第18話 勇者の辺境地防衛
ゼルファードへ戻り、証拠を持って村長のタルに報告。
意外にも村長が錬金術師であった。
「……ふむ。これは確かに魔族の血ですな」
「本当ですか、村長!」
「ポーション瓶も宮廷でしか流通していない器。シュヴァルク王国の仕業で間違いないでしょうな」
と、まさかの村長が断定してくれた。
これで決まったな。
オルジスタがいた時点でそれは分かっていたことだが、こうして“証拠”を示せたのはデカい。
このことは瞬く間に村中へ広まり、オルジスタおよびシュヴァルク王国への批判や不満が高まった。
「おいおい、ゾンビ薬だって!?」「オルジスタって、あの宮廷錬金術師だろ!?」「王国がそんな非人道的なことを?」「ふざけんな!!」「王国をぶっ潰すべきだ」「村を守らなくちゃ」「これから攻めてくるかもしれないなら、やってやろうじゃねえか!」「ゆるさねえ、絶対にゆるさねえ!!」
みんなの怒りの声が爆発。
そりゃ、そうだよな。
村周辺でゾンビが生成されていたとか、正気の沙汰ではない。下手すりゃ村人が感染してもおかしくなかったが、幸いにもゼルファードは高い壁で守られている。だから、ゾンビモンスターが侵入してくることはなかったのだ。
不幸中の幸いだな。
「どうしますか、勇者エルド殿」
村長は俺に判断を委ねてくる。
そうだな、管理者を任されている以上は、みんなを導かねばならん。なによりも、勇者としてな。
「宮廷錬金術師オルジスタが森の中にいたくらいだ、ヤツ等はすぐそこにいるはず。直ぐに防衛強化を!」
「了解だァ!」「エルド様の指示に従え~!」「武器を取れ!!」「見張りを強化だ」「罠も増やそう」「こちとら元騎士だぜ!」「捕虜から奪った武器もあるぜ~」「こっちは闇市場から入手したS級武器がある」
みんなやる気満々だな。
さすが、シュヴァルク王国と戦っていただけある。
恐らく村人全員が訓練を受けているはずだ。
ならば、戦い方は知っているはず。
俺が口出す必要はない。指示だけを的確に出す。それだけだ。
必要な人員を配置。
監視も強化して10名ほどを警備へ。もちろん、交代制で。
俺も基本的に外を回るようにした。
「わたくしも一緒ですよ」
「解かってるよ、オーロラ」
オーロラも同行してくれる。
外はすっかり日が落ちて夜になったが、それでも守っていかなくちゃならない。さすが夜襲はないと思いたいが。
さて、このまま守備を固めて――。
ん、なんか村の外から気配を感じるような……?
「エルド様! 敵襲! 敵襲です!!」
監視役が俺に一報を入れる。もう来たか!
「解かった。全員、戦闘配置!」
「そ、それが……」
「ん、どうした?」
「ゾンビ兵を従えるティアナ姫の姿がございました……!」
「なんだって……!?」
ゾンビ兵……ついにそんなものを連れ歩くようになったか! シュヴァルク王国――いや、ティアナ姫。
直接、このゼルファードへ乗り込んできたか。
いいだろう。俺はあの姫を許せそうにない。
一度は愛した女だが、もう関係ない。
俺はこの村の為なら王国を敵に回す。
「エルド様、行きましょう」
オーロラと共に正門へ向かう。向こうも律儀にもそっちから来ているらしいからな。
決着の時だ……!




