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本戦

ダンスコンテスト当日になった。

空は薄曇りで少し湿気が多くて蒸す感じ、もうウィッグをつけてきているのでちょっと暑い。

今日の会場はK市文化会館のため少し遠い。

集合時間は11:30、文化会館の前だ。

うちの学校で残ったチームは僕たちだけなので、顧問は来ていない。


三人で集まったあと、文化会館の裏にある公園へと向かった。

街の少し外れにあるその公園は土のグラウンドと野球場があり、なかなか大きい。

隣接している賑やかな施設の入り口には死んだ魚のような目をしたおじさん達がたむろしている。

僕たちは駐車場の脇を抜けて、5分ほど歩いた場所にある公園のあずまやにやってきた。

先に居た人たちに「こんにちは」と挨拶をして、空いている席についた。


鞄からプラスチックのパックと水筒を取り出しテーブルの上に置く。

とりあえずお茶を一杯飲み、乾いていた喉を潤す。

手を紙おしぼりで拭きふきしながら山田と千家さんの弁当を見てみる。

山田はコンビニおにぎりと唐揚げ、千家さんは可愛らしいお弁当箱に和食を中心に入っている。

僕はパックからレタスとトマト、ハムの挟まれたサンドイッチを取り出しモシャモシャと食べ始めた。

山田はひょいと僕のタマゴサンドをつまんで持って行った。


「ねえ、田中。 なんか頂戴」

「もう持って行ってるじゃん」

「あ、莉緒(りお)先輩ずるい。 私も欲しいです」


抵抗する暇もなく千家さんによってツナサンドが拉致(アブダクション)されていった。

僕は無言でサンドイッチの入ったパックを自分の方へ寄せた。

これ以上持って行かれてしまっては自分の食べる分が無くなってしまう。


「しょうがない、これあげる」

「私もこれを」


からあげ一個と煮物の鶏肉・にんじんが僕のパックに詰め込まれた。

弁当を全て平らげた後、千家さんがボソッと「間接キスしちゃいましたね」と言ってきたが特に気にしないことにした。

べ、別にアルバイトの時にその位したこともあるから、その位どうって事ないし!

食休みの後、ウォーミングアップしてから会場に向かった。


――――――



13:30、いよいよコンテスト開始の時間になった。

参加チームは24チーム、僕らの出番は17:00予定なのでかなり後の方である。


開催の宣言と共にドラムとベース音がスピーカーから流れ、ステージ上のスクリーンにオープニング映像が流れる。

バスドラムに合わせて心臓が鳴っているように感じた。


オープニングが終わり、司会者が審査員を紹介する。

――審査員の一人に、以前K市に練習しに来たときに見たプロダンサーがいる。

相手も顔を覚えているわけではないだろうし、大した問題でもないのだけど。

司会者が初めの出場者の名前を呼び、ダンスが始まった。



――――――


で他校のダンスを見て楽しんだ。

殆どのチームは15名以上のところがほとんどで、予選の時からも感じたことではあるけど、やはり大人数のダンスは迫力がある。

大人数になれば当然ながら合わせるのは難しくなるけど、合ったときの評価は当然高くなる。

……その点は対策しているので抜かりはない。


時間をチェックして予定表と照らし合わせる。

インタビューなどが長引いたために少し押しているようで、ちょっとまずい。

……千家さんの門限は19:00。

17:30頃に会場を出ないと間に合わない計算なのである。


「うーん」

「どうしたの? 田中」

「千家さんの門限がちょっとまずいかも」

「大丈夫です、先輩となら門限を越えても……うふふ」

「ちょっと、それはまずいでしょ」

「……なーんて、門限越えそうなことはもうお父さんに話してあります。 大丈夫です」

「もうちょっと僕も考えておけば良かったよ。 ありがとう、助かったよ」


ふぅ、と息を吐く。

今回は助けて貰えたけど気をつけないと。


「ウオオオオオ!」


周りから歓声がが上がり、顔を上げた。

ステージを見る――センターの男がブレイクダンスの大技、1990(ナインティー)を出す。

あれは確か……リョウってやつか。

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