第43話 勇者の使命
ゼルファード内部に侵入したゾンビを倒していく。
村人も活躍してくれて、なんとかその数を減らしていた。
よし、これなら何とかなりそうだ。
「エルド様、こっちにゾンビが!」
村人の自警団の一人が叫ぶ。
「解かった。……あ、そういえばロビンソンは裏切った! アイツはもう長ではない」
「え……! ロビンソンさんが!?」
「詳しいことは後で話す!」
「わ、解かりました」
俺は邪悪な気配のする方角へ向かい、ゾンビを発見。聖剣アルビオンを振るった。
今は倒して倒して倒しまくるしかない!
でなければ感染がもっと広まってゼルファードは地獄と化す……!
オルジスタの計画だろうが、絶対に阻止する。
マップを頼りにゾンビを倒し、倒し、倒し、倒しまくった。
『ガァァァ…………』
最後のゾンビを撃破し、俺はその場に崩れた。
「――ハァ、ハァ。さすがに……疲れた……」
侵入ゾンビは恐らくニ十体はいたはず。
思ったより入られたな。
結界が解かれていなければ……こんなことには。
そうだ……オーロラ達が心配だ。
クレミアの家へ向かわねば。
俺は急いで向かった。
* * * * * *
クレミアの家をノックすると、直ぐに反応があった。
「……このゾンビ!!」
俺をゾンビと勘違いしたオーロラがホーリークレストを放とうとしていた。――って、うぉい! ちゃんと確認しろって!
「まてまて! 俺だ! 俺!!」
「……へ。あ、エルドさん!! 無事だったんですね!」
ぶわっと目尻に涙を溜め、オーロラは俺に抱きついてきた。
まさかそんな心配してくれていたとはな。
「すまん。でも全部ぶっ倒した」
「さすがです。でも、すっごく心配しました」
「……ああ、本当にすまない」
ぎゅっとオーロラを抱きしめた。
本当に無事でよかった。
「勇者さまっ」
――って、いつの間にかネクロも俺に抱きついていた。
そんな状況を遠くから見つめるクレミア。
なんでそんなジ~っと見つめるかな!?
「クレミアも無事だったか!」
「……ええ、まあ。それより、結界は?」
「無事だ。ただ、自警団の長ロビンソンの裏切りに遭い、アルミナがヒドイ目に。だから結界が解けたんだ」
「村長さんは?」
「…………殺された」
「そんな……」
事実を放すとクレミアはショックを受けていた。
彼女はタルによくしてもらっていたらしい。当然か、ずっと村に住んでいたのだから。
という俺も悲しみでいっぱいだった。
タルのおかげでゼルファードに住めたというのに。みんなによくしてもらえた恩もあるのに。
もうすぐスローライフを送れると思ったのにな。
「俺がいながらすまない」
「仇を討たねば!」
「騎士団長のルギアスは倒した。残るは宮廷錬金術師のオルジスタだ」
「……やはり、王国の手が」
「そういうことだ。やるしかない」
「解かりました。今後は自分も固定でパーティに加わります」
「頼む」
今度はみんなを連れ、村の様子を見に行くことに。
街中はかなり被害が出ていた。
噛まれ、ゾンビ感染した者もいた。
仕方なく葬られていたようだが、心境は複雑だ。
「……父ちゃん!!」
『……グゥゥゥ』
少し回るとゾンビ化した父親らしき人が何かの偶然か、農具に引っ掛かって動けずにいた。
まだゾンビがいたのか!
「……君、その人は」
「父ちゃんだ! 父ちゃんを殺さないでくれ!」
そうか、この子は前に騎士に蹴られた子供だ。
「といっても、ゾンビになっては……」
「勇者様ならなんとかしてくれ!! お願いだ!!」
そんな方法があるのか。
いや、ない。
一度ゾンビになった者を人間に戻す方法なんて聞いたことがない。
でも不可能とは言い切れないし、言いたくもなかった。
俺は……。
そうだ。
救わねばならない。
オルジスタの野望を打ち砕く為にも。
「解かった」
「え……」
「君の父さんをなんとかする」
「本当!?」
「ああ……俺にも君の気持が解かるから」
俺の親父と母さんは魔王軍の幹部に殺された。
そして、女神の選定を受けて俺は“勇者”になった。
世界を救うために。
魔王を打ち滅ぼすために。
悪をこの世から消し去るために。
「エルドさん、なにか方法が?」
「具体的にはまだ何も。でもな、オーロラ」
「……?」
「俺は世界を旅した勇者だぜ。知識は沢山ある」
「では、可能性はあるのですね!?」
「やってみる価値はあるさ」
果たして上手くいくかどうか解からないが、それでも。
行くしかないか
ラグナゼオン帝国へ。




