに来たんだから」とか言いながら、千鳥足でフラフラしていた。
これが普通にデートとかだったら間違いなく疲れるんだろうな。
なんやかんやでスポーツ用品店に着き、靴を選び始める。
「山田、靴ってどう選ぶの?」
正直今まで使っていたのは学校の体育館履きだったので、山田に靴の選び方を聞いてみる。
こう言うときこそ経験者のアドバイスがあると助かるんだよね。
「スポーツメーカーのローカットタイプがいいね。 つま先は1センチ位余裕があったほうがいいよ。 絶対履いて確かめてね」
「案外そんなにポイントは無いんだな」
「あとは靴底が溶けて下にくっつく奴はフロアが汚れるから止めた方が良いよ」
「そか」
僕は白い処分品の靴を選んだ。
履きやすいし滑らないし、まあ練習用だからね。
「田中、アタシらも決まったから」
「じゃあ、レジ行こうか。 良いの見つかった?」
「うん、ばっちり」
「可愛いのが見つかりました」
「見たい」と言うとあっさり却下されてしまったけど、その辺は休み明けでもいいか。




