本戦2
僕たちは再びウォーミングアップを終え、文化会館に戻ってきた。
顔を洗い小城にメイクを整えて貰って準備を終える。
後はイメージをするだけだ。
……目を閉じて深呼吸をする
――?
1人の呼吸が乱れている。
静かに良く聞き、何が不安かを聞いてみる。
「千家さん、大丈夫?」
「え?……は、はい。 大丈夫……じゃないです」
「厳しいトレーニングもしたし、無理させちゃったかな?」
「いえ、あの人達に勝てるのかなって思っちゃって……」
僕は後ろから千家さんの両肩に手を乗せた。
「あいつらに『見返す』とは言った。 でも勝つ必要は無いんだよ、勝ち負けはないんだから。」
千家さんはコクリと頷く。
「僕たちに出来ることはやってきたことに自信を持って、楽しんで貰うことだと思うよ」
「……んぱい……ったかい…です」
「え?」
「なんでもないです、そうですよね、私たちも頑張ってきたんですから」
「そうそう」
「ま、あやのっちも頑張ってきたんだから大丈夫だよ」
山田も笑ってそう言った。
薄暗い舞台に僕たちは駆けていく。
場見れるのは舞台のセンターにある一本の印だけ。
でも、それだけあれば十分だ。
体で覚えたポジションは忘れない。
板付きして下を向き、2秒後に曲が流れ出した。
編集した曲はイントロが二小節に縮められているが出だしはミスしない。
アイドルに大切な物――笑顔を全力で浮かべ、顔を上げた。
ビートに乗って体が動き出す。
ダンスコンテストなのでヘッドセットなどは用意されていないけど、全力で気持ちを込めて歌う。
歌詞にある“キミ”に伝えるために視線を客席に飛ばすと、いくらかの反応が返ってくる。
視線を返されたり、ちょっと照れたり、はにかんだり。
アップテンポのビートと心臓の鼓動が一緒になっているみたいだ。
振り付けもほぼ揃っている。
楽しい、とにかく楽しい。
見てくれている人たちの体も揺れてきた。
少しばかりのブレイク、僕は調子に乗って視線と共に「立って」とジェスチャーをしてみると、何人かが釣られて立ってくれた。
僕たちはたったの3人だから、ステージを目一杯使って楽しさを表現していった。
最後のサビが流れ、曲が終わった。
随分と長い時間踊っていたような気がする。
僕たちは今の全力を出し切り、高揚感が持続したままコンテストを終えることが出来た。




