7、
竹内先生との会話を終え、やっと来たローストビーフを堪能する時間。
でも、間髪入れずに、撫子が隣にやって来た。
「ふぅー。疲れた。さち、どうだった? 良い人いた?」
「全然。でも、世界史の竹内先生いた」
「竹内先生って、あの?」
「そうだけど?」
「うっわ、教え子を口説いたのか。遂に」
「口説かれてない。竹内先生は、常識あるでしょ」
どうなのかねぇ。と、撫子は座る。お酒臭いから、既にかなり飲んだな?
「聞いてよ。さち」
「何? どうしたの?」
「あそこに、女性たちが群がっているでしょ」
「うん」
中央のテーブルは、女性たちが群がっていて、撫子はそのテーブルを指差しながら、口を尖らせている。
「あそこに、王子様がいるんだけどさ、王子様なんて、夢物語だったの」
「まぁ、王子様なんて王室に行かなきゃ、いないでしょ」
「そうじゃなくて! かなりのオタクだったの! しかも、二次元の女の子好きでさ、引きこもりで、高卒の資格はあるけど、高校は行ってないって! しかも、小説家らしいけど、名前聞いたことないから、売れてないよ。あそこで群がる女の子たち、本性を知って、ほら、離れていく」
撫子の文句が終わった。あたしの優雅な、ローストビーフタイムを返して欲しい。
「で、撫子は良い人いたの?」
「いない。学歴主義の奴がいたし、身体目当ての奴がいたし、最悪だよ」
あたしも、同じような感じだったな。でも、ローストビーフは美味しい。
撫子の知り合いである、今井さんも戻ってきた。
「佐藤さんも、ダメだったの?」
「今井さん! 聞いてくださいよぉ!」
撫子の愚痴を、嫌な顔をせずに聞いている今井さん。この2人の関係性を、あたしは何も知らない。
「ところで、お二人の関係性は、何なんですか?」
「あれ? 紹介してなかった? 今井さんは、私の上司なの。主任なんだよ。仕事出来るし、部下思いだし、上司と私たちの間に入ってくれるし、今井さんがいなかったら、私は、今頃……」
「大袈裟だなぁ。佐藤さんがいなかったら、新商品の開発、上手くいかなかったよ」
「滅相もないです! 今井さんが、提案してくれたお陰で、新商品のプレゼンも成功したワケですし!」
あー、ローストビーフ美味しい! そろそろサラダも食べようかな。ドレッシング、何種類かあったし、全部試そう。
「サラダ取ってくるね」
撫子はまだ今井さんと話している。一言残して、あたしはサラダバーへ。
「どうだったの? 王子様とのお話は」
「ただの引きこもりで、オタクだったわ。二次元の女の子が好きらしいし、高校行ってないらしいよ。実家がお店やってるとかで、そこでバイトしてるんだって。王子様なんて言い出したの、何処の誰なんよ」
「せっかくのイケメンが台無しじゃん。聞いただけだと」
今度はあたしの前で、サラダを取っている女性2人組。全く。王子様以外の話は出来ないのかね。
あたしの番になり、サニーレタスのグリーンサラダをお皿に盛りつけて。ドレッシングは、フレンチドレッシング。




