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不死の彼女は三度目に俺を殺すーPQ: Rebirth Protocolー  作者: 深蒼 理斗


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第03話:WHERE THERE'S SMOKE, THERE'S FIRE

 警報が鳴ったのは、深夜だった。

 昴は飛び起きた。心臓が、まだ夢の中で戦っている。

 《全搭乗者、緊急発進。敵性反応、基地外周に接近中》

 通信が、容赦なく頭に響く。

『スバル、起きて』

 PQの声。いつもより、少しだけ硬い。

「……分かってる」

 昴は服を掴み、廊下へ飛び出した。

 隣の部屋から、日和が出てきた。寝間着のまま、顔が青い。

「お兄ちゃん――」

「大丈夫。すぐ戻る」

 嘘だ。大丈夫かどうか、分からない。

 それでも、昴は走った。

 格納庫へ向かう廊下で、他の兵士たちとすれ違う。誰も昴を見ない。それぞれが、自分の持ち場へ急いでいる。

 VEGAが待っていた。

 ハッチが開き、昴を迎え入れる。

『リンク確立。状況を共有する』

 PQの声と同時に、視界が変わった。

 基地外周。熱源反応、十二。全て、Aion側の機体だ。

「……多い」

『うん。でも、全部が実戦仕様じゃない。偵察型が混ざってる』

「それって――」

『陽動の可能性がある。本命は、別の場所かもしれない』

 昴は、操縦桿を握った。

 手が、まだ震えている。

 《VEGA、発進せよ》

 命令が来た。

 昴は、深呼吸した。

 吸って、吐いて。

 VEGAが、格納庫を飛び出した。

 ――夜の基地は、明るかった。

 照明塔が全て点灯し、防衛ラインのレーザーが赤く光っている。空には、味方機が三機。敵は、まだ射程外。

『スバル、左前方。GA-12《ARGONAUTアルゴノート》、二機』

 PQが、味方を示した。

 Geneaの量産機。VEGAとは違う、角ばった機体。

 その一機が、通信を送ってきた。

 《VEGA、聞こえるか》

 男の声。若い。落ち着いている。

「……はい、聞こえます」

 《初めまして。俺は、朝霧亘一。呼称はSHIFTシフト

 昴の手が、止まった。

「朝霧……?」

 《ああ。朔は、俺の弟だ》

 昴は、息を呑んだ。

 朔の、兄。

 《黒瀬司令から聞いたよ。最後まで、朔を助けようとしてくれたんだってね》

 亘一の声が、少しだけ震えた。

 《……ありがとう》

「いえ、俺……俺は、何も――」

 《いいんだ。君が助けようとしてくれた。それだけで、十分だ》

 亘一の声が、優しかった。

 《それに、朔が君を選んだ。VEGAを、君に託した。それは、朔の意思だ》

 昴は、何も言えなかった。

 胸が、熱くなった。

「……朝霧さん、俺――」

 《亘一でいい。同い年だろ? 黒瀬司令が言ってた》

「え、でも――」

 《改まるのは、後にしよう。今は、戦わないと》

 亘一の声が、引き締まった。

 《敵、接近。スバル、俺の後ろについて来い》

「了解」

 VEGAが、動き出した。

 亘一の機体――SHIFT――が、前を走る。

 敵が、見えてきた。

 Aion側の無人機。AS-17《AETERNUSアエテルヌス》の偵察型。

『スバル、偵察型は装甲が薄い。でも、速い』

 PQが、注意を促した。

『亘一が引きつける。君は、隙を突いて』

「分かった」

 亘一の機体が、加速した。

 敵機が、反応する。

 そして――亘一が、動いた。

 速い。

 昴の目が、追いつかない。

 亘一の機体が、敵の間を縫うように滑り、一瞬で背後を取る。

 光が走った。

 敵機の翼が、砕けた。

 《次、右!》

 亘一の指示が飛ぶ。

 昴は、反射的に右へ移動した。

 敵機が、昴の元いた場所を通過する。

『今!』

 PQの声。

 昴は、引き金を引いた――引きたいと思った。

 光が走り、敵機が墜ちた。

 《いいぞ、スバル!》

 亘一の声が、明るい。

 でも、昴の心臓は、まだ落ち着かない。

 ――その時。

 警報が、また鳴った。

 《後方、新たな熱源反応! 実戦仕様、四機!》

『スバル、これが本命だ』

 PQの声が、緊張した。

 昴は、振り返った。

 基地の反対側から、四機の敵機が接近している。

 装甲が厚い。武装が多い。

 陽動じゃない。本気だ。

 《全機、防衛ラインへ戻れ!》

 命令が飛ぶ。

 亘一の機体が、反転した。

 《スバル、ついて来い!》

 昴は、VEGAを走らせた。

 でも、敵のほうが速い。

 砲撃が来た。

『伏せて!』

 PQの声と同時に、VEGAが姿勢を落とした。

 砲撃が、頭上を通過する。

 《スバル、無事か!》

「……無事です!」

 《よし。俺が引きつける。君は、基地の人間を避難させて》

「え、でも――」

 《お願いだ。君にしかできない》

 亘一の声が、真剣だった。

 昴は、迷った。

 でも、PQが言った。

『スバル、亘一は正しい。君は、人を守れる』

「……分かった」

 昴は、基地へ向かった。

 外周の居住区画で、民間職員が逃げ惑っている。

 昴は、共通帯域を開いた。

「走るな! 押すな! ――立てる人は立て、赤い灯へ!」

 声が枯れた。でも、叫び続けた。

『スバル、深呼吸。君は今、守れてる』

 PQの声が、支えてくれた。

 昴は、避難経路を確保し続けた。

 VEGAの巨体で、壁を作る。砲撃を、盾で受ける。

 ――そして、気づいた。

 誰かが、聞いている。

 共通帯域の向こうで、呼吸が混ざっている。

『……スバル、誰かが傍受してる』

「……Aion側?」

『分からない。でも、君の声を聞いてる』

 昴は、背筋が冷えた。

 でも、今は考えている暇がない。

 避難誘導を続けた。

 そして、全員が赤い灯の中へ消えた。

 《スバル、よくやった!》

 亘一の声。

 昴は、前線へ戻ろうとした。

 でも――

 爆発が、背後で起きた。

 昴は、振り返った。

 基地の一角が、燃えている。

「……嘘だろ」

『スバル、落ち着いて。火災は、制御されてる』

「でも、あそこ――」

 居住区画だ。

 日和が、いる。

「日和!」

 《スバル、待て!》

 亘一の声が、止めようとした。

 でも、昴は聞かなかった。

 VEGAを、居住区画へ走らせた。

 炎が見える。煙が上がる。

『スバル、日和は無事だ。医療班の避難は、完了してる』

「……本当か?」

『本当だ。僕が確認した』

 PQの声が、断言した。

 昴は、その場で止まった。

 膝から、力が抜けた。

「……よかった」

 その時、通信が入った。

 《スバル、戻って来い。敵、撤退した》

 亘一の声。

 昴は、ゆっくりとVEGAを動かした。

 戦闘は、終わった。

 でも、基地は燃えている。

 煙が、夜空へ立ち上っていた。

 ――火のないところに、煙は立たない。

 昴は、その意味を理解した。

 戦争は、終わらない。

 煙が消えても、火種は残る。

 そして、誰かが見ている。

 昴たちの戦いを。

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