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「礼さんは何を買ったんですか?」
「トラウトサーモンの丸寿司と、ツナマヨのおにぎりと、ちょっとしたカップデリです。この丸寿司好きなんです」
「美味しいですよね、それ」
「はい。何も食べてなかったので、限界間近でした」
「食べてない!? 礼さん、ホテルバイキングですよ!?」
衝撃的事実が発覚。参加費は男性の方が高かったはず。飲んだり食べたりすれば、もとは取れるけど……。
「はい。会場ではドリンクだけでした」
「礼さんの周り、女性たちが群がってましたもんね」
「そうなんです。食べたくても次々と来るので、ドリンクで凌ぎました。フリータイムは東屋に逃げたので」
「参加費、無駄になりましたね」
「無駄ではなかったです」
「そうですか?」
ともあれ、礼さんがそう言うなら、そうなんだろう。
「さちさんは、何を買ったんですか?」
「えっと。お菓子買おうと思ったんですけど。流石に、この時間に食べると、太るので。豆腐バーとチキンスティクです」
「バジル味のチキンスティクですか。美味しいですよね」
買った物を見せ合いながら、駅に向かって行く。すぐそこだし、そんなに急ぐ必要もない。
この時間にやっている、駅ナカのショップはあるのだろうか。
「この時間だと、やってるショップ無いかもしれません。ただ、電車の時間にはちょうど良いです」
礼さんがスマホで調べてくれて、駅前の信号が青に変わるのを待っていた。
「礼さんは、何で街コンに参加してたんですか?」
今、この時間はほとんど人がいない。だから、礼さんに聞いてみた。
「何度も参加されてるって、幼なじみが言ってました」
「えっと。これは、僕の意思ではないんです」
「それはどういう?」
「僕、2つ下に弟がいるんです。弟は僕と違って、大学を卒業してからは、区役所で働いています」
「凄いですね」
それしか出てこない。礼さんは、どこか引け目を感じているのかもしれない。
だから、他の言葉は出てこなかった。
「その弟が、5年前に結婚したんです。今は子どもが2人いて、再来月また、1人生まれるみたいなんです。そんなこともあって、両親や祖父母が、勝手に応募してて。僕は半ば強制的に、メールアドレスと電話番号を入力させられてます」
礼さんは、疲れたような、悲しんでいるような表情をしている。
ため息までついているし、街コンに行くことは、礼さんにとってかなり負担なんだろう。
でも、なんとなくだけど、フリータイムで東屋に居たことに納得した。
「結婚願望はないわけではないんです。ただ、僕の趣味や仕事を伝えると、どうしても……。やっぱり、安定した仕事じゃなきゃダメなんでしょうね。それに、趣味だって」
「同じ界隈を好きじゃなきゃ、理解は得難いと思いますよ。でも、あたしは礼さんのこと、理解できます」
「ありがとうございます。さちさん」




