12、
「そうだ。多田野さん」
「何ですか?」
「えーと、ちょっと待ってくださいね……」
鞄から、正方形でかなり量のあるメモ帳とボールペンを取り出し、何かを書いている聖先生。
(ブロックメモだ。これ持ち歩いている人、いるんだ)
立ち止まり、少し待っていると、切り取られたメモ用紙を渡された。
そこには、名前と11文字の数字。それとSNS のID。
それに、このメモ用紙に描かれている女の子は。てことは、このメモ用紙はおそらく。
「これって……」
「僕の連絡先です」
「良いんですか?」
「はい。多田野さんと、その……」
「何ですか?」
「えっと、ですね。その。お友達というか、無理にとは、言いません。小説家、聖としてではなく、西野礼として、多田野さんと。いえいえいえ、変ですよね。分かってます。それでも」
慌てた様子で、口ごもる聖先生。小説家としてではなく、西野礼さんとして、友達に。
(悪い話じゃないし、《スクールライブ!》のファンとして繋がれるなら)
「良いですよ。お友達。それなら、聖先生のことを礼さんって、呼んで良いですか?」
「へ? あ、ありがとう、ございます。多田野さん」
「さちで、良いです。あたしが名前で呼んでるのに、名字呼びだと変ですし」
「さち、さん?」
「はい! あたしの連絡先も渡しますね。メモ用紙、1枚貰ってもいいですか?」
聖先生改め、礼さんからメモ用紙を1枚貰って、あたしの連絡先を書いていき、このメモ用紙の真相を。
「どうぞ。礼さん」
「ありがとうございます」
「礼さんって、アートビバ社の展示会に行かれたことありますか?」
「何故それを?」
(一か八か。あたしの推理が当たっていれば。じっちゃんの名に懸けることは出来ないけど)
再び歩きだし、あたしの推理を披露。名探偵さち、初の謎解き!
「このメモ用紙って、イラストレーターの、とわいらいと先生のブロックメモですよね? これ、展示会の時にしか販売してないやつで、あたしも持っているんですよ」
「さちさんって、凄いですね。その通りです。とわいらいと先生のイラストを初めて観た時から、ファンなんです。他にも御崎シロエ先生も推しています」
(当たってたぁ! やっぱりね!)
礼さんも美少女イラスト好きなのかな?
アートビバ社の展示会は、数人のイラストレーターの作品が飾られているから、何度行っても楽しめる。
御崎シロエ先生のイラストは、あたしも何度も観ていて……。
(ん? 御崎シロエ先生?)
「《銀の花が咲く日に》の表紙と挿絵を、担当されていた、イラストレーターさん?」
「そうです。初めての作品のイラストレーターさんなので、新潟県内で展示会がある時は、絶対に行くようにしているんです」
「じゃあ、朱鷺ホールで来週行われる展示会、行くんですか?」
「行きますよ。Web予約も済んでいます」
「流石ですね。礼さん」
ホテルの中に入ると、先程までの暗さからなのか、目が慣れない。
「眩しい……」
「大丈夫ですか? さちさん」
「大丈夫です。すぐ慣れますから」




