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8、

「談笑中の方もいらっしゃると思いますが、そろそろ、フリータイムです! ご自由に食べたり飲んだり、お話したり! 楽しい時間を、お過ごしください!」


 スタッフさんの声が、会場に響き渡り、フリータイムが始まった。

 フリータイムでは、食べたり飲んだり、お話したりと自由に過ごして良い。そんな時間なのだとか。


(ヤバい。ローストビーフ食べすぎたかも。このサラダだけで、お腹いっぱい)


 撫子は相変わらず上司の今井さんとお話し中。会場は賑やかだし、何処かで静かにゆっくりしたいし、外の空気を吸いたい。


(そういえば、駐車場の片隅に、東屋があったな。そこに行こう)


「ねぇ、撫子。お話し中、ごめんなんだけどさ」

「ん? どしたの?」

「外って出ても良いの?」

「スタッフに何処に行くか言ってからなら、会場の外に出れるよ」

「そっか。ありがと」


 バッグにプロフィールシートを入れて、東屋へレッツゴー。


「すみません、スタッフさん」


 出入り口にいたスタッフさんに声を掛けて、東屋に行くことを伝える。


「フリータイムの間、東屋に行きます」

「わかりました。解散は会場で行いますので、スタッフがお声掛けさせて頂きますね」


 よし。外の空気を吸おう。


(あたし以外、東屋で景色を見ている人なんて、いないだろうな)


 あまり広くない駐車場の片隅に、街灯に照らされる東屋がある。

 外の景色が楽しめるように、木製のテーブルとテーブルを囲む木製のベンチ。


 外は既に暗く、この時間は誰も外に出ていない。外の空気が涼しくて、澄んでいて。

 すぐ近くを信濃川が流れているから、川の流れる音が聞こえる。


「んん~! 疲れたなぁ」


 大きく伸びをひとつ。休みだというのに、気を使う日。もしまた撫子が誘ってくるなら、次はもうないな。


 ホテルの玄関から徒歩30秒。片隅といっても、植木の間にある、憩いの場所。

 街灯があるから、暗い夜でもゆっくり出来る。


 と、思っていた。

 あたしが来るよりも早く、この東屋でノートパソコンで作業をする男性。

 アッシュブラウンの長髪は、後ろでポニーテールにされ、心地良い風に揺れている。

 この人、街コンに参加してた、撫子や他の女性たちが口を揃えて呼んでいた《王子様》だ。


(ん? ノートパソコンに貼られている、あのステッカーって、あたしも好きなアニメ《スクールライブ!》のグループエンブレムと、キャラクターのステッカーだ)


Acode(エーコード)の、笹原(ささはら)ういちゃん」


 声に出てしまった、あたしの独り言。

 やってしまったけど、もう逃げられない。

 《王子様》はあたしの声に驚きながら、こちらを見ている。


(逃げたい。逃げたいけど、どうしよう、この状況)


「ういちゃん、知ってるんですか?」


 それは小さく、でも、この質問はあたしに向けられたもの。


「あ、っと、はい。あたしの場合、ういちゃん推しというより、姫花(ひめか)ちゃん推しです」

「そうでしたか。良かったです。《スクールライブ!》の話を出来る方が、今までいなかったので」

「お好きなんですか? 《スクライ》のこと」


 《王子様》は顔を輝かせ、あたしを真っ直ぐ見据える。

 眩しいくらいのイケメンなんだよね。この人。


「もちろんです! Acode (エーコード)に出会って、僕の世界が変わりました!」

「じゃあ、ういちゃんに感謝ですね! ういちゃんがいなければ、Acode (エーコード)は始まらなかった訳ですし!」

「そうですよね。それに、今も続くビッグコンテンツになりましたもんね」


 なんだろう。他の人とは違って、《王子様》とは話しやすい。

 プロフィールシートには書かなかったけど、あたしも、《スクールライブ》が好き。

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