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11、

 聖先生の作品は、他作品のページの間に挟まれていたリーフレットで、紹介されていたのをきっかけに知った。

 新潟市出身在住のプロフィールを見て、親近感を持って読んでみたのが最初。


「あたしは、好きです。聖先生の書く世界」


 これは、お世辞でも嘘偽りない思い。


「ありがとうございます。多田野さん」

「どうやったら、思い付くんですか?」

「それは、企業秘密ということで」

「えぇ~。教えてくださいよ」

「ん~。引きこもっていたり、図書室登校してた中学時代に、自由に小説を読んでいたのが、今に繋がったのだと思います」

「マイナスをプラスに変えたんですね」


 引きこもりや別室登校とか保健室登校って、マイナスなイメージを持たれるけれど、聖先生はそれをプラスに変えて、活躍してる。


(やっぱり、聖先生は凄い)


「デビュー作の《銀の花が咲く日に》を読んだ時、衝撃を受けたんです。あれを中学生で書かれたなんて、信じられなくて」

「ありがとうございます。時々読み返すんてすけど、稚拙な作品ですよね。加筆と訂正を加えても、出版は16歳ですし」

「デビュー作が発売された日って、書店に見に行きました?」


 是非とも聞いてみたい質問。夢が叶った特別な1日を、聖先生はどう過ごしたんだろう。


「行きました。自分の作品が、先輩作家さんたちの作品よりも目立つように置かれていて、感動してました」


 夢が叶った人って、こんなにもキラキラして見えるんだ。


「夢って叶うんですね」

「叶いますよ。努力と才能と放任があれば」

「放任? ですか?」

「僕の両親、僕が引きこもっても、学校に行くように言って来なかったんです。行けそうな時に、保健室でも図書室でも、行けば良いって」

「ご両親、寛容なんですね」

「そのおかげで、小説家になれましたから。感謝してます」


 こちらに向かってくる足音が聞こえ、顔を向けると、歩いて来たのは、街コンのスタッフさん。


「西野様、多田野様。フリータイムが終わります。閉会しますので、会場へお戻り下さい」

「「はい」」


(もう少し話したかったな……。でも、仕方ない。街コンに来てるんだもん)


「行きましょうか。多田野さん」

「は、はい」


 夢のような時間は、ここで終わり。推しと話せただけでも、この街コンは無駄ではなかった。

 交換していたプロフィールシートを返却して、初めてこの時間が終わって欲しくないと思ってしまう。

ホテルに向かって歩く時間が、こんなにも嫌になるなんて。


「多田野さんは、何処のネットカフェに行ってるんですか?」

「え?」

「ネットカフェ、お好きなんですよね?」

「あ、えっと。行きつけは、秋葉区の最適ルームです」

「あー、あそこですか。僕もよく行ってますよ。僕はオープンブースとカラオケしか使ったことありませんが」


(おぉ! 聖先生も、最適ルームの会員だとは!)


「オープンブースでも、充実したサービスですよね。ドリンクバーは飲み放題で、ソフトクリーム食べ放題ですし! あたし、メロンソーダにソフトクリームを乗せるのが、好きなんです」

「僕のオススメは、ホットアップルティーのソフトクリーム乗せですね。無糖のアップルティーですけど、ソフトクリームを乗せると、リンゴの風味とソフトクリームの甘さが、絶品なんです」

「今度やってみます」

「感想、聞かせてください」

「了解です」


 聖先生のオススメ、試す価値アリだね。

 いつも、資格の勉強でお世話になってる最適ルームに、楽しみが1つ増えた。

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