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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

昨日みた夢の内容

「各自装備確認!」


副長の掛け声と共に、鎚矛で武装した若者達は装備の再確認を行う

館の庭は鴉が飛び交い、冷たい小雨が振り始めていた



今回の仕事も『悪魔祓い』だ

臨時神父達の練度は低く、士気もまた低かった


事前の情報では、館の中には"悪魔"と呼んでも差し支えの無い悪霊が潜伏して居る


憎くて当然だろう、悪霊の生前はは失脚した先代の上官だ

現在の俺の上司にハメられて自殺した

正義の為に生きた者のよくある末路だが、哀れとはいってもこの世界では珍しい事でも無い


言ってみれば、総てがこの雨のような物だった

直ぐに死ぬようなものでこそ無いが、あらゆる事が最後には台無しになって下に流れていくのだ


部下達も事情はおおよそ把握していた

しかし、士気が低い本当の理由は『こうした自分達に正義の無い戦い』が、既に相当な回数繰り返されていたせいだった



「銃とかで決着すりゃ、精神的にも少しは楽なのによ」


銀の鎧で武装した臨時神父の一人が言った

俺はそれよりも、鎧の安全性について考えていた


銀の鎧は霊的には防御されているが、物理的防御力は皆無に等しい

それにより現場では死者も出ていたが、改善の為の報告書が上まで届いた事は無かった


部下達には「物理的にもある程度の堅牢さがある」と伝えている



俺は、館の扉に鎚矛を叩き付けた

高い木材というのは思いの外頑丈で、破壊する為には何度か繰り返す必要が有ったが、いずれにしても扉は破壊された



「…………戦闘開始だ」


俺が背中で告げると、臨時神父達は溜息を吐いたり、顔を視合わせたりしながら、それでも最終的には俺に続いて館の中に入っていった




戦況は思わしく無かった


何しろ、相手は鎧の脆弱性を熟知している

我々は銀の武器を用いる事により未練ある魂の頭をぶちのめす事が出来るが、考えてみれば向こうもそうなのだと感心させられた

館の広間は槍や石像が音も無く飛び回っていて、それに一撃されて若者達はゴミのように死んでいった


教本や2時間ビデオを視せられるだけの指導要綱には、ポルターガイストと取っ組み合いをする方法は記されていない

何度かの出撃で偶然死ななかった者だけが、ベテランになれるのだ


もっとも、若者達が思い描くような輝かしい出世は俺達には用意されていない

そういうものは、生まれの良い者達の為に独占されているからだ


今回はむしろ教則が仇となった

聖水や十字架は、ある程度より憎悪の強い霊や狂った霊には通用しない


そして今回のケースは、その両方だった

栄誉ある臨時神父達は、指導を真面目に受けていた者から順番に死んでいった


俺をはじめ数名は、素早く鎧を脱ぎ捨てた事で生き延びた


鎧は相当な重量を持っている

死んだ臨時神父が新しい凶器として飛び回り、死者は加速度的に増えていった


走り回らなければ生存する事が出来なかった

しかし、鎚矛を持ちながら走り続けるには俺達は強くなかった


気が付けば、俺以外の人間は全員が真っ赤な挽肉になって宙に浮かんでいた



その事に気が付いて、俺は足を止めてしまった


信じられない量の蝿が集まり、煙のような黒い人影を形作る

視間違える筈もない、俺の元上司だ



人影は俺に素早く近寄ると、俺の首を片手で締め上げ、持ち上げて揺さぶった


相応の苦しさが襲い掛かる


とはいえ、経験のある事だ

俺はギリギリの所でパニックを起こさず、手にした鎚矛で影を殴り付けた


生物を殴ったような感覚

彼の躰からは血の代わりに、幾つもの蝿が飛び散って床に転げた



「俺が味方しなくてムカついたのかよ?」


喉が圧迫されていて喋れなかったが、心の内でそう思った


恨みのあるやつは、いつもこうだ

本当に死ぬ切っ掛けになった奴の所には、絶対復讐になんか行かない


怖いからだ



人影は首を絞めている手の親指を直角に曲げると、それで喉の気道を押し潰しながら首を絞め始めた



面白え


どっちが先にくたばるか、やってみようじゃねえか


俺は鎚矛を、もう一度影に叩き付けた

また蝿が飛び散って床に落ちた

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