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第9話 また寝取られるのか俺は

 オーロラの聖女の力は“本物”だった。

 ホーリークレストという魔法スキルは、瞬く間にゾンビオークを浄化。消滅させた。


「やるじゃないか、オーロラ!」

「褒めていただき、嬉しいですっ」


 俺の体に飛びついて喜ぶオーロラ。だ、だから……いろいろ感触がッ。


 とりあえず、ゾンビオークの討伐は完了した。


 ゼルファードへ戻り、このことを村長のタルモレアに報告。とても感謝され、その娘であるラフィネからも手を握られ絶賛されていい気分になった。



「さすが勇者エルド様。これで村の安全は確保されました」

「お役に立てて良かったよ」


「……本当にかっこいいです」


 ラフィネの瞳が潤んでいるように見えた。

 イカン、これはまたオーロラが妬くのでは……と、思ったが姿はなかった。動いて汗を掻いたので風呂へ行くと言っていたな。セーフだ。


「ふむふむ。邪魔してはいけませんな。では、ごゆっくりと」


 村長は空気を読んだ(?)らしく、奥へ去っていく。



「エルド様」

「ラ、ラフィネ……」


「私、ゴブリンから助けられたあの瞬間から勇者エルド様が好きなんです」



 いきなり告白され、俺は動揺した。マジか。

 でも嬉しいな。ラフィネほどの可愛い女性にそう言ってもらえるとは。



「ありがとう」

「あの、エルド様……」



 ラフィネは突然、顔を近づけてきて俺の唇に重ねてきた。

 柔らかい感触に包まれ、俺は頭が真っ白に――。


 数秒間のキスだったけれど、甘くて脳がとろけそうになった。まさか、ラフィネの方からしてくるとは思いもしなかった。完全に想定外だった。

 今までも勇者として旅をしている時は、女性から求められたことは何度もあるけど積極的にキスをしてきたのはラフィネがはじめてだ。



「えっと……その」

「私自身と村を助けていただいた感謝です」



 その笑顔が天使のようにまぶしくて、俺はこの子を守りたいと感じた。

 そうだ、全部守りたい。



 ◆



 翌日。

 俺とオーロラのゾンビオーク討伐が大々的に広まり、賞賛されまくった。

 ここ最近のシュヴァルク王国の騎士撃退や、ハルネイドの撃破も含めて評価されて――ついに、俺たちは住人として認められることに。


 永住権をゲットした。


 これで正式に俺たちは村の仲間というわけだ。



「やりましたね、エルド様」

「ああ。住む場所を得たってことだからな」


「二人きりの家を建てましょう!」

「……そ、そうだな」


「? エルド様、なんだか余所余所しいですね」



 昨晩、ラフィネとキスをしたとか言えない。

 というか今までも女性との関係は多くあったけど。……キス止まりだけど。



「いや、そんなことは」

「もしかしてラフィネさんと何かありました?」


「……ぐっ」



 鋭いなこの聖女!

 それとも、俺の顔に書いてあったか……?

 これは隠し通せそうにないな。


 大事になる前に自白しておこうと思った時だった。



 上空から隕石のような大きな『火球(かきゅう)』が降ってきた。それも一つや二つではない。かなりの数だ。


 降り注ぐソレは魔導士が使う火属性魔法『ファイアーボール』そのものだ。


 ……まさか!!



「エルド様、これはもしや!」

「上級魔導士か!」



 まずい、もう攻めてきたのか。いや、魔導士なら上級のスキルを持ち合わせているからな。辺境の地ゼルファードを探すなんて容易いだろう。


 しかし、まさかここまで早くたどり着くとは……!


 このままでは建物が廃墟にされてしまう。


 すでに一部のファイアボールは建物を破壊していた。


 轟音を響かせ、崩壊していく一部の建物。くそっ、損害が出やがった! 村人にも被害がでない内に俺は上級魔導士を排除する。



「わたくしも同行します」

「……解かった。俺から離れるんじゃないぞ」

「了解です」



 魔力探知は、オーロラが得意のようだから任せた。

 その攻撃地点を追えばアッサリと特定できた。


 やっぱり森の中か!



 まず、一人目の上級魔導士を発見。黒いローブに身を纏い、素顔は分からないが……そんなことはどうでもいいな。倒すだけだ!



「村を破壊するんじゃねえッ!」



 聖剣アルビオンで斬撃を飛ばす。この方が早い。


 弧を描く遠距離攻撃が上級魔導士に激突。そのままヤツを吹き飛ばした。



「ぐああああああああああああ……!!」



 おそらく向こうは接近物理攻撃をしてくるものだと思い、通常の防御魔法を展開していたに違いない。だが、俺は“遠距離物理攻撃”をした。だから、防ぐには通常の防御魔法だけでは足りない。


 遠距離物理防御魔法(レンジシールド)でなければならないのだ。


 その判断が遅れた上級魔導士は、俺の斬撃をまともに喰らい木々に激突。ぶっ倒れていた。



 このことが功を奏し、上級魔導士を次々に撃破。



 オーロラによれば魔力はあと二つとのことだった。これなら被害を抑えられるはず。


 急いで次の現場へ向かうと、一人の上級魔法魔導士を発見。同じように斬撃を飛ばして撃破した。


 よし、これで残り一人!



「良い調子だ。これで……」


「きゃあ!!」



 振り向くと上級魔導士がオーロラを人質にしていた。……クソッ! 背後に回れていたか。



「調子に乗るなよ、エルド!!」

「貴様……俺の仲間に!」


「幸運なことに聖女オーロラではないか。ほぅ、こんな美人だったとは……ここで裸に剥いてやろうか!」


「てめぇ!!」



 上級魔導士は、オーロラのシスター服に手をかけていた。この野郎、殺す!



「す、すみません……エルド様。わたくし……」

「気にするな。俺の油断のせいだ」


 そうだ、簡単に終わると思っていた俺の判断ミス。相手は仮にも上級魔導士だ。当然、行動を変えてくるよな。



「フハハ! エルドぉ、お前はティアナ姫を寝取られたらしいな! じゃあ、俺が聖女を寝取ってやる。お前の目の前でなッ!」



 キュルキュルと音がして――気づいたときには俺もオーロラも拘束されていた。こ、これは……拘束魔法だと!


 相当レベルの高い魔導士しか使えない大技スキルだぞ。

 しかも、簡単には抜け出せない。


 上級魔導士は、オーロラの服を脱がしていく。



 ……ふざけんな。



 ほぼ下着姿にされ、けれどオーロラは耐えていた。泣きもせず、我慢していた。



「…………ッ」



 おい、なんでそんな我慢しているんだよ。こんな状況になったら、普通泣き叫ぶところだ。でも、彼女は声も出さず必死に俺に視線を送っていた。


 もちろん、助けるさ……!




「無駄だ、エルド。その拘束魔法はな……獰猛(どうもう)なドラゴンや巨人ゴーレムでも抜け出せんのだ。しかも、10分間はあらゆるスキルを使用不可能にする特典つき。……俺は、その辺のゴミ魔導士とは違うのだよ!」



 今度は、オーロラの下着に手を伸ばす男。……殺す、殺す、殺す!



「やめろおおおおおおお!!」

「ハハハハハ!! 世界を救ったお前に恨みはないが……最高の気分だぜ!! だってォ、こんなクソ美人の聖女をお前の目の前で犯せるんだからなァ!!」



 寝取られる……。

 また寝取られるのか俺は。


 ふざけるな!

 ふざけるなあああああああああ……!



「ぶっ殺してやる!!」

「エルド、お前はそこで聖女の乱れる様を見物しているがいい!」



 ……こうなったら村ごと吹っ飛ばすことになるが……“最終手段”を。


 ヤケクソになったその時だった。



 なにかが飛んできて、それが上級魔導士の頭部に直撃。瞬殺した



「…………」



 え、死んだ? なんで?


 てか、誰だ……!?

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聖女が全く抵抗しないのはなぜ?
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