悪夢
トーセン王国の辺境に、小さな村があった。
自給自足の生活をして、村人たちは争いなどせず、仲良く暮らしていた。
その村にただの村娘とは思えないほど、一度見たら忘れられない美貌を持つ女性がいた。
名をルセランテと言う。
ルセランテは、村の人々の祝福を受けて16歳で幼馴染の男性と結婚し、17歳で娘を出産した。
忙しいが幸せな日々を送っていた彼女たちの日常は、ある日突然壊されてしまった。
ある日のこと。
辺境へ視察に訪れた国王が、お忍びで小さな村を通りかかった時、天上の美しさを持つルセランテを見つけてしまった。
国王は一目で彼女を気に入り、手に入れたいと考えた。
国王が直々に彼女の自宅を訪ねて、彼女に側妃となるように迫った。
しかしルセランテは、当然断った。
結婚して夫と、まだ赤子の娘がいる身。
裏切ることはできなかったし、彼女自身愛する夫や娘と離れたくなかった。
国王は断られて、渋々彼女の自宅を後にした。
だが、それは諦めたわけではなかった。
その1ヶ月後、国王は騎士を率いて、再び村にやってきた。
騎士は村人を次々と殺し、家屋に火をつけていった。
逃げ隠れていたルセランテは、騎士に見つかって国王の前に引き摺り出された。
髪は乱れ、服が薄汚れていても、ルセランテの美しさは全く衰えていなかった。
「な……なぜ、このようなことを……」
恐怖に駆られながらも、必死に尋ねた。
「決まっている。お前を手に入れるためには、ここは必要ないだろう?帰る場所がなければ、わしの元にくるしかない。」
「そんな……」
ルセランテは、全ては自分のせいだと気がついた。
「これらも、当然いらぬよな。」
国王が騎士に目配せすると、騎士は傷だらけの夫と、ぐったりしている娘を連れてきた。
「あ……いや……やめて……」
何をされるか、瞬時にわかった。
だから必死に縋りついて、泣きながら懇願した。
「お願いします!行きます……一緒に行きますから……夫と娘だけは……どうか!!」
「これらがいれば、わしのものにならないだろう?……やれ!」
「いやぁぁぁぁぁーー!!!」
必死に手を伸ばすが、ルセランテを抑える騎士の手は揺るがない。
目の前で愛おしい夫と娘に、何度も剣を突きつけられていくのを、見ていることしかできなかった。
そうして夫と娘が息絶えるまで、その光景を止めることができなかった。
ずっと見ていたから、息の根が止まるのがはっきりとわかった。
「あ……あ……あああああああああーーー!!!!」
伸ばした手は力無く地面に落ち、ただただ声を上げた。
茫然自失となったルセランテの頬を、国王は愛おしそうに撫でると、優しく抱き上げた。
ルセランテは、もはや抵抗する気力がなかった。
丁寧に馬車に乗せられ、どこかに連れて行かれようとしていても、力無く座り込むことしかできなかった。
そして、国王とルセランテを乗せた馬車は、王城へと帰還したのだ。
国王は動かないルセランテを優しく抱き上げると、彼女のためだけに整えさせた後宮の豪華な一室に、彼女を連れて行った。
そのまま彼女と寝室に篭り、5日にも及ぶ日数を彼女との情事に費やした。
国王はルセランテが逃げないように、この一室内でしか移動できない長さの鎖で、彼女の両足を繋いだ。
国王のルセランテに対する寵愛は深く、政はするものの、その他の時間を全て彼女とともに過ごしていた。
王妃や王子たち、臣下に何を言われても、国王は行動を変えることはなかった。
ルセランテが望んでいなかったにも関わらず、彼女は国王を傾けた『傾国の魔女』と呼ばれるようになった。




