第46話 ラグナゼオン帝国の最強の門番
【ラグナゼオン帝国】
ブラックドラゴン(スライム)は、凄まじいスピードで飛翔。あっという間に帝国に辿り着いてしまった。
ラグナゼオン帝国の上空に俺たちはいた。
「わぁ、大きい国ですね~!」
オーロラは、ラグナゼオン帝国を見下ろして感動していた。
という俺も久しぶりに見る圧倒的な光景に懐かしさを憶えていた。
数か所に点在する大きな城。
貴族たちの住む邸宅。
そして、どこまでも続く街並み。
どの建物も立派で二階建ては当たり前。
そんな国を守るように大きな壁がそびえ立つ。
とにかく巨大な建造物だらけだ。
「……こ、これが帝国」
「クレミア、はじめてか?」
「はい。自分は王国しか行ったことがなくて」
「そうか。なら丁度いい経験になるかもな」
「ええ。きっと面白い魔導書があると思いますし、ついてきてよかったです」
さて、肝心なのはここからだ。
ネクロに指示を出してもらい、ブラックドラゴンで移動。
このまま進入することは出来ない。
なぜなら『女神の防御結界・ブリーシンガメン』が張られているからだ。
なので離れた裏口へ降りてもらった。
「ここでいい~?」
「いいぞ、ネクロ」
裏口――そこは小さな門がある場所だった。
最強の門番が守っているらしく、要人だとか行商だとかビジネス関係者が出入りする専用口。俺も以前は勇者としてここから出入りしていた。
ドラゴンは地上へ降り立った。
俺たちは地面へ降り、さっそく小さな門へ。
「あの、エルドさん」
「ん?」
「以前はここを通ったんですね」
「そうだ。今でも勇者だから顔パスで入れるかもしれん」
「さすがですね!」
「どうだろうな。魔王討伐は終わったから……今も許して貰えるかどうか」
橋を渡って門へ。
小さな小屋から巨漢の門番が現れて立ちふさがった。
俺を見下し、威圧する。
「久しぶりな、ヴェルガード」
「……勇者エルド。憶えているぞ、お前の顔を」
「おぉ! ならラグナゼオン帝国内へ入れてくれるよな?」
「もちろんだ。お前は世界を救った勇者。――だがしかし」
「ん……?」
「あの小さき少女は入れん」
ネクロを指さすヴェルガード。
まさか、ネクロが魔王かもしれないと感じ取っているのか?
「なぜだ。ただの女の子だ」
「そうは思えん。あの少女は“奴隷”であろう」
――なるほど、実に的を得ている。しかし、今は俺の仲間。奴隷ではない。だから俺は否定した。
「違う。パーティメンバーだ」
「この辺りで獣人族を連れ歩いている場合は奴隷なのだ。例外はない」
「だがな」
「そういえば、エスメロード草原でザルディアス侯爵の奴隷が行方不明だと聞いた。まさか、お前……」
そうだったのか、あのゴブリン風の男は帝国貴族だったか。
だけど、それでも奴隷だなんて許せるわけがない。
俺は間違ったことはしていないぞ。
「関係ないさ。ヴェルガード、緊急事態なんだ……錬金術師のルルティアに会いたい」
「……ルルティア様か。なるほど、お前もゾンビ関係か」
「なんだ、詳しいな」
「あれだけ大騒ぎになっているのだ。帝国中で話題さ」
そうだったのか。
シュヴァルク王国だけの問題かと思ったが、そうでもないらしい。
とはいえ、帝国には強固な防御結界が張られている。心配はないと思うが――この出入口だけは解放されているからな、油断はできんわな。
「頼む。通してくれ」
「仕方あるまい。その代わり、ルルティア様お手製のポーションを譲ってくれ」
「お前、まさか……」
「あのお方はお美しい」
ぽっと頬を染めるヴェルガード。
まさかコイツに好きな相手がいたとはな。
けどなぁ、ルルティアは……難しいと思うけどな。
思うだけなら自由だけどさ。
そんなわけで俺たちは、ついにラグナゼオン帝国内部へ――!




