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「談笑中の方もいらっしゃると思いますが、そろそろ、フリータイムです! ご自由に食べたり飲んだり、お話したり! 楽しい時間を、お過ごしください!」
スタッフさんの声が、会場に響き渡り、フリータイムが始まった。
フリータイムでは、食べたり飲んだり、お話したりと自由に過ごして良い。そんな時間なのだとか。
(ヤバい。ローストビーフ食べすぎたかも。このサラダだけで、お腹いっぱい)
撫子は相変わらず上司の今井さんとお話し中。会場は賑やかだし、何処かで静かにゆっくりしたいし、外の空気を吸いたい。
(そういえば、駐車場の片隅に、東屋があったな。そこに行こう)
「ねぇ、撫子。お話し中、ごめんなんだけどさ」
「ん? どしたの?」
「外って出ても良いの?」
「スタッフに何処に行くか言ってからなら、会場の外に出れるよ」
「そっか。ありがと」
バッグにプロフィールシートを入れて、東屋へレッツゴー。
「すみません、スタッフさん」
出入り口にいたスタッフさんに声を掛けて、東屋に行くことを伝える。
「フリータイムの間、東屋に行きます」
「わかりました。解散は会場で行いますので、スタッフがお声掛けさせて頂きますね」
よし。外の空気を吸おう。
(あたし以外、東屋で景色を見ている人なんて、いないだろうな)
あまり広くない駐車場の片隅に、街灯に照らされる東屋がある。
外の景色が楽しめるように、木製のテーブルとテーブルを囲む木製のベンチ。
外は既に暗く、この時間は誰も外に出ていない。外の空気が涼しくて、澄んでいて。
すぐ近くを信濃川が流れているから、川の流れる音が聞こえる。
「んん~! 疲れたなぁ」
大きく伸びをひとつ。休みだというのに、気を使う日。もしまた撫子が誘ってくるなら、次はもうないな。
ホテルの玄関から徒歩30秒。片隅といっても、植木の間にある、憩いの場所。
街灯があるから、暗い夜でもゆっくり出来る。
と、思っていた。
あたしが来るよりも早く、この東屋でノートパソコンで作業をする男性。
アッシュブラウンの長髪は、後ろでポニーテールにされ、心地良い風に揺れている。
この人、街コンに参加してた、撫子や他の女性たちが口を揃えて呼んでいた《王子様》だ。
(ん? ノートパソコンに貼られている、あのステッカーって、あたしも好きなアニメ《スクールライブ!》のグループエンブレムと、キャラクターのステッカーだ)
「Acodeの、笹原ういちゃん」
声に出てしまった、あたしの独り言。
やってしまったけど、もう逃げられない。
《王子様》はあたしの声に驚きながら、こちらを見ている。
(逃げたい。逃げたいけど、どうしよう、この状況)
「ういちゃん、知ってるんですか?」
それは小さく、でも、この質問はあたしに向けられたもの。
「あ、っと、はい。あたしの場合、ういちゃん推しというより、姫花ちゃん推しです」
「そうでしたか。良かったです。《スクールライブ!》の話を出来る方が、今までいなかったので」
「お好きなんですか? 《スクライ》のこと」
《王子様》は顔を輝かせ、あたしを真っ直ぐ見据える。
眩しいくらいのイケメンなんだよね。この人。
「もちろんです! Acode に出会って、僕の世界が変わりました!」
「じゃあ、ういちゃんに感謝ですね! ういちゃんがいなければ、Acode は始まらなかった訳ですし!」
「そうですよね。それに、今も続くビッグコンテンツになりましたもんね」
なんだろう。他の人とは違って、《王子様》とは話しやすい。
プロフィールシートには書かなかったけど、あたしも、《スクールライブ》が好き。




