選考
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いよいよダンス部内の選考会が始まる。
放課後16:00からやる予定だったので、じっくりとウォームアップを済ませてきた。
まだ時間があるので、教室でインナーマッスルも温めておこうと、両肘を地面についてフロントブリッジをしながら本を読んでいた。
「あ、いた」
廊下でキュッと音がしたので視線をやると、山田がいた。
携帯を開き、誰かと連絡を取っているようだ。
「よし、田中。 やるよ」
「は? 何を?」
唐突すぎて全く意味が分からない。
僕はサイドブリッジに体勢を変えて山田の様子を伺う。
……なんだかにじり寄ってきているような気がする。
僕は気にせず反対側を向いた。
サイドブリッジは反対側もやらなければバランスが悪いからだ。
!?
脇を持ち上げられ、強制的に床に座らされる。
山田は僕の脇の下から腕を深く差し込み、僕の頭を真っ直ぐ固定。
続けて脚を僕の脚の上に回してガッチリとホールドしてくる。
……ちょっと密着はやめて欲しい、というか胸が滅茶苦茶当たるからマジでやめて!
「確保した、じゃあ小城ちゃんよろしく」
「了解」
小城? そういえば山田の友達にそんなギャルが居たような……
目の前でcamcanから飛び出してきたような白ギャルがピースに親指を足したようなポーズを顔の前で取る。
ちょっとまっ……
「へへへ、大丈夫、痛くしないから」
「やめてくれ、話せばわかる」
小城はピンセットを取り出し、カチカチと音を鳴らしながら近寄ってきた。
な、なにをするつもりだ……!? くっ!……殺せ!
――結局僕は無理矢理眉毛を抜かれ、メイクされてしまった。
あたい、汚されちまったよ……。
でも、柔らかかったな……。
――――――
なんだかんだでカツラまで被されてしまった。
大きなマスクまでさせられている。
もう時間がないので詳しくは聞けないけど、山田が何か仕組んできたらしい。
少し遅れてウォーミングアップしてきた千家さんが合流した。
千家さんはニタァ、という擬音がしそうな笑みを浮かべている。
「うふふ、田中先輩。 いいえ、たなかでなっちゃんと読んだ方が良いでしょうか、よろしくお願いします」
「千家さん……? えっ」
「綾乃っち、今日は田中は小城ってことになってるから」
「そうなのですね、ふふっ」
千家さんの視線に背筋がゾッとした。
二人に手を引かれ部室に入る。
……それまでの騒ぎなど無かったかのように、僕の中でガチンとスイッチが切り替わったような気がした。
山田はニヤリとし、千家さんもなんだか怪しいオーラを漂わせている。
部室には既に他の部員は揃っていて、担任の他に、教育実習で先週から来ている先生もいた。
他の二組の表情も少し緊張しているみたいだ。
「それじゃ、最初は山田の組からいこうか」
「はい」
僕と千家さんも頷く。
ダンス部室の黒板よりに飽きるほど立ったポジショニングにつく。
僕がセンター、一歩下がって左右に山田、千家さんが立っている
先生は僕の作ったDisc2と書かれたCDをプレイヤーにセットしてスイッチを押し込んだ。
―――最初は脚を内股に大きく構え、脱力から入り、腕を大きく回して右腕を伸ばして左腕を曲げる。
前奏を大分カットしているので4小節で指の先からダンスに入った。
人差し指を伸ばし、指先出何かを数回タッチするように跳ねさせる。
左手は指をそろえたまま位置を変えず、左肘を脱力させるようにゆっくり下げ、腕を回していく。
曲と、歌詞と、動きをリンクさせる。
後ろの二人は最初のポーズのまま、まだ動かない。
脚の位置を変え、体と腕を回し―――パァーンというクラップに合わせ三人がユニゾンして動き出した。
――――――
全員が踊り終え、採点者による会議が行われる。
発表は明日。
もうやることはないので山田から貰ったメイク落としで化粧を落とした。
やることはやった、他のチームの踊りも見せて貰った。
その上で負けたつもりはない。
これから大きな努力と共に生み出されてくるダンスが負けるとは思えない。
僕は少し興奮していたので三人にもう一度踊りたいと無理を言い、例の神社でもう一回踊った。




