第49話 女神の謎の光
急いでラフィネの家へ向かった。
扉をノックすると、中から反応が。
「どなたですか? ……って、エルド様」
「こんばんは、ラフィネ」
「よかった。久しぶりに来て下さったのですね!」
「ああ。ちょっと用事もあってね」
俺は、女神アルミナと会いたいと打ち明けた。彼女に『光』のことについて聞きたいと。すると、丁度お風呂から上がってきたタイミングだったようで、全裸で歩き回っていた。
「……あら、エルド様」
「んなッ!? アルミナ、ちょ……!」
謎の光で肝心な部分は見えないものの、これは刺激が強すぎる!
俺は背を向けた。
ラフィネが慌てて「ご、ごめんなさい、エルド様。アルミナ様はいつも裸で歩き回るんです……」と困惑しながら、対応に追われていた。
どうやらバスタオルを巻いたようだ。
俺は振り向いた。
「……アルミナ」
「エルド様、申し訳ございません。私のつまらない裸をお見せしてしまい」
全然つまらなくないというか、むしろ幸運だったというか。――いや、そうじゃない。そっちの話は置いておいて……。
それよりも材料のことを聞かねば。
「アルミナ、女神の光について聞きたい」
「女神の光、ですか」
「ゾンビを治療する材料として必要なんだ」
「まあ、そうなのですね……うーん」
考え込む女神アルミナ。どうやら覚えはないらしい。
「なんでもいい、入手する方法を教えてくれ」
「もしかしたら、聖天空界なら解かるかもしれません」
「おぉ、マジか!」
「ですが、聖天空界へ行く方法はそう簡単ではありません」
「長である君でも難しいのか……?」
「はい。残念ながら進入クエスト『白き聖杯の聖天空界』を必ず受ける必要があるんです」
おいおい、ウソだろ。
あのバカ面倒なクエストをもう一度?
俺は一度だけ三か月かけてクエストを達成したことがある。まさか、二度目も必要だとは……。
そうだな、そう簡単に女神の世界へ行けたのなら、みんな向かっている。あそこは文字通り“天国”だからな。
――となると、情報を入手しに行くのは難しいな。
「……クソ。他になにか方法はないのか」
「うーん……」
アルミナは考え込む。
俺もラフィネもなにかないかと思案するものの……無理だわな。人間である俺たちに思いつくはずもない。
と、思ったが。
ラフィネが唐突にアルミナのバスタオルを引っ張って剥いた。
「えいっ」
「きゃあ!? ラ、ラフィネ様、な、なにをぉ!?」
再び裸になるアルミナは、顔を真っ赤にしていた。
俺も突然のことに目ん玉が飛び出そうになった。
うぉい、なにしてんだァ!?!?
……って、まてよ。
よ~~~く見ると『謎の光』で遮られていた。
見えてない!!
肝心な部分が見えていない!!
「アルミナ、その光は……?」
「え。あら、気づきませんでした。もしかして、この光って取れるのでしょうか?」
アルミナは、胸を覆っている『謎の光』を掴みとり――外した。
その瞬間、すべてが露わになり俺は鼻血を吹いた。
『ブウウウウウウウウウウウウウ~~~~~~~~~~~!!!』
あ、あ、見えてるううううううううう!!
「ちょ、アルミナ!!」
「……あらら。見えてしまうのですね」
「そりゃそうだ!」
そういう仕組みだったのか。
「タ、タオルを追加で持ってきます……!」
ラフィネは慌てて向かった。
俺とアルミナの分のタオルを取ってきてくれた。
「ありがとう、ラフィネ」
鼻を抑え、俺は止血した。
一方でアルミナの方は胸を隠した。これでヨシと。
そして、ついに『女神の光』を入手した!
そうか、女神の光とはこのことだったんだな。裸にならないと得られないレアアイテムということか。
これで『聖女の涙』、『ホーリーポーション』、『光麗人参』、『女神の光』の四個を入手。
残るは『ゴールドエリクサー』と『エンジェスライムの欠片』それに『幻神の花』だな。
もう僅かだ!
まさかゼルファード内でこれだけ集められるとは、運がいいな。
「アルミナ、残りの材料に覚えはないか?」
「申し訳ございません……」
「そうか、ありがとう。残りはがんばるよ」
「はい、応援しております。そして、この世界をゾンビからお救い下さい」
「ああ! じゃあ、ラフィネもおやすみ」
挨拶をするとラフィネは、俺に抱きついてきた。
「エルド様、いつでも私を頼ってくださいね」
「……もちろんだ」
本当は村長のタルが亡くなって辛いはず。そばにいてやりたい。
でも、俺には使命がある。
ゾンビを一掃せねばならない。
ラフィネや村のみんなを守る為に。
* * * * * *
俺はラフィネの家を去り、自宅へ。
女神の光のことを報告した。
「おぉ! 勇者さま、やったなー!」
ネクロがぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでくれた。
オーロラもあと少しですねと安堵していた。
「ああ。けど、まだ残り三つだ。明日、俺はあえて王国へ行こうと思う」
「確かに、シュヴァルク王国ならばゴールドエリクサーがあるだろうな」
とルルティアは発言。
やっぱりか……!
「オルジスタしか作れないんだな?」
「うむ。あえて言わなかったが、その通りだ。ゴールドエリクサーは彼しか作れない」
「……なんてことだ」
「だが、安心せい」
「ん?」
ほれっと小瓶を投げるルルティア。
俺は慌ててそれを受け取った。
そのポーション瓶には『金色の液体』が入っていた。
「それはゴールドエリクサーだ」
「は!? なんで!?」
「知れたこと。今のあたしに作れぬポーションなどない。お前が出かけている間に調合しておいた」
「マジかよ!! さすがだな!」
「ふっふっふ。もっと褒めてよいぞ、エルド!」
さすが世界一の錬金術師。
俺はてっきり最後はオルジスタをぶっ倒して、無理やり作らせるしかないと思ったんだがな。
これで残るは『エンジェスライムの欠片』と『幻神の花』!
――翌日。
残りの材料を求めてシュヴァルク王国へ向かうことにした。
もちろん、ネクロのブラックドラゴン(スライム)を使って。
「出発するよ~」
今日も俺、オーロラ、ネクロ、クレミア、そしてルルティアのメンバーで向かう。
ドラゴンは物凄いスピードで飛翔を続け、早くもシュヴァルク王国が見えてきた。
追放されてから久しぶりの王国。
もう二度と戻ることはないと思っていた。
だが、ゾンビを治すためならば……俺はトラウマと向き合う覚悟だ。
きっとここなら、『エンジェスライムの欠片』と『幻神の花』の情報が眠っているはず。
冒険者が多くいるこの場所ならば。
ネクロに指示を出し、付近に降りてもらう。
そして、そのまま正面から堂々と向かう。
この時間でも多くの冒険者が行き交っているので、俺だとバレることはないはず。
しかし、念には念をだ。
「勇者さま、ブラックスライムで変装する~?」
「ああ、そうだ。ネクロ、そのスライムで俺の顔を隠してくれ。仮面風にしてくれればいい」
「解かったー!」
グネグネと変化するブラックスライムは、なんだか妙にカッコいい仮面に変身してくれた。このスライム、なんでもなれるな。
「いい感じですね、エルドさん」
「そう思うか、オーロラ」
「はい。まるで仮面舞踏会みたいです」
そう言われるとそうっぽいな。
冒険者の中にはファッションで仮面をつけている人もいるし、大丈夫だろう。
「てか、オーロラも顔を隠さなくていいのか?
「そうでした! わたくしもバレたら大変です」
ならばとルルティアがカバンからメガネを取り出していた。
「これを使ってください、オーロラ様」
「メガネですか!」
「はい。あたしのお気に入りです。ぜひオーロラ様に」
「ありがとうございます、ルルティアさん!」
「……ふふ」
嬉しそうに微笑むルルティア。本当、オーロラ信者なんだな。
よし、変装は完了した!
このまま情報収集へ――!!




