第27話 女神の防御結界・ブリーシンガメン
部屋に入るとアルミナがちょうど目を開けたところだった。
「お待たせいたしました、エルド様」
「魔力の方は万全になったようだな」
「ええ、おかげさまで。これならば防御結界・ブリーシンガメンを展開できるかと」
[ブリーシンガメン]
[詳細]
女神族最強の防御結界。
女神の中でも階級が高い者でなければ発動しない。
魔力を全て消費し、あらゆる物体に[ブリーシンガメン]を付与する。防御結界が展開され、物理・魔法攻撃を防御する。
この結界は大魔法でも破壊することはできない。
一定の耐久値を下回ると結界は消滅する。
この効果は三日持続する。
「これが防御結界の能力か……スゲェな」
「ラグナゼオン帝国が魔王軍の奇襲を受けなかった理由が分かったかと」
これなら確かに無傷で済むだろうな。
魔王の攻撃ですらも通らなかったと聞くし。
だから防御に関してはブリーシンガメンが最強クラス。これがあれば、シュヴァルク王国の攻撃も怖くない。
「アルミナ。このゼルファードの村に防御結界の展開を頼む」
「もちろんです。お任せ下さい」
いったん外に出ると言い、アルミナと共に向かう。
玄関を出て中央噴水広場へ。
村の中心なので、そこが良いという。
オーロラ、クレミア、ラフィネも見守る中、スキルは発動された。
「わぁ、凄い神々しい光です……!」
まぶしすぎる光に驚くオーロラは、俺の背後に隠れるようにしていた。そんな子供のようにされると、ちょっとキュンとくるものがある。
「大丈夫だ、オーロラ。アルミナがブリーシンガメンを使ってくれるんだ」
「この防御結界のことですね?」
「そうだ。ラグナゼオン帝国が常に展開している最強の結界だ」
「それをゼルファードにも!」
「ああ、もうこれで何も怖くない!」
空に打ちあがるブリーシンガメンの輝き。
それはドーム状に広がってゼルファードを包み込んでいった。透明な壁が覆っていく。……こりゃ、スゲェな!
少し経つと村は明らかに透明な壁に包まれていた。
「なんと、凄い魔力です……」
「解かるのか、クレミア」
「ええ。女神族の力がここまでとは思いませんでした」
その代わり、攻撃には特化していないらしいがな。
そのせいか魔王を打ち倒すことはできなかった。なので、俺のような勇者を選定し、旅立たせた経緯がある。
そう、俺は女神に選ばれたのだ。
――それは置いておき。
「終わりました、エルド様」
「ありがとう、アルミナ。これでゼルファードは守られるんだな」
「おっしゃるとおりです。特殊な魔法でない限りは突破できません」
そんな魔法を使うヤツがあの王国にいるとは思えん。
そもそも、いたのなら俺のパーティに加入していたはず。一緒に魔王を討伐しに行っていたはずだ。
でも、そのような存在が現れなかったということは……いないということだ。
「ラフィネ、このことをタルや村のみんなに伝えてくれないか」
「はい、解かりました。では、私はこれにて」
「頼んだぞ」
ラフィネは報告へ向かった。
よし、これである程度の仕事が終わった。
でも慢心はできない。
それに、俺は王とハルネイドだけは迎え撃つつもりだ。
結局根本を正さねば、また繰り返しだからな――。
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そうして、待つこと数時間。
ついにゼルファードは、三千の軍勢に囲まれた。
「ゼルファードの愚民共に告ぐ! この村は間もなく消滅する!! 悪魔の子は全員処刑となるッ! いいか、この場から動くことは一切禁ずる! 絶対に動くな!!」
上級騎士――いや、多分あれは騎士団長だろう。
悪魔みたいなことを大声で言い放った。
そして、軍勢の中からカイゼルス王の姿があった。
こんな正門から堂々を現れるとはな。
「久しいな、エルド!」
「……カイゼルス王。あんたは俺を追放した。もうそれで満足だろ!」
「ティアナをゾンビにしておいて……貴様、それでも勇者か!」
「それはティアナの自業自得。勝手にゾンビになったんだ」
「ふざけるなあああああああ!!」
カイゼルス王が叫ぶ。
明らかにブチギレていた。
騎士団長から剣を受け取ると、俺に向けた。
「一騎打ちなら喜んでやるぞ」
「図に乗るなよ、エルド。村は完全に包囲した。今から住人ごと消し去ってくれようぞ……!!」
合図を出すカイゼルス王は、まず上級魔導士500人を前に立たせた。
そうだよな。魔法で一斉攻撃だろうな。
「その程度でゼルファードは落ちないぞ!」
「馬鹿が。この前の失敗を活かさぬと思ったか!」
「なに……?」
「上級魔導弓兵よ、前へ出よ!!」
上級魔導弓兵……!?
おいおい、その部隊はコストが掛かりすぎるからと撤廃したはずだ。王の野郎、復活させていたのか。
しかも、魔導弓兵は魔法の弓矢を使う高火力部隊。
まずいぞ……!
結界が耐えられるかどうか!!
俺は女神の力を信じる…………!




