リャナ・ベルソン。〜後編〜
そして、そこには。
一枚の紙があった。
くしゃくしゃになったその紙は、ゴミとして認識するのが正しい判断なのだろうがゴミ一つ落ちていないこの道によりによって紙が落ちているだろうか…
リャナは、立ち止まり周りを見渡す、そして人の気配がない事を確認し、紙にそっと手を伸ばす。
その時、紙の周りだけ他の道と比べると黒い事に気づく。
これは….影!!!!
そう思った時にはもう遅く頭上にいたであろう何かに強い力で取り押さえられ、薬を飲まされ意識はどこか遠くへ飛んでいってしまった。
ざわめく人の声で目覚める。
いや、複数だから、人々か。
それは、誰かに罵声を浴びせている声だった。
目を開けようとするが、さっきの衝撃からか腫れて開かない。
助けを呼ぼうと思い声帯を開く。
その時。
冷ややかで鋭い何かが首に当たる。
そして、ドス黒い声でこう言われた。
『ウゴクナ。シャベルナ。コロス。コロス。』
声で察す。
これは魔物だと。
だが、周りの声は人の声。
ここは、どこなんだ。
不安で仕方ない。
だが、チャンスを伺い続ける。
泣いている暇はない。
周りの声がだんだん大きくなる。
そして、それが何を言っているかようやく分かる。
値段だ。
それも、次々と額は大きくなる。
だが、貴族の家庭であるリャナにはそんな値段は対したことなく、下位民族ということだけは理解出来る。
そして、その時。
会場を裂く様な声が響く。
だが、その声は反響して耳に届いたのはぐにゃぐにゃの音。
それも、善意で溢れた。
だが、聞き取れない。
矛盾に腹を立たせる。
ただ、周りの反応を聞く限りとても大きい数のようだ。
そして、その声の持ち主が歩いてくる。
だが、リャナに近づいた為か、先程の魔物と思われる二足歩行の何かが走っていく、
その刹那。
切り刻む不快な音と血の不快な臭い。
ただ、その無機質な音に安心する自分がいた。
そして、まだ足音は此方へ近づいてくる。
血の臭い的にやられたのは魔物の方だと察す。
そして、縛られていた手足の縄が解かれ、少しだけ治った目を開ける。
そこには、明らかに貧乏そうなだけど、瞳は有志に溢れる彼がいた。
そして、その彼はリャナを抱え走り出す。
風を切る感触が頬へと伝わる。
生きている嬉しさに涙を零しながら、
彼の言う我が家へと帰還する…
家で彼に問うなぜ私を助けたのかと。
彼は答える。
「強そうだったから。
こんな状況でも泣かないお前が。」
そして、彼の勇者になってくれというお願いをすんなり聞き入れ。
私は。
正義の一派の一員となった。