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第9話 : 名前のない場所

第9話 : 名前のない場所


 金曜の夕方、最寄り駅のホームに立っている。


 梅雨の湿気が肌にまとわりつく。六月の終わり。空は低くて灰色で、今にも降り出しそうな重さを抱えている。ホームのベンチに座っている制服姿の高校生たちが、スマホを見ながら笑い合っている。部活帰りだろう。ジャージの上にブレザーを羽織って、イヤホンのコードを分け合って、同じ音楽を聴いている。

 わたしはその横を通り過ぎて、ホームの端に立った。パーカーにジーンズ。リュック。制服じゃない。平日なのに制服を着ていないわたしは、このホームでは少数派だ。でも誰も気にしていない。駅の人混みでは、制服を着ていない高校生は目立たない。


 電車が来る。埼京線。新宿行き。乗り込んで、ドアの横に立つ。車窓を流れる住宅街を見ながら、頭の中でルートを辿る。新宿駅東口、一番街のアーチ、東宝ビルの横、歌舞伎町タワーの裏、ローソンの前。もう三回歩いた道だ。四回目になる今日は、地図を見る必要がない。

 金曜日が来るのが待ち遠しい。それは学校に通っていた頃と同じ感覚だった。月曜から木曜まで部屋で天井を見て、金曜の夕方に家を出る。母さんには「友達のところ」と言う。嘘は回数を重ねるたびに軽くなる。最初は喉に引っかかったのに、今はするりと出てくる。慣れるというのは、やっぱり怖いことだ。



 ローソンの前。午後九時過ぎ。


 湿った夜の空気が重い。アスファルトから立ち上る熱気と、コンビニのドアが開くたびに漏れてくる冷房の風が交互にぶつかってくる。梅雨の歌舞伎町は匂いが濃い。排水溝の湿った匂い、焼き鳥の煙、どこかのビルの換気扇から出てくる油の匂い。全部が湿度に吸着して、鼻の奥に溜まる。


「なぎー、遅い遅い」


 レンが手を振っている。もう「遅い」と言われることが定番になりつつある。わたしはいつも少し遅れる。家を出る前に鏡の前で迷うからだ。何を迷っているのか自分でもよくわからないけど。

 ルカは壁にもたれて缶ジュースを飲んでいる。カケルはいつもの定位置、少し離れた場所でイヤホンをしている。先週と同じ光景。でも、わたしがここにいることが「当たり前」になりつつある光景。


「座りな」


 ルカの隣に座る。アスファルトの硬さは変わらない。でも、座り方のコツを覚えた。リュックを背中に当てると少し楽になる。こういう小さなことを身体が学んでいく。三回目、四回目。繰り返すうちに、歌舞伎町での過ごし方が身体に染みていく。


 今日はいつもより人が多かった。ルカたちの他に、ローソンの前に別の集団がいる。五、六人。見たことのある顔と、見たことのない顔が混ざっている。ルカたちとは少し距離を置いて座っている。


「なぎ、今日はちょっと教えることがある」


 レンが隣に座って、真面目な顔をした。レンが真面目な顔をするのは珍しい。いつもはへらへら笑っているのに。


「何?」


「ルール」


「ルール?」


「そ。ここのルール。おれっちが来たばっかの頃、ルカ姉に教えてもらったやつ。なぎはもう三回目だし、そろそろ知っとかないとまずいかなって」


 ルカが横から口を挟んだ。


「あたしが言おうと思ってたのに、レンが先に言った」


「だって姉さん説教くさくなるじゃん。おれのほうがフランクに教えれるっしょ」


 ルカが「説教くさくないし」と言ったけど、レンに任せることにしたらしい。缶ジュースを飲みながら黙った。


 レンが指を立てた。人差し指。


「まず一つ目。本名は教えない」


「教えてないよ。なぎ、で通してる」


「うん、それでいい。ここではハンドルネームが基本。なぎはなぎ。本名を知ってるのはルカ姉とおれとカケルだけ。他の子には教えないほうがいい」


 本名を教えない。それはプライバシーの問題だけではないとわかっている。ここでは「なぎ」でいられる。瀬川凪沙ではなく、なぎ。学校でいじめられた凪沙でも、不登校の凪沙でもない。名前を変えるだけで、過去が切り離される。別の自分になれる装置。


「二つ目。SNSで顔を出さない」


 レンがスマホの画面を見せた。自分のアカウント。アイコンはイラストで、顔写真は一枚もない。


「位置情報もオフ。写真の位置データも消す。これ絶対」


 ルカが横から付け加えた。


「顔は出すな。出したら取り消せない。ネットに上がった写真は消えないから」


 ルカの声が硬かった。経験則だとわかる。誰かが、あるいはルカ自身が、痛い目を見たことがあるのだろう。わたしは聞かなかった。聞かなくてもわかることがある。


「三つ目」


 レンが三本指を立てた。声のトーンが少し下がった。


「危ない大人の見分け方」


 空気が変わった。レンの目がまっすぐわたしを見ている。


「おごってくれるって言う大人は、基本アウト。ご飯おごるよとか、タクシー乗せてあげるよとか。見返りなしで十代のガキに金使う大人はいない」


 わたしは黙って聞いた。


「"話を聞くよ" って近づいてくるやつもやばい。記者とか、カメラマンとか、"ドキュメンタリー撮ってる" とか言うやつ。中にはまともな人もいるかもしれないけど、こっちから見分ける方法がないから、全部警戒していい」


 レンの口調は軽い。深刻にならないように、意図的に声のトーンを保っている。でもその軽さの裏に、重いものがあることをわたしは感じていた。レンがなぜこんなに「世慣れ」ているのか。それはレン自身が過去にトラブルに遭ったからだろう。聞かない。聞かなくていい。


「写真撮っていい? って聞いてくるやつも注意。何に使うかわからないから。あと、LINEのIDを聞いてくる大人もダメ。SNSのアカウントも教えちゃダメ」


「わかった」


「ま、基本ビビりすぎなくていいけど。初心者はカモにされやすいからね。おれっちも最初やられかけたし」


 さらっと言った。「やられかけた」。その先を、レンは語らなかった。わたしも聞かなかった。ここでは言葉の空白を埋めないことが礼儀だ。


「四つ目、最後。警察」


 レンが真面目な顔のまま続けた。


「補導されたくなかったら、深夜に路上で固まらない。移動し続ける。あと制服は着ない。制服着てたら即補導だから。なぎはもともと私服だから大丈夫だけど」


「補導されたらどうなるの」


「親に連絡。学校に連絡。いろいろ面倒」


 ルカが口を開いた。


「あたしはもう19だから補導はされないけど、あんたたちは未成年だから。気をつけな」


 ルカの声に、姉御の響きがある。この人はいつもこうやって、自分より年下の子たちを守ろうとしている。19歳。大人と子どもの境界線上にいて、でも大人のやり方を知らない人。


「ルール、覚えた?」


 レンが笑った。いつもの軽い笑い方。


「本名教えない、顔出さない、大人を警戒する、固まらない。四つ」


「よし。なぎ、合格」


 レンが親指を立てた。わたしは少し笑った。テストに受かった気分だ。テスト。学校では赤点すれすれだった数学のテストが頭をよぎったけど、すぐに消えた。ここでのテストは数学より実用的で、間違えたときの代償がずっと大きい。


 深夜を過ぎて、四人で歌舞伎町を歩いた。ルカを先頭に、レンが並んで、カケルとわたしが後ろ。いつもの隊列。


 歌舞伎町タワーの周辺を通ったとき、別のグループとすれ違った。五人くらいの集団。メンバーの顔つきがルカたちとは少し違う。年齢が上に見える子が多い。すれ違いざま、ルカが軽く顎を上げた。相手のリーダーらしい男の子も同じように顎を上げた。言葉は交わさない。それだけで挨拶が成立している。


「あれ、誰?」


 わたしがレンに聞くと、レンが小声で答えた。


「別のグループ。あっちはあっち、こっちはこっち。仲悪くはないけど、めっちゃ仲良くもない。お互い干渉しないって感じ」


 さらに歩くと、また別の集団がいた。こちらは女の子が多い。路地の奥でスマホの光に照らされながら、地面に座っている。ルカはそっちには顔を向けなかった。


「あっちは?」


「あっちはちょっと厄介。絡まないほうがいい」


 レンの声が低くなった。それ以上は聞かなかった。


 トー横は一枚岩じゃないのだとわかった。一つの大きなグループがあるのではなく、小さなグループがいくつも存在していて、それぞれが緩やかな境界線を持っている。友好的な関係もあれば、対立もあれば、完全に無関心な関係もある。

 学校の教室みたいだと思った。クラスの中にもグループがあって、仲良しのグループ同士はくっつくし、対立するグループは避け合う。教室でも歌舞伎町でも、人間関係の構造は同じなのかもしれない。

 でも、一つだけ違うことがあった。教室では自分の「グループ」を選べなかった。席順やクラス替えで自動的に決まって、合わなくても逃げられない。ここでは「選べる」気がした。ルカのグループにいるのは、わたしがそうしたいから。誰かに強制されたわけじゃない。


 ルカが足を止めた。コンビニの前。


「ここで休憩」


 四人で座る。レンが自販機でコーヒーを二つ買って、一つをわたしに渡した。温かい缶コーヒー。六月の夜に温かい缶コーヒーを握ると、手のひらが汗ばむ。でもその温度が、悪くなかった。


 歩いてきた道を振り返った。歌舞伎町タワーのシルエットが、ネオンの向こうに見えている。わたしたちが「トー横」と呼んでいるのは、あのタワーの周辺だ。東宝ビルの横。シネシティ広場のあたり。でも実際には、もうそこに固定された場所はない。フェンスがあり、警備員がいる。子どもたちはばらばらに散って、路地やコンビニの前やネカフェに移動しながら過ごしている。


「ねえ」


 わたしは缶コーヒーを握ったまま言った。


「ここって、本当の名前がないよね」


 レンが首を傾げた。


「え、トー横でしょ」


「トー横って、東宝ビルの横って意味じゃん。でも今はもうそこにいないし。フェンスがあるし」


 ルカがこちらを見た。缶ジュースを口から離して。


「トー横って呼んでるけど、実際にはどこにもないんだよ。固定された場所がない。ローソンの前にいたり、ビルの隙間にいたり、ネカフェに移動したり。毎回場所が変わるのに、全部まとめて "トー横" って呼んでる」


 レンが「まあ、そうだけど」と言った。


「ここは "名前のない場所" なんだよ。東宝ビルの横にもう誰もいないのに、"トー横" って名前だけが残ってる。場所がないのに名前がある。不思議だと思わない?」


 沈黙。レンがわたしの顔をじっと見ている。カケルが片耳のイヤホンをずらした。


 ルカが笑った。


「名前のない場所、か。いいね、それ」


「何が?」


「なぎの言い方。名前のない場所。うちらもそうじゃん。ここではみんなハンドルネームで、本当の名前は隠してる。名前のない場所に、名前のない子どもたちがいる」


 わたしの言葉を、ルカが広げてくれた。わたしが投げた小石が、水面に落ちて波紋を広げていくような感覚。


 レンが「おー」と声を上げた。


「なんかそれ、歌詞っぽい。なぎ、作詞家になれるんじゃない?」


「そんなんじゃないって」


「いやマジで。おれ、こういうの好きだよ。言葉にするのうまい」


 恥ずかしかった。でも嬉しかった。自分の中にある考えを言葉にして、それを誰かが「いい」と言ってくれる。学校ではなかった経験だ。作文を書いても、先生は赤ペンで誤字を直すだけだった。わたしの言葉を「いい」と言った人は、誰もいなかった。


 カケルがイヤホンを完全に外して、わたしを見た。


「名前のない場所に、名前のない子。おれ、それ曲にできるかも」


 カケルが自分から話しかけてきた。それだけで驚きだった。普段は「ん」と「別に」しか言わない子が、二文以上の台詞を自発的に言った。わたしの言葉が、カケルの何かに触れたらしい。


「曲って、あの電子音の?」


「うん。歌詞がないから。言葉があると変わる」


 カケルの目が光っていた。音楽の話をするときのカケルは別人だ。壁にもたれて世界を遮断している子が、突然、世界のほうに手を伸ばす。


「書いてみてよ、なぎ。おれが曲つけるから」


 わたしは何も答えられなかった。カケルの提案が嬉しくて、でも怖かった。自分の言葉に価値があるかもしれないという可能性は、希望でもあり、恐怖でもある。価値があると思ったものが否定されたら、もう立ち直れない気がする。中学のLINEで、わたしの存在そのものが笑われた記憶がまだ消えていない。


「考える」


 そう答えるのが精一杯だった。カケルは「ん」と言って、またイヤホンを戻した。でも、両耳ではなく片耳だけ。会話に参加し続ける意思がある。



 午前二時。レンとミキがネカフェに行った。カケルもコンビニの中に入って戻ってこない。トイレかもしれないし、温かい飲み物を買っているのかもしれない。


 ルカとわたしが、二人になった。


 コンビニの灯りの下、アスファルトに座っている。湿った夜風が首筋を撫でる。客引きの声がくぐもって聞こえる。遠くでカラオケの低音が鳴っている。


「なぎ」


 ルカが横を向いた。


「あんた、言葉にするの上手いよ。さっきの "名前のない場所" ってやつ」


「そう? 普通のこと言っただけだけど」


「普通のことを "言葉にできる" のが上手いってことでしょ。おれたちはみんなここにいて、同じもの見てるのに、誰も "名前のない場所" とは言えなかった。あんたが言うまで」


 ルカの目がまっすぐだった。お世辞じゃない。ルカはお世辞を言わない人だ。いいと思ったら「いい」、ダメだと思ったら「ダメ」。その直球さが、信頼できる。


「メモ帳、書いてるんでしょ。レンがちらっと言ってた」


「レンに言ったの」


「レンに聞いたわけじゃないよ。レンが勝手にぽろっと言ったの。"なぎってメモ帳にいろいろ書いてるらしい" って」


 わたしは少し困った。メモ帳は誰にも見せるつもりがなかった。自分のための記録。息をしている証拠。他人に見られることを想定して書いていない。


「見せてとは言わない。でも、あんたの言葉はいい。自信持ちな」


 ルカが缶ジュースを飲み干して、空き缶を横に置いた。それ以上は何も言わなかった。ルカはいつもそうだ。必要なことだけ言って、余計なことは言わない。言葉を無駄にしない人。だからルカの「いい」には重みがある。


 自信。自信なんてものは、わたしの辞書からとっくに消えていた。自信を持つためには、まず自分に価値があると思わなきゃいけない。透明な人間に、価値は。

 でも、ルカが「いい」と言った。レンが「すごい」と言った。カケルが「曲にできる」と言った。三人が、わたしの言葉に反応してくれた。それは、わたしという人間に反応してくれたということでもある。


 メモ帳を開いた。書きたいことがあった。ルカの前で書くのは初めてだけど、今なら書ける気がした。


 「名前のない場所に、名前のない子たちがいる。わたしもその一人になった。でも、名前がないからこそ、ここでは自分で名前を選べる」


 書いた。画面を閉じた。ルカは覗かなかった。覗かないのがルカだ。


 始発の時刻が近づいていた。空の端が白み始めている。


 カケルとレンが戻ってきた。四人でコンビニのおにぎりを食べた。わたしは昆布。ルカはツナマヨ。レンは鮭。カケルは明太子。いつの間にか、全員の好みが固定されつつある。わたしの好きなおにぎりの具を知っている人が、この世界に三人もいる。


 始発の時間になった。わたしは立ち上がる。


「帰る」


「気をつけてね」


 レンが手を振る。カケルが目だけ向ける。ルカが片手を上げる。いつもの別れ方。三回目で、もうパターンができている。


 新宿駅に向かって歩き始めた。梅雨の朝は曇りで、空が灰色のまま明るくなっていく。朝日は見えない。ゴミ収集車の音。ホースの水音。洗い流されていく歌舞伎町。


 駅に向かいながら、スマホを見た。LINEの通知。母さんからのメッセージ。夜中の一時に送られていた。


 「まだ帰ってこないの?」


 既読にしていなかった。今、既読をつける。何て返そう。迷った末に、何も返さずに画面を閉じた。


 駅に着いた。改札を通って、ホームに降りる。始発を待つ。スマホのメモ帳をスクロールする。「トー横日記」のメモが増えている。先週の四つに加えて、今日書いたもの。


 「名前のない場所に、名前のない子たちがいる。わたしもその一人になった。でも、名前がないからこそ、ここでは自分で名前を選べる」


 読み返した。悪くない、と思った。自分の書いた文章を「悪くない」と思えたのは初めてかもしれない。ルカが「いい」と言ったから? それもある。でも、読み返して自分でも「そうだ、こういうことが言いたかったんだ」と思えたから。言葉が、自分の輪郭をなぞってくれる感覚。


 電車が来た。乗り込んで、窓際の席に座った。


 車窓に映る自分の顔を見ながら、考えていた。あの場所では「名前のない場所」と言えた。ここにはこういう構造があって、こういう意味があるんだと、自分の言葉で語れた。レンに笑われず、ルカに認められ、カケルに曲にしたいと言われた。


 でも、家に帰ったら。母さんに何て言う。「友達のところにいた」。また嘘をつく。母さんの顔を見たら、きっと「ごめん」と言ってしまう。

 この家では「ごめん」としか言えない。「名前のない場所」とは言えない。「コンクリートの隙間から空が見えた」とも言えない。母さんに通じる言葉が、わたしには足りない。あの場所で溢れる言葉が、家では枯れてしまう。


 同じわたしなのに。なぎと凪沙は同じ人間なのに。


 電車が揺れる。住宅街の屋根が流れていく。灰色の空。雨が降り始めた。車窓に小さな水滴がつく。水滴が一つ、二つ、三つ。やがて筋になって横に流れていく。速度が上がると、水の筋が斜めになる。

 梅雨だ。六月の終わり。わたしが歌舞伎町に来てからもう三週間以上が経った。天井の罅は三本のまま。わたしもまだ割れていない。でも、何かが確実に変わり始めている。


 最寄り駅が近づいてきた。立ち上がる。リュックの紐を肩にかけ直す。


 家に帰ったら、母さんが起きているだろうか。先週は寝ていた。今週はわからない。LINEのメッセージを既読にしてしまったから、起きているかもしれない。起きていたら、「遅かったね」と言われるだろう。わたしは「ごめん」と言うだろう。母さんの顔が曇るだろう。わたしは自室に逃げるだろう。

 いつものパターン。繰り返し。でも来週もまた、金曜日が来る。


 電車が止まった。ドアが開く。梅雨の湿った空気が車内に流れ込んでくる。


 家に帰る。あの場所では「名前のない場所」と言えるわたしが、この家では「ごめん」としか言えない。その落差が、毎週少しずつ大きくなっている気がした。

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