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淵の勇者。

  ボロボロになった心身を引きずって歩く。

勝利を祝うより先に剥き出した痛みは、ココロを締め付ける。

まだ、何処かで魔王が笑っているような気がする。

まだ、完全に息の根を止めていない魔物がいる気がする。

だが、もうここに来ることはないだろう。

感情の表せなくなった顔で辺りを見渡した。

(みんな、すまない。)


 そして、勇者は天界で会った親切な天使からモラった羽根を使って、王国へ飛んだ。

あれだけ苦労して歩いた道を風を切るように飛ぶ。

だが、何も思い出せない。

みんなと過ごした思い出も。

きっと、思い出したくないだけ。

そして、あっという間に王国に着いた。


王国の門をくぐるのは辛かった。

最初に出迎えたのは王だった。

王様「おお、勇者様。お戻りになられましたか!」

勇者「………」

王様「勇者様…お仲間は…?」

勇者「……死んだ。」

王様「そうですか…。」

王様の顔が歪んだ。

勇者「………」

王様「勇者様、何か欲しいものはありませんか?」

勇者「何か喰わせろ。」

王様「は…はい。

おい、皆の者!!

勇者様が、ご帰還なさったぞ!!

美味い飯を用意しろ!」

王様は、そのときなにか本能的は恐怖を感じた。

それは、底知れないナニカから生まれた威圧。


〜宴会〜

黙々と(むさぼ)る勇者。

姫「勇者様ご飯は逃げませんよ?うふふ。」

勇者「美味い飯しか食ってないお前に何がわかる?」

姫は、一瞬顔を強張らせるとすました顔をして貴族の方へ歩いて行った。

勇者はそれでも食べ続ける。

その時、マイクのハウリングと共に明るい声が会場に響く。

王の使い「では、これより帰還した勇者様のスピーチが始まります!」

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