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SNIE!!  作者: のはら 彩
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一章

今思えば一目惚れだった。 当時、大学に入学して初めて参加したサークルの説明会で、会長と名乗った山内知樹に一瞬で目を奪われたのだ。美男子な訳でもなく、震える程の良い声と言う訳でもない。黒髪で、真面目そうな顔立ちで背はどちらかというと低いたれ目気味の男。一般的にモテるタイプとは違うとは思う。ただ私の好きなタイプだったのだと思う。時折フニャっとした笑顔を見せる彼と、仲良くなりたいと思った。

もちろん、その理由だけでこの国際交流サークルへの入部を決めた訳ではない。私は面倒くさがりであり、大学入学してすぐの忙しい時期にこれ以上サークルの説明会に行くのが億劫だったのだ。それに、入学して初めに仲良くなった、そしてそれからなんとなく一緒に行動している友達の高畠杏がこのサークルに行こうと頑なだったからだ。私は非常に周りに流される事が得意であるので、その時も周りと雰囲気に流され入部を決定するに至った。

入部してすぐに、新入生歓迎会という名目の飲み会が行われる。私はまだ未成年であるが故に、お酒も飲んだ事はない(というか法律で禁止されている訳で)。参加しても楽しめるのか疑問であったのだが、

「どうせ予定も無いし行こうよ。イケメンもいるかも。」

と楽しげな杏に促され、返信メールに「1年 原綾香 参加」とだけ打ち込み送信した。

新入生歓迎会当日は、まぁ、何となくは楽しむ事が出来た。そもそも大人数での集まりが苦手な私は、新宿駅に集まった30人の大学生集団に圧倒されたのだが、社交的な杏と常に一緒に行動した事でなんとか周りと交流する事が出来たという感じだ。その日1番楽しかったのは、帰り道での杏との先輩格付けであった。

「ねぇ、かっこいいと思った人いる?」

少しだけ薄いカシオレというカクテルを飲んだせいか、いつもよりヘラヘラしている杏が聞いてきた。

「いなかったね、大学なんてこんなもんだ」

感じたことをそのまま答える。オブラートに包んで言ったとしても、イケメンというイケメンの影もないサークルであった。

「だよねぇ!もう、あまりにイケメンがいないから、笑いそうになっちゃった!」

そう言って1人で爆笑する杏と一緒に電車に乗り込む。この日初めて知った事だが、杏とは帰る方向が途中まで一緒なのだ。

「あ、でも。」

車内なので、声のトーンは必然的に下がる。

「あの人はちょっと良かった、あの、会長さん。」

背が低いけどね、と笑う杏の身長は175センチメートルのモデル体型なので、大抵の男は背が低く見えるようだ。会長、山内知樹のことが良い、と感じている事に共感出来て嬉しかった私は、少しはしゃいだ。

「やっぱり!私もそう思った!この前の説明会の時から!」

その様子を見て、杏はふふっと笑った。

「だと思ってた。」

杏にはそういうところがあった。観察力が鋭く、色々なことに勘付きやすいのだ。

山内知樹は飲み会中、先輩が集まった席で談笑していた。酒はあまり飲んでいないようだった。きっと、私にはよく分からないけど会長としての色んな仕事があるのだろう。そして時折、山内知樹と同じ学年、つまり3年生の先輩である碓氷葉子の所へ向かっては、耳元で何やらコソコソ話をしているのを見かけた。碓氷葉子は背が低く顔は綺麗系で、説明会の時には会長のサポートをテキパキこなす、所謂副会長の立場だった。

山内知樹と碓氷葉子は恋人同士なんだろうな、と思った。良いか悪いかはさておき、杏と同じく私も色々なことに勘付きやすいタイプの人間なのだった。

「会長と、葉子さん、付き合ってる感じだね。」

私がさも残念そうに呟くと、杏は何言ってんの?とでも言いたげな顔でこちらを見る。

「そうね、私もそう思った。お似合いじゃない?なんで残念そうなの、綾、彼氏いるくせに。」

そう、私には彼氏という立場の男がいる。でもそれとこれとは別なのだ。彼氏がいたら他の男にときめいてはいけないと言うルールは無いはずだ。世間一般的には嫌な顔をされるが、決まりはない。だが、これ以上この話を深堀りすると、彼氏いない歴=年齢の杏が不機嫌になりそうなので、

「まあ、そうなんだけどね。」

とあたかも惚気であったかの様な雰囲気を出してこの会話をストップさせる事にした。


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