第52話 真の魔王降臨
もはや、これはゾンビなのか――?
ナニカが三体融合したような……恐ろしき造形。無数の触手に、大きな口。物凄い数の牙だ。
なんだこりゃ……まるで魔物の中の魔物アザトスじゃないか。
魔王ネクロヴァスが生み出した最強の魔物だったが、俺が倒した。それはそれは、おぞましい姿だったな。
アレを連想させるようなバケモノだった。
――いや、まさか!
「オルジスタ、アザトスの血を使ったのか……!」
「よくぞ気づいたな、エルド! そうだ、お前が倒した魔物の血を採取し、私はとうとう『真の魔王』を作りあげることに成功した!」
「真の魔王だと?」
「ああ……そうとも。私の“愛”によって誕生した最強の魔王だ。そうだ、名前をつけてやらねばなァ!」
「貴様……!」
オルジスタは恐ろしい形相でその名を口にした。
「ラブクラフト! そうだ、真の魔王の名はラブクラフトだ!! 刮目せよ、勇者エルド!!」
[ラブクラフト]
[モンスター情報]
真の魔王として君臨した怪物。
詳細は不明である。
モンスターの情報が現れた……だと!
「こんな混沌が魔王であるものか!」
「おいおい、エルド。喜べよ」
「……ふざけんな!」
「このラブクラフトの肉体には、カイゼルス王を使ったのだぞ。おまけで家臣も数人ほどな!」
なん、だと……。
だから、顔がいくつもあるのか。
コイツ、何人もの人間をくっつけて……こんなバケモノを生み出したのかよ。最低だ!
「こんな非人道的な物体を魔王と認めるわけにはいかない!」
無数の触手攻撃を避けながら、俺は聖剣アルビオンで叩き切っていく。
スキルを交えていくが――触手は直ぐに再生。
再び攻撃を繰り返してきた。
クソっ、キリがねぇ!!
「ハハハッ! 無駄だ、エルド。ラブクラフトには最強の再生能力を与えた。お前の本気であろうとも、直ぐに再生する」
再生能力か……無駄に面倒な機能をつけやがって。
オルジスタの野郎、これでは錬金術師ではなくマッドサイエンティストだ。
「助太刀しましょうか、エルドさん!」
上空から声が。オーロラだ。
「いや、こっちは構うな! ネクロ、安全な場所まで飛んでくれ!」
「で、でも……」
「気にするな! 俺は必ずお前たちのもとへ帰る!」
「……解かった。約束ね!」
ネクロは、ブラックドラゴンを動かしてどこかへ飛んでいく。それでいい。
俺はオルジスタと決着をつける。
ここでバケモノを倒し、オルジスタ自身にも制裁を与えればこちらの勝利。ついでにワクチンも開発して、ゾンビのない世界が完成だ。
あと少し!
希望はもう目の前に。
だから――!!
「クリムゾンブレイク!!」
火属性魔法を豪快に放ち、触手を減らしていく。
しかし、直ぐに再生していた。
「無駄だ、無駄無駄無駄! エルド、お前の魔法スキルなど無駄なのだ!!」
ならば、必殺でいくしかない。
魔力回復ポーションを飲み、俺は右手に闇を溜めた。
「カルペ・ディエム!!」
放出される闇属性魔法は、敵の触手どころから全てを飲み込んだ。
滅びの闇をあのラブクラフトが耐えられるとは思えない。
『…………』
これで!
「……ぐ、ぬぅ」
オルジスタは、ラブクラフトの残骸を見て唇を噛んでいた。
「俺の勝ちのようだな」
「――なんてな。ここまでは“想定内”だよ、エルド」
「どういうことだ! その魔王とやらは、ほぼ消し炭だぞ」
「いいや。まだ残っているさ」
残骸だったラブクラフトは再生をはじめ、巨大化していく。……まて、あの状態でも再生できるのかよ!
凄まじい自己再生能力だな。
やがて、ラブクラフトはほぼ復活を遂げた。
だが、多少はダメージが入っているのか完全ではなかった。
触手が少し減っているな。
「致し方あるまい」
「どういう意味だ」
「ラブクラフトを爆散させ、世界中にゾンビウイルスを撒こうではないか!」
「なに!?」
「このままではお前に倒されるだろうからな。ならば、その前に世界を混沌に落とす」
俺の闇属性魔法にビビってオルジスタは気を変えたようだった。
なんて卑怯なヤツ!!
「なら俺は、更にその前にお前を倒す!」
「無駄だ! ラブクラフトは私の言うことしか聞かないし、この場で命令を下せば爆発四散させられるのだよ!!」
ニヤリと笑うオルジスタ。
このままラブクラフトを爆破させる気らしい。
そうなればゾンビウイルスは瞬く間に広まって、人類が……国や街も村も、すべてが終わる
そうはさせない!!




