13、
「さち! どこ行ったのかと思ったよ!」
「ごめんごめん。ちょっと外にね」
「全くもう。LINKにメッセージ送ったのに、全然既読にならないし!」
大宴会場へ戻り、撫子の元へ行くと、かなり心配されていたらしい。
「ちょっと、話してたからね」
「話してた? 誰と?」
「撫子のいう《王子様》と」
「え!? 嘘でしょ? 《王子様》と話してたの?」
「そうだよ。それはもう、話が弾んじゃって」
「ヤバい人だったでしょ? 引きこもりだし、売れない小説家だし」
(はいはい。礼さんの印象は、そこまでで良いでしょ。あたしが知る礼さんは、凄い人なんだから)
「あたしの推しの作家さんだったよ。それに、オタ友になった」
「オタ友って、二次元の女の子にしか興味ない人だよ?」
「あたしだって、美少女イラスト好きだけど? 《スクールライブ!》好きだし。二次元の女の子を好きですが、何か?」
「さち、毒された? あの《王子様》に」
「されてない。ただ、これ以上、悪く言うなら、何も言わないで」
早く閉会しないかな。
これ以上礼さんの事で何か言われるなら、あたしはこの場から去りたい。
「ところで、今井さんだっけ? いないみたいだけど」
「トイレ行ったみたい。すぐ来るでしょ」
「撫子はこの後、ホテルに泊まるの?」
「泊まる。さすがに呑んだしねぇ。さちは、このまま帰宅?」
「ううん。ネットカフェ行く」
「そっか。あ、今井さん」
あたしの隣に、撫子の上司である、今井さんが戻って来た。
「そろそろ閉会だよね。まだ終わってないの?」
「もうすぐだと思いますよ。スタッフさん、マイクの前に来ました」
スーツを着たスタッフさんが、マイクの前に立ち、会場は静かになった。
「皆様、本日は第24回新潟街コンへお越しくださり、ありがとうございました。皆様にとって素敵な出会いがありましたなら、我々は嬉しいです。本日はこれにて閉会となります。この後、柳和ホテル様にご宿泊の方は、こちらまでお越しください。それでは、ありがとうございました」
始まる前までは、早く終わって欲しかった街コンだけど、今は、もっと礼さんと話したいと、思ってしまう。
(これは、撫子に感謝しなきゃだね)
「さてと。じゃあね、さち」
「うん。撫子、呑みすぎたからって、ベッドにダイブだけはしないでよ?」
「しないって。じゃ、またね」
「またね。おやすみ」
参加者の半分くらいの人が、このままこのホテルに宿泊するらしい。
礼さんは、どうなんだろう。もう少し話したいけど。
あたしより早く会場を出たかもしれない。あたしも会場を出よう。
「まぁ、また何処かで会えるか」
最寄りの最適ルームは。
ここから3キロ近くも離れてる。でもまぁ、歩いて行けない距離じゃない。
柳和ホテルを出たら、新潟駅方面に向かって歩く。たまには、夜の散歩も良いかも。
(いや、夜道にひとりは危ないかな? だからといって、車で来たわけではないし)
駅までなら、そんなに離れてない。それなら、このまま帰ろうかな。
礼さんとは連絡先を交換したし、空いてる日が同じなら、いつでも会える。




