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夏期休業

ダンスコンテスト決勝の一週間前、僕達は事前の打ち合わせ通り練習に集中することになり、今日は朝の9:00から学校に集まった。


「よし、いつも通りウォーミングアップからやろうか」

「はい」

「オッケー」


軽く肩と脚を回して流してランニングする。

最近では余裕が出来てきたので三人とも流しているときは歌いながら走るようになった。

たった一月でずいぶんと伸びたな、若さだね。


僕の仕事としてはなんとしてもオーバーワークを避けること。

もはや超回復理論も確実ではない時代から戻って来た(・・・・・)訳であるし、根性論もある程度必要だけど倒れたら意味はないのだ。

少しの間後ろを振り向きながら走って見た感じでは、山田と千家さんにはまだまだ余裕がありそうだ。

千家さんとちょっと目が合ったので、慌てて前に向き直す。

ふー、びっくりした。


そのあと心拍トレーニングとクールダウンまで終わり、三人で輪になるようにしてストレッチを始める。

流石夏真っ盛り、汗がダラダラと流れてくる。


「ところで二人はちゃんと宿題進んでる?」


僕がそう聞くと、千家さんは頷き山田はちょっとギクッとなった。

――非常に分かりやすい。


「ね~え、田中君。 ちょっとお願いがあ――」

「却下」

「まだ何も言ってないし! ちょこっと宿題をさ! 写させてくれない?」

「僕もまだ全部は終わってないから、明日から昼休憩の時にやろう」

「田中の鬼! いけず!」

「何とでも言うがいいさ、その方が山田の身になるだろ」

「うぐぐ……」


うむ、完全論破だな。


「ところで、田中先輩」

「何? 千家さん」

「先ほど、こちらを見られてました?」


千家さんは意味ありげに腕で胸を挟むとギュッと押し縮めた。

両側から押された大きめの胸が形を変えて主張してくる――これはヤバい。


「いいいいや、二人の体調がどうかなって思ってさ」

「でも、残念ですがサポート力しっかりのスポーツブラですので、あまり揺れないんですよね」

「ち、違うって!」


山田がジト目で僕を見ている……僕は無罪だ!


「あっ、そうそう。 これから小休憩だからちょっと飲み物持ってくるね」


僕は慌てて用意しておいたウォータージャグを持ってきて3人分コップに注いだ。


「おっ、気が利くね」

「いただきます」

「……薄目だけど冷えててうまいね」

「生き返ります」

「……本当はもうちょっとぬるい方が体には良いけど、真夏だからね」


僕の用意したスペシャルドリンクはスポーツドリンクとミネラルウォーターで半分に割り、塩ふたつまみほどを加えたものだ。

普通のスポドリでは甘過ぎるので、ちょっと調合を変えてある。


二杯ほど飲み干したところで千家さんが手を軽く挙げた。


「ところで、よろしければ明日から3日ほど、うちで合宿をしませんか」

「合宿か、確かに集中して練習できるし千家さんのうちは神社だから広場も――合宿!?」

「あ、アタシは賛成」

「でも、良いの?」

「はい、女の子二人(・・・・・)位増えても大丈夫だってお父さんが言ってくれて」

「それならいいか……えっ」

「田中先輩はもちろん女装ですよ?」


そう言って千家さんはニタリと笑った。



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